「辛いの、大丈夫ですか?」
そう聞かれて、「ええ。別段」と答えたものの、過去にはタイカレーを味見程度でギブアップしたこともある筆者。少しビビりながら、運ばれてきたカレーをいただいてみました。

ひと口目は、「それほどでもないかも」
でも、ふた口目を飲み込んだあたりから「おお!これは結構来てる ……」

口の中でヒリヒリ感が強くなっていくとともに、身体もじわっと火照ってきました。でも、食べ続けているとさわやかな香りと甘みも広がってくるから不思議です。

周南市須金、「fudokukan Bamboo」のグリーンカレー。辛さへの心配はすぐに忘れ、気がつくとさらりと平らげていました。

偶然見出した「グリーンカレー」という答え。

「無農薬で、化学肥料も使わずに育てた自家製の唐辛子と、県内産の自然塩やオーガニックのハーブなどをブレンドしたペーストを使っています」。目の前で同じように汗をかきながらカレーを食べていた代表の須田浩史さんが教えてくれました。「いま、このペーストの製造と販売に力を入れているんですよ」

それがこの「グルグル グリーンカレー」。

でも、このあたりはブドウや梨など果樹の栽培が盛んな地域。どうしてグリーンカレーのペーストを販売することになったのでしょうか?

「偶然なんです。いろいろやっていくうちに辿りついたんですよ」と妻の加弥子さんが話してくれました。

お二人は2011年、東日本大震災後の原発事故の影響から逃れようと、千葉県から家族4人で移ってきました。「とにかく西に行こうと場所を探していたときに、ここの果樹園が社員を募集しているのを見つけたので。3歳と生後半年の子を抱えていたので、必死でした」

果樹園で働くうち、浩史さんは来園客から「この辺に食事するところある?」と何度も聞かれるように。「車でコンビニのある町まで行ってもらうくらいなら、自分たちでなんとかしよう」と、加弥子さんがキッチンカーで地元野菜を使った弁当と併せて、自家製唐辛子のグリーンカレーの販売を始めます。

Bambooのキッチンカー

Bambooのキッチンカー

浩史さんも果樹園を辞め、14年には民家をリノベーションしてランチができる場所に。そこで食の安全性を求める 欧米からのバックパッカーを中心に、グリーンカレーが人気となりました。

クラウドファンディングで加工場開設

「それなら、これを事業展開してみよう」と、昨年春、クラウドファンデングで集まった資金で唐辛子の加工場を開設。1000本を生産したところ、美味しさと素材の良さが評判となり、関東など都市部からの注文が相次ぎました。今年は唐辛子の作付面積を拡大し、年間4000本の生産を目標にしています。

加工場でペーストづくりに励む加弥子さん

加工場でペーストづくりに励む加弥子さん

「もとはと言えば、唐辛子だって成り行きで栽培を始めたものです」と浩史さん。

移住後、さまざまな野菜を作ってみたものの、イノシシや鳥などにほとんど食べられてしまうことが続いたそうです。そんなとき、唐辛子を植えると鳥獣被害にあわないという話を聞きます。「やってみたら、本当だったんです」

そこから唐辛子の魅力に目覚め、現在はタカノツメだけでなく、タイやインド、沖縄原産のものなど20種を栽培しています。

「グルグル」に込めた想い

「この唐辛子を軸に、いい循環を起こしていきたいんですよね」と浩史さんは語ります。

お二人が考える循環とは、こういうことです。

畑は、休耕田を利用。

唐辛子やそのほかのスパイスをすべて無農薬・無化学肥料で栽培し、自然と共生。

ペーストなど加工品を食べた都市部の人たちが「いったいどこで作っているんだろう?」と須金に興味を持ち始める。

その中には須金を訪れる人も。そこから「自分もここで何かしたい」という人たちが出てくる。

休耕田を利用する人が増える。

このサイクルがぐるぐると回ることで、須金全体が賑やかで、楽しい地域になっていく―。
「グルグル グリーンカレー」にはそうした願いが込められています。

唐辛子の可能性を育てたい

その背景には、山間部の地域に生活するなかで感じる切実な思いがありました。「移住してきた8年前と比べて、目に見えて荒れた 土地が増えているんです。私たちの活動が、すこしでもその歯止めに繋がればと考えています」(加弥子さん)

カレーペーストは現在、青唐辛子ベースの「ノーマル」と、そこに黄唐辛子を加えた「ホット」の2種類 (いずれも1100円、税込)があります。今後はグリーンだけでなく、より辛さの強いイエローやレッドカレーも予定 。ピザソースなどに使うハチミツ入りのホットハニーソースも開発を進めています。

「唐辛子に秘められた可能性を、この地で大きく育てていきたい」

お二人の言葉を思い出しながら、購入したペーストを連日使っている筆者。カレーだけでなく、スープの隠し味や 冷や奴の薬味代わりにもぴったりなので、すっかりクセになってしまいました。この美味しさなら、お二人の地域への思いもそう遠くない将来に実を結ぶのでは……。そんな気がしています。

Fudokukan bamboo

住所 山口県周南市須万2460-6
TEL 0834-86-2037
URL https://www.fudokukanbamboo.com/