WEBマガジン「ここいろ」を応援してくださっている皆様に日頃の感謝を込めて、山口県内各所をめぐる「ここいろイベントキャラバン」(全6回)。その第1回目が11月27日、下関で開催されました。

ゲストスピーカーは下関を拠点に活躍する辻翔平さん(「ムクロジ木器」代表)と山本真一路さん(「ポテトめがね」クリエイティブディレクター)のお二人。ここいろ編集長・芦谷志保里を交え、「移住からの起業と家業のアップデート」をテーマにトークセッション&交流会が行われました。

今回、当日のトークセッションの内容を一部抜粋して、「移住」「起業」を経験されたお二人の「生の声」をお届けします。

移住からの起業と家業のアップデート

トークセッション全景

 ―ひと口に移住や起業と言っても、色々なパターンがありますよね。お二人は、どのような経緯で下関に来られたんですか?

初めて木工に出会って、これを仕事にしようと思ったのは大学時代です。ろくろを使って木を回転させながら削っていく挽物(ひきもの)っていう技術があるんですが、刃を当ててシューっと木屑が飛ぶ感じがすごく気持ち良くて、これだ!と思って。
新卒で入ったインテリアの商社を辞めて自分の工房を持とうと思ったとき、クラフトが盛んな福岡県の糸島市とか材料が豊富な大川市とか考えたんですが……実は、会社に「辞めます」って言った3日後に妻のお腹に赤ちゃんができたことがわかって。

マイクを手に話す辻さん

辻翔平さん(「ムクロジ木器」代表):奈良県吉野郡生まれ。インテリアの商社勤務を経て、木工所を立ち上げるため山口県下関市に移住。2015年より木製食器製造業「ムクロジ木器」を創業。LEXUS NEW TAKUMI PROJECT 2018にて山口県代表の匠に選出される

芦谷

すごいタイミングですね。

これ、3日早かったら会社辞めてないと思います。空気読んでくれたなぁ。それで、嫁の実家に近い方が何かと良いだろうということで、下関を選びました。

―ターンで言うと、嫁ターン?

そうそう、こっち来てからもうずっと嫁のターンで(笑)

芦谷

そうなんですね(笑)。山本さんはどうですか?

山本

僕の場合は、父が培ってきた「ポテトめがね」がもともと下関にあったんです。福岡にいたんですが、家業を継ぐために帰ってきました。

手振りを入れながら話す山本さん

山本真一路さん(「ポテトめがね」クリエイティブディレクター):POTATOMEGANEオリジナルフレームやグッズのデザインの他、全店舗のディレクションを担当。日本眼鏡技術者協会の認定眼鏡士資格を持ちながらもファッション性のある眼鏡の提案を行なっている

芦谷

家業を継いで、まず何をされたんですか?

山本

トレンドに合わせることですね。父が若い頃は「おしゃれなお店」で通ってたんですけど、やっぱり時代に合わなくなってきているところがあって。下関店は元々コンビニのポプラだったんですけど、ピンクのタイルに看板がついてて、夜になるとグリーンに光るんですね。これはダサいなと。ペンキも自分で塗って、看板の字も書き換えて。まずホームページや内装、外観を変えて、それからブランドや商品も徐々に今の時代に合わせたテイストに変えていきました。SNSでの情報発信もすぐに始めました。

起業&継業の一歩を踏み出せたキッカケ

芦谷

起業なり継業なり、お二人が生活を変えた転換期というか、決断を後押しした何かってあったりするんですか?

山本

福岡のアパレルショップにいた頃、東京本部に引き抜かれてバイヤーにならないかって話があって。それを受けるつもりで準備も進めてたんですけど、旅行で行ったアメリカでもうものすごく価値観変わっちゃって。西海岸のすごい田舎で、ネイティブアメリカンのジュエリーを販売するお店があって。60くらいのおじちゃんたちが、1日何人客来るのってお店で、白髪をオールバックにして黒いレザーのジャケットにパンツでキメて、色んなこと熱く語ってくれたりして、かっこいいな!って(笑)

芦谷

確かに、それはかっこいい!

マイクを手に話す芦谷さん

ここいろ編集長・芦谷志保里

山本

自分ちっぽけだなーとか、田舎で自分のスタイルを貫くのもかっこいいなーと思いました。東京ブランドにすがってやってたって、いざ生身になったとき何も武器がないんじゃないかって。結局スイッチってそんなもんだと思います。壮大なビジネスプランがあるからやるわけじゃなくて、ちょっとした不満の種やちっちゃいきっかけに、自分が引っかかれるかどうか。後押しっていうよりも、「かっこいいな、やりたいな」と思ったらやるべきっていうくらいの気持ちです。

笑顔で話す山本さん

 

