下関で産声をあげて100年

山口県下関市で生まれ育った人なら馴染み深い、「カギ」のマークのソース。

お母さんの手作りコロッケにかけたり、遠足の弁当箱にさりげなく添えられていた子供の頃を思い出しませんか?

そんな「カギ印ソース」が産声をあげて100年。私たちよりも長い「ソース人生」を、3代目の勝俣貴仁さんにお聞きしました。

【これまでを振り返る、勝俣貴仁さん】

【これまでを振り返る、勝俣貴仁さん】

「カギ印」は長距離列車から生まれた!?

創業は大正10年。貴仁さんの祖父が自宅でウスターソースの製造を始めた頃にさかのぼります。

貴仁さんの祖父はもともと下関と東京を結ぶ長距離列車の食堂車支配人でした。

数時間で移動できる現在とは違い、当時は丸一日以上かかる「超」長時間の旅。当然駅にはキオスクやコンビニエンスストアもなく、長距離列車には「食堂車」がつくのが一般的でした。

オムライスやエビフライをほおばる客の表情を見ながら、祖父は「日本の食卓にも洋食が並ぶ時代が必ず来る」と確信したといいます。

「カギ印の原点が長距離列車とは意外だったでしょ?」と笑う貴仁さん。

【長距離列車の食堂車には日本の食卓の未来が広がっていた(写真はイメージ)】

【長距離列車の食堂車には日本の食卓の未来が広がっていた(写真はイメージ)】

ソース以外の世界が見たかった…

その後、下関生まれの洋食ソースは地元でも評判となりました。

そして、祖父からソースづくりを受け継いだ両親。作業場で汗を流している姿を、貴仁さんは尊敬しつつも複雑な思いで見つめていました。

【創業時の看板にはこれまでの歴史が詰まっている(提供:勝俣貴仁さん)】

【創業時の看板にはこれまでの歴史が詰まっている(提供:勝俣貴仁さん)】

「学校が休みの日も、両親は作業場で釜をかき混ぜていました」

休日家族で旅行に出かける友人を羨ましく思いつつ、自ら遊びを見つけようと町内の野球チームに入り、気を紛らわしていたそうです。

違う世界に飛び込むも、思いは次第に故郷へ

学校卒業後、貴仁さんが就職したのは、広島市内にある自動車部品メーカー。当時熱中していたサッカーを就職後も続けたいと、クラブを持つ会社を見つけたのです。

エンジンまわりの部品をつくる会社で、日中は製造ラインの作業員の配置や品質管理を行いつつ、週末は会社のサッカーチームで仲間とボールを蹴る、充実した日々を過ごしていました。仕事の楽しさを感じていた時期でもありました。

しかし次第に、実家のソースづくりにも思いを馳せるようになっていったのです。

【実家にも、ものづくりの技術がある……と】

【実家にも、ものづくりの技術がある……と】

作業場の両親を窓越しから見ていた子供の頃を思い出し、「自分もソース作りの世界に入りたい」と一念発起。下関に戻ってきました。今から15年前、貴仁さんが20代後半のことです。

いかに素材を活かすか

トマト、タマネギ、ニンジン、ニンニク、セロリ、ショウガ、そしてリンゴ……ソースの原材料は天然の野菜。すりつぶしてペースト状にし、砂糖、塩、酢、醤油といった調味料を調合ながら一週間、鍋で温めながらゆっくり作っていきます。

【心を込めて鍋をかき混ぜていく】

【心を込めて鍋をかき混ぜていく】

「下関市内の農家の方々からそれぞれ仕入れており、まさにメードイン下関です。でもソースは、食材にかけたり混ぜたりするもので脇役です。一晩中昆布をかじりながら『いかに素材のうまみを活かし、料理の味をひきたてるか?』を考え、味付けの種類も増やしました」

【ウスターから香辛料を加えたものまでラインアップは充実(提供:勝俣貴仁さん)】

【ウスターから香辛料を加えたものまでラインアップは充実(提供:勝俣貴仁さん)】

両親への感謝、そして涙

30歳前の青年が地元に帰ってきて、そこまで熱心に研究されたのですね!

「はい。ソースづくりだけでなく、お客様にいかに『カギ印』を発信していくかにも、力を注いできました。SNSを活用して積極的にブログで毎日営業活動やレシピを紹介していました」と貴仁さん。

【そして、貴仁さんの目には光るものが……】

【そして、貴仁さんの目には光るものが……】

「私自身がソース作りに携わってみて、両親の苦労があらためて分かりました。夏は暑く、冬は寒い作業場で黙々と仕事を続け、疲れてる中でもごはんを作ってくれたり、夜中まで配達したトラックの中でいろいろ話したり。そんな子供の頃を思い出すと、忙しい中でも私に愛情を注いでくれていたんだな、と感謝の言葉しか出ません」と涙をぬぐいました。

「貴方には帰る故郷がある」

両親の思いをつなげていきたいんですよ。と貴仁さんは前をむきます。

「ソースづくりを次の世代にも知ってほしいと、地元の高校に出前授業に出かけています。彼等が将来地元を離れても、カギ印ソースの味を思い出して、故郷に思いを馳せてほしいです」と。

【地元高校生とのコラボレーション商品も開発】

【地元高校生とのコラボレーション商品も開発】

無添加ソースを使ったレシピ集も作るとともに、子育て中の地元のお母さんから味付けのアドバイスをもらったり……試行錯誤しながらも先代、両親の後を追いかけておられるようです。貴仁さんは、こう結びました。

【人には必ず「懐かしの味」があるはず(提供:勝俣貴仁さん)】

【人には必ず「懐かしの味」があるはず(提供:勝俣貴仁さん)】

「私は一度下関を離れましたが、やっぱり『故郷』は、そこに住んだ人が唯一共感できることではないでしょうか。私は、カギ印ソースを通じて、子供の頃感じた故郷の味を思い出すとともに、『貴方には帰る故郷がある』ことを発信し続けていきたいと思っています」

取材時期:2019年8月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

カギ印ソース本舗

住所 山口県下関市一の宮住吉3丁目2-1 下関市地方卸売市場内
TEL 083-227-2800
URL http://www.kagijirushi.com/