まずはこちらをご覧下さい。

こちらが、今回ご紹介する刀匠の作業風景です。圧巻の光景に、しばし言葉を失ってしまいました。

編集部に届いた、応援の声。

「湯川夜叉さんを応援したい。」

編集部にそんな声が寄せられ、今回向かったのはスウェーデン出身、刀匠・湯川夜叉さんの元。防府市街地から外れた山間に湯川さんの鍛錬所はあります。何故このような場所で日本刀を作っているのか?そもそも日本刀を作ろうと思ったきっかけは?次々と涌き出る疑問を解消するべく、湯川さんを伺いました。

日本に来たきっかけは?

日本人のお父様とスウェーデン人のお母様のもとに生まれた湯川さん。お父様が居合をやっていたこともあり、スウェーデンに住んでいた子どもの頃から日本刀への興味はあったそう。スウェーデンと日本を行き来する生活の中、初めてひとりで東京に移り住んだのが大学生の頃。ご本人は忘れてしまっていたそうですが、この時すでに周りの友人には「刀鍛冶を学びに日本へ行く」と話していたそうです。しかし、このときは刀鍛冶の修行はせず、スプレーアートなどの壁画装飾の仕事をやりながら7年ほど東京で暮らします。その後、再びスウェーデンに戻り、画家の仕事などをしていました。

刀匠を目指したきっかけ、防府に来たきっかけは?

湯川さんはとある日の昼寝の最中に突然、刀匠になる夢を見ます。この夢が日本刀への再熱の種となり、刀匠を目指すこととなったのです。刀匠になるためには刀匠資格を有する刀鍛冶の下で5年以上の修業をし、試験に合格する必要があります。湯川さんは、父親の友人でスウェーデンに材料を調達しに来ていた刀匠・松葉さんとのつながりがありました。湯川さんは松葉さんに頼み込み、なんとか弟子入りを果たします。

2009年からはじまった宮崎県の松葉さんの元での修業は、相当に苦しいものだったと言います。当時を思い出して苦い表情の湯川さんでしたが、今では、ひとりで刀鍛冶として生計を立てるようになり、師匠の言っていたことがますます理解できるようになったと言います。

そして2015年、めでたく試験に合格した湯川さんは、松葉さんの知り合いが使っていた鍛錬所を使わせてもらえることになりました。それが今の防府市の鍛錬所だったのです。

薄暗く、寒い鍛錬所のなかで、あたたかいお茶やストーブを用意してくれる湯川さん。優しい心配りにほっこりとあたたかな時間が流れました。

2018年、初の個展開催

昨年はマネージャー内田さんの協力もあり、初めての個展を防府市内で開催。来場された方の大半が居合をやっている方だった中、県内でのテレビ放送を見て足を運んだ方もいらっしゃったそうです。日本刀に馴染みのない方に日本刀のことを伝えられる個展は面白かったと言います。今後は、東京やNYでの開催を目指されるとのこと。

マネージャー内田さんとの会話に笑みをもらす湯川さん。

湯川さんの目指す日本刀

「余計なことは考えず、”美しいものを作る”という意識だけをもって刀に向き合いたい。」と語る湯川さん。元々は画家をされていたというくらいなので、オリジナルの日本刀なども考えていらっしゃるのかと思いきや、返ってきた答えはNO。まっすぐ刀作りに励む間は、個性を出そうなどという気持ちにはならず、ただただ美しい日本刀を作ることだけを考えていると言います。それでも自然と刀には個性が出るそう。さらに、刀の材料は決して安いものではないので、基本的にはオーダーに応える形で製作に挑むのだとか。居合いで使う日本刀や美術品としての日本刀のオーダーが多いそうですが、現在は包丁なども作ることがあると言います。

穏やかに質問に応じ、日本刀から話が逸れると途端に言葉に詰まる湯川さん。いかに日本刀に一途に向き合い、熱量を注いでいるかが伝わってくるようでした。

日本刀が作られる瞬間

最後に、実際の作業風景を見せてもらいました。今回は、日本刀作りの下準備とされる“へし作業”の様子です。

まず、湯川さんが使用する主な原料は、島根県奥出雲にあるたたら場で製鉄された玉鋼。このたたら場は日本で唯一現存するたたら場で、刀匠のみに譲られているそう。

湯川さんの鍛錬所では、以前に鍛錬所を使用していた杉田刀匠が譲り受けたという約200年前の貴重な釘を使用しています。それは防府市内のお寺・防府周防国分寺で使われていたというもの。これを、原料の玉鋼の中に少しだけ融合させて刀を作ります。

まず、玉鋼を熱するための窯。こちらは土を集めて自作されており、定期的に手直しをしながら使っています。窯の温度はこのときで800度ほど。静かに燃え上がる炎が神秘的に映ります。

この窯で先ほどの玉鋼を熱し、リズム感よく打ち延ばしてから水に入れて急冷し、再び打ち付けます。この作業を複数回繰り返し、行って行きます。

湯川さんが大きく金槌を振り下ろすと、瞬時に爆発音のように大きな音が起き、赤い閃光が跳ね上がります。そして訪れる静寂の間。

一瞬の静寂を経て、まるで何事もなかったかのように慣れた手つきの湯川さんは、続いて熱した鉄を冷まし、再度金槌を打ちます。へし作業によって作られたへし金は、炭素量が多いと堅く、少ないと柔らかくなってしまうそう。柔らかすぎてしまっては、焼き入れができなくなってしまうと言います。

ここまで読んでくださった方の中には、実際に湯川さんが日本刀を作るところを見てみたい!という方も多いことと思います。現在は月1回のペースで見学会を実施しているそう。HPでの告知などはなく、問い合わせをされた方のみが参加可能です。

「湯川夜叉さんを応援したい」という声からはじまった今回の取材でしたが、それも納得。すっかり湯川さんのファンになってしまいました。今後、世界に羽ばたくであろう湯川さんの日本刀作りの風景を、ぜひ一度ご覧ください。

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取材時期:2018年12月
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