ここ数年、町づくりや移住推進で何かと話題にあがる山口県の阿武町(あぶちょう)。人口約3300人と小規模ながら、全国から注目を集めています。

例えば、地域を盛り上げるために阿武町内外の有志で結成された「ABUウォーターボーイズ」は、公演をすれば毎回超満員!全国放送で何度も紹介されるほどの人気ぶり。
また町独自の取り組みも盛んで、空き家の将来について話し合う「空き家ノートプロジェクト」、まちを支える仕事を支える「1/4worksプロジェクト」など、例を挙げればきりがないほど。その成果は数字にも現れており、ここ10年以上、転入と転出の差がほぼ横ばいで推移しています。

消滅可能性都市にも選ばれた小さな町がなぜ?
その理由を探るため、今回、昨年春に町の新しい拠点としてオープンした「阿武町暮らし支援センターshiBano(以下:shiBano)」を訪れ、スタッフの吉岡風詩乃(よしおかふしの)さんにお話を伺ってきました。

薬局をリノベして誕生したshiBano

shiBanoは、阿武町の中でも人口の集まる奈古地区、かつては商店街として栄えていた通りにあります。薬局だった店舗がリノベーションされ、再び風を通すようになりました。

お店の外観

可愛らしいshiBanoの外装。壁には奈古薬局の文字が残る

阿武町では2016年頃から「21世紀の暮らし方研究所(通称:ラボ)」という取り組みが始まりました。ラボは町の人たちが主体となって、町のことについて考えたり、みんなで町の動きを作ろうというもの。活動をしていく中で、阿武町の拠点がほしいねという話になり、候補に上がったのが現在のshiBanoだったそうです。

町に新たな流れを生み出すために

さて、そんなshiBanoには大きく3つの役割があります。
1つ目は移住の相談窓口。
2つ目は仕事と住まいの情報発信拠点として。空き家情報や周辺のイベント情報を提供するほか、「すみクラス」「はたらクラス」といった移住や起業の役に立つイベントも定期的に開催しています。

空き家の写真が貼られている

shiBanoの入口を開けるとすぐ横の壁には数々の空き家の写真が掲載されている

そして3つ目はチャレンジの場所。shiBanoには調理器具などが置いてあり、町の人がシェアキッチンとして使ったり、パン教室などを開催できるようになっています。

こうした取り組みを通して、やりたかったことを実現する人が出てきたり、町の勢いが感じられるようになったといいます。

ソファ

広々としたお手製ふかふかソファもシェアスペースとして利用可能。

地域の人を惹きつける吉岡さんの役割

実は、町役場の集落支援員という肩書きを持つ吉岡さん。shiBanoの運営以外にも町役場の職員として活動しています。吉岡さんは元々阿武町の出身で、いつかは阿武町で何かをやりたいと考えていたのだそう。

「2017年春に前職を辞めた直後、地域おこし協力隊の友人が阿武町でバーを始めるからと声をかけてもらい、1年半くらいそこで働いていました。役場が町づくりの拠点を作るという話は、バーがオープンして半年後くらいに聞いたんです。『ここで何かやったら?』と言われて興味はあったけれど、経営となると今の自分にはハードルが高いなと思って。でも、shiBanoのリノベが終わる頃に、町の集落支援員という形でスタッフを募集することになったんです。それなら町のためになることができそうだし、自分がそこにいるイメージも湧いたので、働かせてもらうことにしました」

吉岡さん

shiBanoの吉岡さん。近所の方が気軽に来れるよう、コーヒーを100円で提供

shiBanoのオープン前、拠点の名前も決まっていない段階で町の人で集まったことがありました。この場所で働くスタッフはどういう動きをしたらいいか?どんな役割をすべきか?そういったソフト面について話し合いが行われたといいます。
その結果、町外から来た人と町の中の人をつなげられるような、いろいろな意味でのパイプ役が必要だねということに。さらに吉岡さんがスタッフと決まった際には「1年目はとにかくshiBanoの空気作りを頑張って」そんな言葉を受けたといいます。

近所の方と吉岡さん

「この子の笑顔、最高じゃ!たくさんファンがおる」と嬉しそうに教えてくれるご近所の方

新たな課題と目指す場所

町で何か新しい動きがあると「こんなところでお店をやって、人は来るのか?」という心配の声も少なくないといいます。
「遠くから心配をするだけじゃなくて、実際にお店に行ってみるとか店主と話をしてみるとか、そういう行動に移してもらえたらいいなって思っています。ここで何かやろうとしている人たちにとっても、町の人がどういう不安を抱えるのか?そういうリスクを伝えて、みんなが気持ちよく過ごせる町にしたいです」と吉岡さん。

壁に貼られたたくさんのチラシ

shiBanoの壁にはたくさんの近隣のイベント情報が並ぶ

今後は、もっと町の人に喜んでもらえることをしたいとのこと。「やっぱり町に住む人たちがいい町だなって思えることが大切だと思うので、ちゃんと町の中に目を向けないといけないなと思っています。外から人を呼ぶための取り組みをしてくれる人たちはたくさんいるので、そこはもうお任せして。私は町の人がうまく循環できるようにしたいです」

阿武町は役場の方との距離感も近く、すぐに情報が届いたり、相談に乗ってもらえたりする関係性が築かれているようです。ひとりひとりの町に対する愛着や熱量の高さ、そしてそれを蔑ろにすることなく受け入れる町の体制は、相乗効果を生み、町の一員として主体的に活動する人を増やし続けているのではないでしょうか。

そして吉岡さんのように町を想って行動する人たちの存在こそが、小さくとも大きなエネルギーになっているのだと感じられました。

 

阿武町暮らし支援センター shiBano

住所|山口県阿武郡阿武町奈古2700-1

TEL|08388-2-3388

メールアドレス|shibano3388@gmail.com

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