廃校になった小学校がカフェに
山口県宇部市東吉部(ひがしきべ)地区。
市の中心部から20キロメートル北の長閑な里山に、廃校となった旧吉部小学校の校舎があります。最近この小学校の職員室がカフェに改装され、密かな人気スポットとなっているとのこと。早速出かけてみることにしました!
片道100円!路線バスの旅
今回の目的地には路線バスが走っています。バス会社のホームページを見ると、運賃は片道なんと100円。車で訪れるよりも楽しそう!バスターミナルに向かいました。

船木(ふなき)停留所。私以外に乗車した客は3人だった
取材当日は厳冬の合間の穏やかな陽気に包まれ、車窓からの長閑な景色に癒されながら、目的地に到着しました。
懐かしさあふれる教室

旧吉部(きべ)小学校の職員室がカフェに改装された
「こんにちは、ようこそ職員室カフェへ」
柔和な笑顔で出迎えてくれたのは、店主の美澄正和(みすみまさかず)さん。
「ここは旧吉部小学校です。職員室の中は当時のままです」と私を店内に招き入れてくれました。

むき出しの蛍光灯が柔らかく照らし、壁には行事予定を記す黒板や木製のスピーカーが。今にも校内放送が聞こえてきそうだった
「職員室カフェ」は2年前にオープン。彫刻や美術作品を市内各所で展示する宇部市のイベントの休憩所として臨時に「開校」したところ、利用客からの評判がよく通年で営業することになったそうです。

板張りの床に児童用の机と椅子がおかれ、ほのかな木の香りがただよう
ふと小学生時代を思い出し、室内を見渡していると、「食事も懐かしさいっぱいですよ」と促され「季節の給食メニュー」を注文しました。
銀色食器でいただきます!

盛りつけを始める美澄正和さん(左)
先生たちが座っていたであろう職員室の一角が厨房となっており、美澄さんは、銀色の食器にミニトマトやタマネギを盛りつけながら、エビ、椎茸、タケノコを揚げていきます。
パチパチと揚げる音とともに食欲をそそる香りが漂ってくると出来上がりです。
「おまたせしました。どうぞ召し上がってください」
ほんのり湯気が立ち上る天ぷらからいただくことにしました。
サクッサクッ♪
揚げたてはこんなに歯ごたえがあるのかと驚きながら、奥のカレーに目が行きました。
「時間をかけてコトコトと煮込んでいます」と美澄さん。ご飯と一緒にいただくと、トロリとしたルーとほのかに甘いお米が調和し、奥深い味わいが広がりました。
「地元食材を使った自慢の人気メニューです」美澄さんは胸を張ります。
食後にはケーキとコーヒーも付き、おなか一杯になりました(笑)
地域の課題を味方に
取材中にも数組のお客さんが「給食」に舌鼓を打ちながら、スマートフォンで写真を撮っていました。SNSでのつぶやきで「来校」する人もいるようです。
一方、周辺には華やかな観光名所や商業施設は見当たりません。
この地域のことをもっと多くの人に知っていただくための仕掛けづくりも動き始めています。
「アレを見てください」美澄さんは窓の外を指さしました。

竹の灯篭。東吉部地区では生い茂った竹林が年々田畑を浸食している。定期的に伐採した竹を加工し、夜間に蝋燭を灯して地域をライトアップする試みをしているそう
「もう一つ。ここにはかつて鉄道が走っており、今でもその遺構を見れるんですよ」
え!驚く私に美澄さんは笑いながら、戦前蒸気機関車が走り地域の貴重な足になっていたこと、そして今も当時のトンネルや橋梁などが残っていることを説明してくれました。

旧船木鉄道の「大棚トンネル」。線路跡がウォーキングコースに整備されるとともに、桜や紅葉といった季節の彩りが楽しめる。ロケに使われたことも
魅力は与えられるのではなく見つけるもの
美澄さんは締めくくります。
「高齢化が進む地方の衰退を止めるのは簡単ではないと思います。でも工夫次第では地域に眠るダイヤモンドの原石をピカピカに磨くことができるかもしれませんね」と。
懐かしの給食をいただいた後の美澄さんの「課外授業」に、考えさせられることがたくさんありました。それは、地域の魅力は意外と周囲にたくさんあること。そして、それは誰からか「与えられるもの」ではなく、自らが「見つけ」「作り出すもの」ではないのかな、と。
帰路につくバスの車内で、宇部市の魅力を新たに発見した気分になりました。
執筆時期:2020年2月
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} ?>住所|山口県宇部市東吉部3977(旧吉部小学校)
TEL|(0836)68-0016
営業時間|毎週日、月曜日 11:00~14:00