ふぐフライ、地鶏の唐揚げ、夏みかんマーマレード、ういろう……。メニューに並ぶ山口県産品の数々。これらはすべて、コッペパンに挟む具材なんです。

山口市中市町の商店街にある「特産Cafe やまのわ」。県内の豊富な特産品を「知って、食べて、買えるお店」として、2019年6月にオープンしたばかりです。

醤油、ソース、県内各地の調味料もお好みで

特産品は分かりますが、なぜコッペパンなのでしょう?

「焼きそばパン、コロッケパン、ホットドック……、使われているのは全部コッペパンです。ジャムやスイーツを挟めば、おやつにもなる。自由度が高く、何を挟んでもいい。主役の具を引き立たせる脇役として、最高なんですね」と店主の山田豊佳さんが教えてくれました。

挟んだ具材の上に掛ける醤油、ソース、ドレッシングなどの調味料も県内各地のこだわりの品々を集め、お客さんが自分の好みで選べるようになっています。

「例えば長門市の地鶏に柳井市の醤油を掛ける、という風に特産品同士のコラボで新しい味の世界が生れていきます。それは本当に、食べてみないと分からない。だから、どの調味料も無料で試してもらえるようにしているんですね」

さっそく筆者も、「鹿野ファーム(周南市)のポークフランクコッペ」を注文してみました。

コッペパンからあふれ出しているフランクフルトに、妻の公美子さんが勧めてくれたのは手作り工房のーた(平生町)の「トマトピューレ」を使ったソース。ジューシーなフランクフルトに、トマトのほのかな甘さがぴたりと溶け合い、食べ終わるのが惜しいほどの美味しさでした。

お客さんの生の声を、ダイレクトに

それぞれの調味料にはQRコード付きの商品カードも。コードを読み取ると、食べてみた感想を書き込めるページにアクセスできます。これには、山田さん夫妻の期待が込められていました。

「食べられた方から寄せられた生の声を集めていきます。そうすることで『ああ、コロッケにそんなに合うのか』とか『もう少し甘みを抑えたほうがいいっていう声が多いな』といった気づきが出てくる。それを各メーカーさんにフィードバックすることで、新しい商品の開発などに役立ててもらえるんじゃないかと。そんな相乗効果を生み出していきたいんです」(豊佳さん)

【ういろうなどを挟んだおやつ系コッペパンも人気】

ドリンクメニューのコーヒーは山口、岩国、柳井、下関……など、県内各地の専門店の豆を一定期間ごとに変えながら提供していきます。こちらも、県内にある優れたカフェやロースターの味に出会ってもらうための試み。県内各店舗のドリップバッグも揃っています。

郷土愛に溢れたお店ですが、二人とも「もともと、こちらに知り合いも友人もいなかった」とか。豊佳さんは山口県上関町生まれですが、5歳で大阪に引っ越し、石川、東京で暮らしてきました。東京で生まれ育った公美子さんと、「人生100年時代。二人で何か長く続けられることをしたいねと話し合っていたときに、特産品同士のコラボというアイデアが生れたんです」

3万キロ走り、700人に会うことで生まれたお店

それまで20年間、医療機器・健康食品を病院やドラッグストアに卸す商社に勤務していた豊佳さん。「商品に付加価値を付けて、消費者に届けるのが卸の仕事。それを特産品に当てはめるとどうなるだろう、と」。公美子さんはJRの駅弁や大手コンビニチェーンの弁当の開発に計15年携わり、一級総菜管理士や野菜ソムリエの資格も持つ「食のプロ」。二人の経験と専門性をコラボすることで、新しい暮らしと仕事のイメージが固まっていきました。

「起業するなら、自分の根っこである山口で」と、2018年7月に移住。「完全にゼロからのスタート。まずは自分のやりたいことを知ってもらおう」と、豊佳さんは商工会議所や山口物産協会などに連日、飛び込みで挨拶回りを重ねました。異業種交流会などにも積極的に顔を出し、様々な業種の会社経営者や商店主を紹介してもらうなどして、わずか半年で700人以上と知り合いに。「朝は下関、夕方は防府や柳井……と、会ってくれる人がいるならどこにでも行きましたね。車の走行距離は4か月で3万キロを越えて、エンジンが壊れてしまいました(笑)」

県内を走り回って人と繋がりながら、ひとつひとつ集めた品々が並ぶ店内。店名には「山口県の生産者と小売店、消費者が繋がっていくことで、山口県の輪ができ、それがスパイラルに広がってどんどん大きな輪になっていくように」との願いが込められています。

「地元の人から『こんなおいしいものがあるんだ。知らなかった』という声を聞きます。まだまだ知られていない素晴しい商品があることを、ここから発信していきたい」と公美子さん。豊佳さんも「山口県には、未知の潜在的なパワーがある気がする。食のコラボを通じて、新しい『何か』が生まれるきっかけをつくっていきたいですね」と話しています。

取材時期:2019年7月
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特産Cafe やまのわ

住所 山口県山口市中市町3-8 (マルシェ中市内)
TEL 082-922-7855
営業時間 9:30~19:00
定休日 日曜、祝日
URL https://www.facebook.com/yamaguchiyamanowa/