山口県東部に位置する光市。山と田んぼ、住宅が程よく混在する三井(みい)地区に、今回ご紹介するパティスリー、「ミルデリス」はあります。 

小さな隠れ家パティスリー、ミルデリス

お店の入り口大通りから一筋中に入った、アパートの一角に佇む小さなお店。ここがパティスリーとは気づかずに通り過ぎてしまいそうな、さりげない外観です。 

カウンターに並ぶ焼き菓子中に入ると、焼きたてのお菓子の甘い香りに包まれます。運営するのはパティシエの安部恭子さん。2011年にこの場所にお店を開いて以来、製造から販売まですべてを一人で切り盛りしています。店内は3坪ほどの小さなスペースですが、棚にはクッキーやフィナンシェ、リーフパイなど可愛らしい焼き菓子がずらり。しかしながら、普通のパティスリーにあるべきケーキのショーケースが、どこにも見当たりません。 

ショーケースのないケーキ屋さん

ケーキを持って微笑む安部さん「ケーキを買いに来られるお客様には、一つひとつ私がご説明して選んでもらっています」と、安部さんは厨房から本日のケーキをトレイに載せて持ってきてくださいました。 

美しいケーキ

色とりどりの美しいケーキたち。フランボワーズ、キャラメルショコラ、ピスタチオ、ホワイトショコラ、モンブランなど

「この場所にお店を開くにあたり、木造の温かい内装にはガラスのショーケースの圧迫感が似合わないと感じたんです。大家さんに話したら、『ショーケースがなくてもいいじゃない』と言われて。それもそうだなぁと、ショーケースを置かずに営業を始めました」 

ショーケースがないことで、逆に一人ひとりのお客様ときちんとコミュニケーションが取れるお店が出来上がりました。初めてのお客様など驚かれる方も多いのではないですか、と尋ねたところ、こんな答えが。
「以前、いつも焼き菓子を買ってくださるお客様がいて。何度目かの来店で先客の方がケーキを買われたんです。奥からケーキを持ってきたのを見て、『ケーキもあったんだね!』と驚かれていました(笑)」  

いくつでも食べたい、ミルデリスのスイーツ

ショコラケーキ

沢山ある中から選んだのは、こちらの二種。キャラメルショコラ(写真左)とホワイトショコラ(写真右)です。キャラメルショコラはしっとりとしたチョコレートのスポンジにキャラメルのほろ苦さがぴったり。ホワイトショコラは薄くコーティングされているため、ホワイトチョコにありがちな甘ったるさがなく、中にはクレームブリュレとアクセントに木苺のソースが入っています。どちらのケーキも口の中でスッと溶けるようなやさしい甘みと爽やかさがあり、濃厚でありながら、幾つでも食べられそうな繊細な味わいが広がります。 

アップルパイこちらは秋限定のアップルパイ。山口県のりんごの名産地、山口市徳佐のエコファームで栽培されたりんごが使われています。何層にも重なるサクサクのパイと口いっぱいに広がる芳醇なバターの香り、酸味のある爽やかなりんごのフィリングの組み合わせに、思いがけず感動してしまいました。間違いなく、今までの人生で出会った中で一番のアップルパイ! 

立て続けにケーキやパイを食べても、胃にもたれず幸せな余韻だけが残るミルデリスのスイーツたち。その秘密は、一体どこにあるのでしょう。 

選りすぐりの素材を丁寧に

お客さんに説明する安部さん製菓学校を卒業後、京都や大阪の洋菓子店で勤務し、フランスでお菓子づくりの短期研修も経験された安部さん。 

「当時勤めていたお菓子屋さんで感じたのは、もっと良い材料を使いたいということでした。従業員がいると人件費もかかるし、会社としての利益を考えると難しいことだとは分かりますが……。それから裏方であるパティシエはお客様とのコミュニケーションを直接とる機会もありません。また将来的に子育てをしながらお菓子づくりを続けたいと考えていましたが、勤めているとそれも難しいと思いました」 

そんな安部さんは、自然に近い場所で子育てをしたいという思いもあり、地元である光市にUターンして数年後、ミルデリスを開業することになりました。現在お店で使っている素材は、国産小麦、山口県の秋川牧園の卵や牛乳、種子島の釜だきの精製されていないお砂糖など、自身が納得できる選りすぐりのものばかり。 

「素材が良くても、日にちがたつと美味しくありません。シンプルなものはごまかしがきかないので尚更。大量にまとめて作ることはせず、少量ずつ作りフレッシュなうちにお客様に届けられるよう気をつけています」 

クッキー

ギフトにも人気の焼き菓子。シンプルなクッキーやブールドネージュなど、後を引く味わいに素材の良さと丁寧な仕事が光る

待合スペース

待ち合いスペース。これまで安部さんが製作したバースデーケーキの写真を参考に、ホールケーキの相談、注文が可能

再来年、2021年にオープン10周年を迎えるというミルデリス。子育ても一段落するそうで、今後新たな展開を考えているのだそう。 

「今は製造・販売をメインにしていますが、将来は喫茶を併設できたらと思っています。パンも作るので、コーヒーと一緒にパンやクッキーでも食べに行こうか、と思ってもらえるような気軽なお店。この辺りにはそういうお店が少ないので、地域の人の憩いの場にできたら」 

フランス語で「ミル=千」と「デリス=美味しいもの」という意味をもつミルデリスには、いつでも色んな美味しさが詰まっています。
喫茶が併設されたら毎日でも通いたい、と未来のミルデリスを想像しながら、ちゃっかりクリスマスケーキの予約をして、帰路に着いたのでした。 

 

Mille Delices(ミルデリス) 

住所|山口県光市三井5-18-22-D 

TEL|0833-77-3173 

営業時間|10:00〜18:00 

定休日|日曜日(不定休あり)