山口県柳井市。山の中腹を走る通称「やない美ゅーロード」を車で通ると、あまり見かけない標識が…… 

トンネル

「美ゅーロード」の美って、イノシシのことなのか……などということはもちろんなく、車を止めるとそこには陽光を受けて輝く瀬戸内海が広がっていました。 

海「こんなところ暮らせたら最高だろうな」などと想像しながら周囲を見回していると、目の前にガラス張りのハウスがあることに気が付きました。 

「これはいったい何?」 

お邪魔して扉を開けると、オープンしたばかりのお店などでよく見かけるゴージャスな花でいっぱいでした 

ピンクのお花

ここは胡蝶蘭(こちょうらん)の生産・販売を行う「キノイ」のハウス中では花が咲いたり、大きな蕾をつけたりしたたくさんの株が、出荷の日を待っていました。 

「見た目の美しさだけで全てが決まる。花として別格の高級品なんです。明るい山陽側に移ってきて、育ちも質も良くなりましたね」。そう話すのは、代表の益永茂明さん。妻郁恵さんと約15000株を育てています。茂明さん

日照時間差は年間400時間以上

茂明さんは下関市出身。日本海に面した北部のまち30年以上続く胡蝶蘭栽培農家の長男です 

10年ほど家業を手伝いながら独立の準備を進め「日照時間の長い山陽側」「ハウスなど既存の施設を借りられるところ」といった条件で探していたところ、栽培仲間からいまの場所を紹介されました。同じものを栽培されていた方数年前に亡くなり、ご家族が「花の農家さんに使ってほしい」と3棟あるハウスの借り主を探していたところだったそうです。 

実家のある地域と、いまの場所との年間日照時間を比較すると、過去30年間の平均で400時間も違います。「それに加えて、環境も、景色も最高。質のいい天然水まで使える」と即決20184ってきました「夏は海風が吹き上げてきて涼しく、冬は雪が積もることもない。東南アジア原産の胡蝶蘭を育てるには、ここの環境は最高ですね。山陽側に移ってきて、本当に良かったです」
ポスト

1年3カ月、愛情を込めて  

苗から出荷までにかかる時間は、およそ13カ月まず、台湾から仕入れた苗を25度以上に保った育苗用のハウス8カ月近く置き、大きくます。続けて開花に向けて1825に管理したハウスに移し、そこから満開になるまでさらに約半年。そうして咲きそろった31鉢に寄せ植え出荷します。毎週、県内と福岡、広島の6市場に計約80鉢を卸しています。 

苗

育苗用のハウスは、まだ葉っぱだけの苗でいっぱい

郁恵さんは東京都出身。茂明さんとは国の外郭団体による農業の海外研修制度がきっかけで出会いました。郁恵さんはスイスでの有機農法研修、茂明さんはオランダでの蘭栽培でしたが、同期という縁から交際を続け、2013年に結婚。独立するまで、郁恵さんも茂明さんの実家で栽培を手伝っていました。 

「贈られた喜び方が違うんです飾るだけで、しかもいずれ枯れてしまうのに。これほど人の心を動かす花って、ほかにないんじゃないかって思う。出荷前の花1本ずつビニールを掛けながら、郁恵さんそう話しま 

郁恵さん

「広島も近く、空港もある。とても暮らしやすいまちですね」 

柳井市について、郁恵さんは「すごく田舎ということもなく、ある程度の物なら十分そろうまち。岩国錦帯橋空港もすぐ近くにあるし、広島市だって近い。とても暮らしやすいですね」と気に入っています。 

出荷作業は、柳井市の観光名所「白壁の町並み」をモチーフにした化粧箱に収めて完成。柳井市への二人の想いが感じられるデザインです。 

箱

「卓上サイズの胡蝶蘭もつくりたい」 

将来的には卓上サイズや、知り合いのクラフト作家とコラボ商品なども考えています。「企業間の贈り物だけでなく、自宅に飾って楽しめるようにもしたい。そうしたバリエーションのあるものを、地元のイベントなどにも出品してみたいんです」(茂明さん) 

二人が常に気を付けていることがあります。それは「きちんと、丁寧に」 

茂明さんによると、これまでに景気の低迷などから廃業した方がたくさんいたとのこと。「でも、残っている農家さんは、きちんと、丁寧に育て商品に仕上げていた人ばかり。私たちもそういう胡蝶蘭農家でありたいと願っています 

花を愛でる二人瀬戸内の明るい日差しのもとで愛情を持って胡蝶蘭を育て続ける益永夫妻そんなお二人の歩みそのものが、これから「美ゅーロード」になっていくのでしょう。 

 

胡蝶蘭生産・販売 キノイ 

住所|山口県柳井市大畠1494

MAIL|kinoi.2018@gmail.com