「地元の鍋料理の大会で、三連覇した鍋がある」
そんな噂を耳にして、その鍋が食べられるというお店にやってきました。 

外観

「ミルクキッチン燦燦(さんさん)」。山口県防府市の静かな住宅街にある小さな店舗です。
お目当ては、ここで提供されている「ミルク鍋」。地元で15年続く創作鍋の大会「鍋1グランプリ(イベント記事はこちら)」でかつて、3年連続で人気ナンバー1輝いたそうです 

乳清によるあっさりした食感 

カレー、ピザ、あんかけなどの品々が並ぶなかで、ミルク鍋をメインにした看板メニュー乳和食セット」を注文。
鍋のふたを開けると、白いスープの中に野菜がたっぷり入っていました。 

ミルク鍋セット

こってり濃厚な牛乳の味を予想しながら一口いただいてみました。……意外にも、あっさり、さらっとした口当たり。それでいてミルクの優しい味わいが、口の中にしっかり広がります。 

「この鍋は、だし汁にホエー(乳清)を使っています。あとは新鮮な牛乳ですね。水は使っていないんですよ」と、店長の池田静枝さんが教えてくれました。 

ミルク鍋

思い出の「牛乳豆腐」を再現

人参、玉ねぎ、ブロッコリー、鶏肉に豆腐と、具材もたくさん入っています。
でも、ちょっとだけ違和感が。この豆腐、食感がすごくしっかりしています。豆腐と言うより、別の何かのような……。 

「それはうちの新鮮な牛乳でつくったカッテージチーズ。隣の小皿に載っているスティックもそうなんですよ 

チーズ

カッテージチーズと言えば、そぼろのようなポロポロとした状態のものが一般的。こんな固形のものを見るのは初めてです。  

このチーズには、池田さんの思い入れがあるそうです。
「ここに嫁いだ(昭和45年)ころ、子牛が生まれるたびに、おばあちゃんが作ってくれたんです。固めて、水を抜いて牛乳豆腐って呼んでいました。これが煮ても、焼いても美味しくって。お店をすることにしたとき、このチーズを出そうと決めていたんです」 

池田さん1

牛乳豆腐の思い出を語る池田さん

敷地内で85頭を飼育

「うちの新鮮な牛乳」「子牛がるたびに」……。の言葉から分かるように、ミルクキッチンは同じ敷地内で家族が経営している酪農業「池田牧場」の一事業です。 

牧場では、牛が自由に動き回れる「フリーストール型」の牛舎で85頭を飼育。1日につき、およそ1トンの牛乳を生産しています。 

牛舎

子牛

お店のオープンは2014年。「力仕事が多い酪農だけでなく、年齢を重ねても長く続けられることを」との理由から、車庫を改築して店舗にしました。 

ミルク鍋の誕生は、お店を始める8年前の2006年。山口県が開催地だった国民文化祭の関連イベント「全国お国自慢 鍋コロシアム」への出場がきっかけでした。酪農家の女性グループでレシピを考えて振る舞ったところ、入賞は逃したものの「おいしい」と好評だったそうです。 

翌年からは防府市生活改善実行グループとして「鍋1グランプリ」にエントリー。改良を加えて挑んだ2008年から3年連続で優勝を飾りました。それ以降も協賛として出場し、いまでは同イベントの名物となっています。 

デザートも、パンも、「ミルクづくし」 

鍋だけでなく、他のメニューも自家製ミルクをふんだんに使っています。 

朝絞りミルクの牛乳にはじまり、ミルクもち、ミルクプリン。特にミルクもちは、プルップルな食感がくせになりそうです。 

ミルクもち

ミルクもち

手作りのミルクパンもお土産として人気。ホエーと牛乳がたっぷり入った生地は、もっちりとした歯ごたえがあり、まろやかで豊かな牛乳の風味が楽しめます 

ミルクパン

酪農家が激減していくなかで

池田さんによると、かつては池田牧場のある牟礼地域だけでも15軒前後の家庭で乳牛が飼われていたといいます。 

「自分たちで飲むために23頭を世話していました。余った牛乳は売りものにして。でも後継者不足や住環境の変化など、いろんな要素で飼いづらくなっていって。いまこの辺じゃ、うちだけですね」 

牛舎が珍しくなったこともあり、近隣の幼稚園児や小学生がスケッチや搾乳体験に訪れるそうです。「牛たち触れ日ごろ食べているものが作られる現場を感じてほしい。ミルクキッチンで牛乳の美味しさを提供するのと同時に、そうした食の根幹についても伝え続けていきたいですね」と、池田さん話しています。 

池田さん2

 

ミルクキッチン燦燦

住所|山口県防府市沖今宿2丁目11-11

営業|11:00~15:00

定休|月曜、火曜、水曜、第3木曜

TEL|0835-38-3323