山口県周南市。山陽新幹線の高架橋がすぐ近くを通る市街地の一画に、のぼりと看板を控えめに掲げた民家があります 

「小さな加工場 百日紅 食事と喫茶 

外観お庭入ると、立派なサルスベリの古木が迎えてくれました。 

百日紅その奥にある店舗の扉を開けると、午後の日差しにあふれた空間が広がっていました。雪見障子や床の間などが、どこか懐かしさを感じさせてくれます。 

内観

ここは私の実家。そしてこの部屋はもともと、祖母が茶室として使っていたんです」と、店主の平井多美子さんが教えてくれました。足腰の弱くなったお年寄りにもゆっくりしてもらえるようにと椅子とテーブルを置くために畳をフローリングに張り替え、2019年4月にカフェとして解放したそうで 

ランチメニュー、シンプルな「おにぎりプレート」。おにぎりに、旬の野菜が入ったスープ、同じ山口県内にある上関町祝島産のびわ茶などが付いています。いずれも有機農法で栽培されたものばかりです。 

おにぎり

おにぎりプレート (平井さん提供)

食の安全を求め、加工品づくりからスタート

当初は農産物の加工だけでスタートしたんです。食と農業と環境に関心があって、安全な農産物で自分も何かつくってみようと」  

栄養士として活動していた平井さんは、食事のカロリーや栄養素などの数値だけではく、「どこで、どんな風に育てられたのかも大切」ということに気づき、次第に環境負荷の少ない農法などを実践している農家さんと知り合うように。仕事を退職した2013年、いまの場所加工場を開設しました。 

「思いのある農家さんたちは農業のことだけでなく、地域全体、さらには地球全体の環境のことまでしっかり考えている方ばかりなんです。私たちの日々の暮らしが、この星のすべてに繋がっています。だったら、自分できることから始めてみようと思って 

多美子さん

平井多美子さん

まず、山口市で有機栽培されたショウガと粗糖を使った「生姜シロップ」と、祝島のヒジキ天然塩などとともに練り込んだ「ひじきクラッカー」を商品化。次女の槙さんも手伝い始め、県内産のブルーリーやみかん、梅のジャム、焼き菓子なども加えて、知人のお店や地域のマルシェなどで販売を続けていました。 

シロップ

生姜シロップ

クラッカー

ひじきクラッカー(平井さん提供)

出向くだけでなく、活動の拠点としていろんな人と交流できる場があったらいいね」。2人で温めてきたそんな思いを形にしたのが、こちらのカフェです。 

 木・金・土曜日のみの営業で、木曜日はどら焼き、金・土曜日はマフィンと、手づくスイーツも。「りんごの渋皮煮や、枝豆をすり潰したずんだ餡など、その季節のものも登場しますよ」(槙さん)  

ゆっくり読書できる空間に

店内の書棚には、祝島についての本をはじめ、生き方や哲学の書籍も並んでいます。 

書棚

「私たちが本好きだから。お客さんと本を通じて会話が弾んだり、そこからいろんな繋がりが広がったり。そんな出会いもカフェを始めた楽しみのひとつなんです」と多美子さん。「それに最近、静かにゆっくり読書できるお店って少なくて。コーヒーを飲みながら心ゆくまで本の世界に浸ってもらえたら嬉しいですね」 

ソファ

カフェを始めて半年。すでに繰り返し来店されるお客さんなど、ファンも生まれ始めています。 

「お話し会を開いたり、本をシェアしあったり、そんな小さな催しも開きつつ、無理せず続けていきたいですね」と多美子さん。槙さんは「うちのシンボルツリーのサルスベリ(百日紅)のように、小さな花が末永く咲き続けるような場所になればと話しています。 

向き合って話す二人

自宅に戻って、さっそく生姜シロップをいただいてみました。柔らかな甘さとともに、ぴりりとした生姜の辛みがしっかりと感じられます。ひとくち飲むごとに身体が温まり、同時にお二人が醸し出す温かで静かな空気が蘇ってくるようでした。 

今度は文庫本を手にお邪魔しようと思います。

 

小さな加工場 百日紅

住所|山口県周南市都町3-10

営業|木・金・土曜日9:30~16:00 

TEL|090-6834-1802

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