激流のヒミツを探しに

前日までの大雨が嘘のように晴れ渡った8月終わりの週末。時折、秋の訪れを予感させる心地よい風が吹く中、門司港をスタート地点とするちょっと変わったツアーに参加しました。

関門海峡の急潮流の迫力とその秘密を探る、題して「激流観察ツアー」。

海峡の景色を見慣れている筆者にとって、これから目の当たりにする激流のヒミツとドラマは、スタート時点では想像もつかないことでした。

道先案内人は、富田剛史(とみたつよし)さん。

普段はイベントや番組企画を通じて企業や商店街、自治体のメディア化をサポートしており、関門エリアと東京を行き来しながら、関門に埋もれた宝探しに情熱を注いでいます。

さぁ、これからのツアーでの新たな発見にワクワクしてきました!

トロッコ列車に乗って

今回のツアーをサポートしてくれたのが、トロッコ列車「北九州銀行レトロライン潮風号」。

今年で運行開始10周年を迎えました。

【記念のヘッドマークを掲げる】

【記念のヘッドマークを掲げる】

海風に直接触れることができる、開放的な車両。

運行距離2.1㎞、平均時速15㎞の「日本で一番短く、日本で一番遅い」観光列車です。

これまで何十回と乗車した筆者でも、「和布刈(めかり)トンネル」での車内ライトアップには心躍ります。特殊な塗料で描かれた魚たちが浮かび上がり、まるで深海を旅しているような気分になります。

【ヒラメやタコが浮かび上がり、乗客から一斉に歓声があがる】

【ヒラメやタコが浮かび上がり、乗客から一斉に歓声があがる】

激流を体感!

【「ザボッ、ドドッ、ゴー」海はまるで生きているかのよう】

【「ザボッ、ドドッ、ゴー」海はまるで生きているかのよう】

壇ノ浦に到着し、ツアーの開始です。

「あれを見て下さい!」

富田さんの指さす先には、潮流の速さを示す信号が。西から東へ9ノットと表示されていました。

大型タンカーが今にも止まりそうになりながらも、煙突から黒煙をあげ進んでいきます。「ガンバレ!」と思わずエールを送ってしまいました。

9ノット=時速20キロメートル。

これは、ボート競技のスピードとほぼ同じです。富田さんは参加者に質問しました。

「あの大型タンカーを人に置き換えると、どのような状況か分かりますか?」

う~ん。筆者は想像します。木が揺れるほどの強風の中、傘をさして風に向かって歩くのと同じくらいではないかと……

ワケは月の引力だった

関門海峡の潮流は、瀬戸内海に位置する鳴門、来島と並んで日本三大急潮流として知られています。本州と九州がS字で接しており、岸にぶつかり、うねりながら流れます。

【一見穏やかそうに見えても、海中では激しい流れが起きている】

【一見穏やかそうに見えても、海中では激しい流れが起きている】

地球は、月の引力を受けながら自転しています。海水面は月によって引っ張られ、月に向いた面とその裏面とが満潮に、その間の面は干潮になります。地球は1日1回転するため、満潮と干潮は1日に2回やってきます。

【潮流と月との関係がだんだん明らかに】

【潮流と月との関係がだんだん明らかに】

富田さんは身近なものを例にこう説明してくれました。

「ベッド上に敷かれたシーツを思い浮かべてみてください。その中央部を引き上げるとどうなりますか?引き上げるのが月の引力です。シーツの隅に日本列島があり、関門海峡でつながる太平洋と日本海の海面の高さは、満潮と干潮で2メートルも違います。だからこんな激流になる。しかも今日は、太陽と月と地球が一直線に並ぶ『新月』のため、その力は普段よりもはるかに強いんです」と。なるほど!

あの歴史ドラマは月のしわざ?

実は、ここ関門海峡でこれまでいろいろな歴史上のドラマが生まれてきました。武蔵と小次郎の巌流島の決戦、高杉晋作の幕末維新……

【関門海峡の歴史ドラマは月の引力が生みだした?】

【関門海峡の歴史ドラマは月の引力が生みだした?】

その中のひとつが、今から800年以上前の源義経と平知盛による壇ノ浦の戦いです。

源氏と平氏は東西に分かれて兵を結集。海上戦を得意としていた平氏は、西から東への潮流に乗り、源氏軍に襲いかかりました。しかし、源氏軍の粘りで時間が経過、潮目が変わったのです。こんどは東から西への潮流で源氏軍の逆襲です。一気に形勢は逆転、力を使い果たした平氏軍の兵士たちは、失望の中次々の海の中へ。

もし、月の引力が潮の流れを変えていなかったら、歴史は大きく変わっていたかもしれませんね!

人間には想像力がある!

ツアーの終着地が近くなってきました。

【道中、不思議な犬に遭遇(笑)】

【道中、不思議な犬に遭遇(笑)】

富田さんは参加者に語りかけました。

「今まで習ってきた関門海峡の歴史ドラマの数々が、実は月の引力の仕業、いわば遥か宇宙の天体ショーだったことがわかりましたね。私たちには、タカの視力や犬の嗅覚はありませんが『想像力』はあります。他の動物にはない想像力を活かして、これからも新しい発見をしていきませんか?」

参加者から拍手が湧きました。

【ツアーが終わり、筆者はラムネを飲みながら余韻に浸ることにした】

【ツアーが終わり、筆者はラムネを飲みながら余韻に浸ることにした】

毎日、目の前で広がる風景も実はいろいろな理由で存在し、これまでの歴史を重ねているのですね。関門海峡以外にも素敵なドラマはないでしょうか……

富田さんのツアー、これからも楽しみですね!

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関門時間旅行
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北九州銀行レトロライン潮風号
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取材時期:2019年9月
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