クラッカーの上に盛られた真っ赤なジャム。食べてみると、口の中で溶けていくような柔らかな食感とともに、ほのかな甘さが広がっていきました。 

トマト

 

「何のジャムか分かりますか?これ、トマトなんです。黄色いほうはカボチャ。うちの純粋はちみつを使った無添加の『ハニーベジタブルジャム』です 

ここは山口県山口市。周囲に田園風景が広がる久保養蜂場の加工場。代表の久保紀子さんによるとトマトは地元特産の秋穂トマトを、かぼちゃ「栗より甘い」と評判の地元のくりまさるを使っているそうです 

「こっちのはちみつ漬けのりんごも、市内の徳佐りんごです。こうして紅茶に入れるだけで、あっと言う間にアップルティーになりますよ 

りんご

徳佐りんごのはちみつ漬け

もちろん、加工品だけでなく非加熱の生はちみつも。季節ごとの花々から集めた百花蜜などのほか、あまり見かけないクロガネモチの蜜もあります。「山のれんげ蜜とも呼ばれます。自生していたり、街路樹に植えられていたりと、この辺りにたくさんあるので。きれいな黄金色とフルーティーな味わいが特徴なんですよ 

クロガネモチの純粋はちみつ

最初は、ハチが近づいただけで「キャーッ!」 

はちみつのことになると話が尽きない久保さんですが、養蜂そのものは「仕方なく」始めたといいます。 

もともと、イチゴ農家だった久保さんの義父がミツバを飼っていました。「受粉用に養蜂家の方から借りていたハチに興味を持って、おじいさんが趣味で始めたみたいですね。そのうちにイチゴより面白くなったようで」。その義父が16年前に亡くなり、久保さんが20群のハチ受け継ぎました。「生き物だから、放っておけなくて」。採れたはちみつは知り合いに分けていたそうです。 

ミツバチへの想いを語る久保さん

ただ、ひとつ大きな問題がありました。
「そのころは、ハチが苦手で。ほんとに怖くて近くに寄ってきただけでも『キャーッ!』ってなっていました。実際、しょっちゅう刺されていたんです 

そんな久保さんを変えたのは、はちみつのファンだった方の声でした。
「美味しかったから、またお願い
「これからも食べたいから、頑張ってね」
そうした感想を聞くようになって、それまでとは違う意識が芽生えていったそうです。 

ミツバチに愛情を注ぎ始めたら……  

「楽しみにしてくれる皆さんのために、もっと本気でやろうと。ハチだけに向いていた気持ちが、はちみつを待っていてくれる皆さんに向くようになったんです」

養蜂場

 

すると自然に、そのはちみつを懸命に生み出してくれるハチたちへの感謝の念も大きくなり、「かわいいね」「いつも蜜を集めてくれて有難うね」と声を掛けながら接するように。しばらくそうしていると「まったく刺されなくなっていたんです。気持ちって、ちゃんと伝わるんですね」。そこから、ハチたちへの想いも一層深くなったといいます。 

少しずつ生産量を増やしながら80~100群を飼育するように。はちみつ近くの「道の駅 あいお」「道の駅 きららあじす」などで販売し始めました 

苦手だったハチの世話を久保さんが続けてきた理由が、もうひとつあります。それは「いつかはちみつと、地元の農産物を掛け合わせた加工品を作ること」。夢を形にするため、2017年に加工場を開設します。 

地域の特産品とあわせて、夢の加工品づくり 

商品開発のため、地元の農漁業者加工業者・農産物販売者などでつくる「山口市南部地域特産品開発会議」へ参加。そこでトマトやくりまさるりんごなどをつかった商品づくりにチャレンジすることを決めました。試作したものを会議のメンバーに食てもらい、その感想をもとに加工場で作り直す。そしてまた試食してもらう……。そんな地道なサイクルを半年間重ねて、「ハニーベジタブルジャム」と「はちみつ漬け」の各商品は誕生しました。 

「はちみつ漬け」は6種類。りんご、レモン、しょうが、ゆず、いちご、ブルーベリーがある

「試作の段階では、失敗ばかり。でも、何度も失敗したからこそ、いい商品になったと思っています。反対に一発で完成したものって、あとで『ああ、こうすれば良かった』ってなりますから 

近隣の道の駅などのほか、宇部空港(宇部市)の売店でも販売。素材の良さや見た目の美しさなどから、お土産に求める人が増えているそうです。 

お客さんの中からは、すみっこに少しだけ残ったジャムどうしたらきれいに取れる」といった問い合わせも。「そんなに気に入ってもらえたと思うと、嬉しいですね」 

ベジタブル

秋穂トマトとくりまさるの「ハニーベジタブルジャム」

養蜂と加工品づくりで忙しい毎日。
ミツバチと地域の自然、そして開発会議の皆さんのおかげでいまがあります。これからもその感謝を忘れずに食べて健康に、そして幸せになれる商品を作ってきたいですね 

 

執筆時期:2020年2月
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自然の恵みをそのままあなたへ 久保養蜂場 

住所|山口市秋穂東2389

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