「田舎の保健室」
そう聞いて、どんなイメージが浮かんで来ますか 

山口県防府市。一級河川佐波川(さばがわ)沿いに広がるのどかな風景の中に、そんな名前のカフェができました。なぜカフェなのに「保健室」なのか。そこには、オーナーの経験に基づいた想いが込められていました。 

内観

優しい味が楽しめる保健室 

店内に入ると、そこは木の温もりが感じられる空間が広がっていました。白衣の先生も、パイプベットも見当たりません。 

カウンターに座って、「ケークサレランチ」という聞き慣れないメニューを注文。オーナーの西村妙子さんが厨房から運んで来たのは、黄色や赤、白、緑など、見た目もきれいな一品で 

西村妙子さん

卵と米粉でつくった塩味のケーキ「ケークサレ」をメインに、サツマイモのスープ、生ハム、人参のラペ、自家製ドレッシングのサラダなどが少量ずつ並んでいます。いずれも素材の美味しさが口の中にそっと広がる、優しい味でした 

ケークサレ

「高齢の方も、食の細い方も、小さなさんでも楽しめるように工夫しました。お客さんの体調に合せて、可能なかぎり対応もします」と西村さん。このほか、鶏の胸肉のチキン南蛮やナポリタンなども。「元気一緒に同じテーブルで食事を楽しんでほしいので。そんな願いを、シェフが形にしてくれました 

ドリンクメニューも充実。特にスムージーは、鹿児島県徳之島産の「とくのしま甘酒」に、りんごやアボガドなど季節の食材をミックスしたこだわりの一品です。 

スムージー

20年の看護師経験を生かして 

メニューから感じられる健康への想いの元には、西村さん看護師経験がありました。山口市の医療機関に20年間勤務。療養型病床長期入院している高齢者の姿に胸を痛めていたそうですその後訪問看護の部署に異動し、お年寄りにとって住み慣れた自宅でいつもどおりに生活することがいかに健康的なのか」と痛感します。 

「何か、新しい形で在宅の健康サポートできないか」と模索していた2009年ごろ、日本初のがん相談施設マギーズ東京」を開設した訪問看護師・秋山正子さんの研修に参加。地域の中に溶け込んで相談に応じるその取り組みに感銘を受け1年間東京に通って学びを深めました。 

「『医師にこう言われたけど、どうなんでしょう』『ほかの治療ってないのでしょうか』など、患者さんはいろんな不安を抱えています。でも、持って行き場がないんです」その受け皿を地域でつくって行こうと決め、構想を練り始めます。 

20184月に病院を退職し、本格的起業準備を開始。秋山さんが開く健康相談全般を受け付けるサロン「暮らしの保健室」を参考に、地域にあった形を模索していきました。 

想いに共感。自分の店を閉じ、シェフが全面協力 

「健康は日々の食事と密接に関わっている。だからきちんとした食事も楽しめるカフェにしたい。そう考えていたとき、知人を介して山口市にあったCafE’s-Kitchen LinkS(カフェズキッチン リンクス)」のオーナーシェフ間々田まゆみさんと出会います。 

間々田さん

西村さんと談笑する間々田さん

美味しく食べてほしいという一心で料理を探究し続けてきた間々田さんの情熱に、西村さんは心を打たれたそうです。「ぜひ一緒にやってほしい頼んだところ、間々田さん食を通して健康サポートをしたいという想いに共感しました。私が力になれるのなら」と快諾。キッチンカーの事業だけを残し、11年続けたお店を閉め、調理全般を担当する決意をします。 

西村さんは実家裏に店舗を新築2019112人の思いを併せた「田舎の保健室LinkSがオープンしました。 

外観

トイレにオストメイト(人工肛門、人工膀胱)専用の洗浄機を設置しているのも特徴のひとつ。がん患者の方だけでなく、病気で家族を失ったや健康に不安がある方など、様々な方が相談に訪れています。どんなに対しても、西村さんが心がけているのは「とにかく聞くこと」 

とことん聞いて、寄り添っていく

「深刻な悩みほど、誰にも打ち明けられず一人で抱えてしまう方が多いでも話をじっくりといていくと、ご自身がこれからどうしたいのかといった意思決定が明確になっていくんです。そうした自分のなかの本当の想いに繋がるまで、とことん寄り添い続けます。方向性が見えてくれば、必要に応じて医療機関や専門家などに繋いでいくそうです。 

相談コーナー

相談用のテーブル

店内には、長く座っても疲れにくいようにオーダーメードした椅子などを設置した相談用の一角も。飲食代のほか、相談料金や制限時間などは設けていません。週に一度訪れて話をすることで気持ちをリセットし、一週間の仕事を乗り切っている方もいらっしゃるそうです  

この空間で美味しい食事を楽しみながら、話すことで心の重荷が軽くなり、本当に望む生き方に繋っていくなら嬉しいです」と西村さんは話しています。 

店内

今後、西村さんは文科省が推進する学校でのがん教育の外部講師としても活動する予定。中小企業向けの健康サポート事業も展開していく計画も進めています。西村さんが不在のときには、現役の看護師仲間がボランティアで訪れ、相談を受けてくれます。 

 

執筆時期:2020年1月
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田舎の保健室LinkS

住所|山口県防府市上右田沖田ノ口781 

営業|10:00~18:00

定休|木曜

TEL|090-1335-3110