なんか、軽やかだね。

芦谷

かっこいいなあ。

僕は、ためらう気持ちがやっぱりありましたよ。弟子入りしとかんと不安かなとか、先に技法を勉強したいとか、バックボーンつけないとダメかも知れないとすごく思ってた。でもそんなとき大分の師匠が言ってくれた言葉が「仕事はお客さんが教えてくれる」。技術も仕事のやり方も。じゃあ、今何も持ってなくても大丈夫なんだなあと思って。

スクリーンに映る辻さん

あとは、一歩踏み出して殻を破って、もうやらんといけんって自分に言い聞かせるのが結構大事なのかな。ろくろを買うときね、一番いい機械からワンランク下げるだけで70万円違ったんです。それを妻に相談したら「一番メインの機械やろ?一番いいの買いなさい!」って言ってくれて。ありがとう、と同時に、これはもうやらんといけんなって(笑)

笑顔で話す辻さん 芦谷

移住して来られた方や起業された方って、そういう葛藤や悩みを乗り越えてこられてると思うんですよ。そして、今から移住や起業を考えている人はそういう実情を知りたがってる。でもそういう話に触れられる機会ってなかなか無くて、どこでも移住や起業は綺麗な話にまとめられてて。ここいろは、そうした綺麗ごとではなくて、本当に知りたいリアルな情報を伝えていけたらいいなと思っています。

僕も、移住したい人には経験者から情報を提供して、手を差し伸べる仕組みがあってもいいんじゃないかなと思います。僕が移住して来たときありがたかったのは、シンちゃん(山本さん)が開いたカレーパーティー。みんなでカレーを持ち寄って食べようというだけの企画だったんですけど、下関でお店をやってる方とかと知り合いになれて、そこから色んな輪が広がった。

山本

あれ楽しかったね。またやろうか。

芦谷

次は呼んでください。

やりましょう、やりましょう。会場の皆さんもカレーが好きだったらどうぞ(笑)

最大の障壁は「自分の気持ち」

―(会場からの質問)新しいことを始めるとき、周りから色々言われて決心が揺らぐことはありませんか?

質問をきく二人

山本

結局、邪魔するのって自分の気持ちなんですよ。不安とか心配とか、色々言われるのが恥ずかしいとか。だから、そういうのを取っ払うマインドを作るのが早い。実際何かミスっても大したことじゃないし、誰も見てない。人にどう思われても、その人が助けてくれるわけじゃないし……

僕も、職人たるもの技術を追求すべきで色々と手を広げるべきじゃないなんて言われることもあります。言うべきこと言って喧嘩になったこともある。でも最終的に笑えるようなことに持っていければいいかなあ、と思っています。色々言われて凹んだときは、あえて笑顔になって、笑顔を届けるようにして。それでも無理なときは、元の関係に戻れなくてもいいや、と。

 芦谷

なんだかそれって、起業するしないに関係なく、自分の人生にとって大事な気がします。最近はSNSが広まって、周りからどう思われているのかがすごく気になっちゃう。気にしたくないとは思いつつも、気にしちゃう。でも今お二人と話してて、そんなの気にしなくていいんだなって前向きな気持ちになれました。人から言われたことを気にしない強さが羨ましい!

でもまあ、飲んだときはそんなことも言うよなあ。不安だとかどうしよう〜とか(笑)

山本

そうだね(笑)

爆笑する二人

芦谷

お二人にもそういう時があるんですね。ちょっと安心しました(笑)

―最後に、移住や起業を考えていらっしゃる皆さんにメッセージをお願いします。

何をやっても絶対死ぬことないですよ。給料ゼロでもなんとかなる。なぜかって言うと、周りの人が良くしてくれるから。僕の場合もそうでした。だから今度は、僕が移住者に手を差し伸べたいと思っています。

山本

「鶏口牛後」って言葉があるように、鶏の頭にいた方が世界もよく見えるし、いろんな経験ができるんですよね。都会にいたら埋もれちゃう人も田舎ではすごく輝けるかもしれない。一度きりの人生ですから、やらない後悔より絶対やった後悔の方がいい。別に事業失敗したって罪になるわけじゃないし、月並みですが、やりたいことがあるならやってみるだけやってみたらいいと思います。

ここから何かがはじまる交流会

交流会全景トークセッション終了後は、地元のシェフが地元の食材を使って腕を振るったお料理を囲み、トークゲストも交えた交流会。美味しいごはんを前に、会話も弾みます。

「おしゃれな間接照明を作ろうと思っていて」
「木製のランプシェードを付けたらかわいいかも」
「それ、うちの運営するクラウドファンディングで資金集めしませんか」
「その話、『ここいろ』で取材させてください!」

ここから何かがはじまる予感に包まれながら閉会しました。

集合写真

第2弾は2020年1月16日(木)、山口県美祢市にて開催予定。
普段「ここいろ」を見てくださっている方、地域の楽しい暮らしを再発見したい方、新たな広がりにワクワクする方、大歓迎!
詳細は後日、サイト上でお知らせします。