定食を食べたみたいに満たされるサンドイッチがある 

そんな噂を聞いて、やってきたのは山口県光市。海の近くを走る国道沿いに、そのお店「三角屋(さんかくや)」はありました。扉を開けると、サンドイッチを作っている真っ最中。 

調理風景

「豚ロースカツ」「レンコンつくね」「ベジカツ」……。ショーケースには、具材の説明とともに6種類の商品が並んでいます。 

ショーケース

そのなかから、長州どりのフライと秋川牧園(レポート記事はこちら)の卵などを挟んだ「おや子サンド」(700円)と、サバでつくったシーチキン×祝島ひじきポテトサンド」600円)を注文。 

店員

完成した「おや子サンド」。すごいボリュームだ

これほどの厚みがあるのに、一口、一口、さくっと食べられます。いずれも薄味で、チキンは柔らかく、ひじきポテトも素材の美味しさがそのまま感じられました。いずれも一切れずついただきましたが、それだけで十分満腹に。サンドイッチというと軽食というイメージが強いけれど、これはちょっと違います。「定食のよう」という、納得です。 

盛り付けたサンドイッチ

特に印象に残ったのは、パン。挟まれた具の味を引き立てつつ、それ自体体に馴染むような深く、優しい味わいがあります。 

「パンから自分たちで作っています」。調理を続けながら、オーナーの米原幹太さんが教えてくれました。「可能なかぎり自分たちでやってみようと思って。結構大変だったけどね」 

こだわり

食パンだけでなく、ケチャップやマヨネーズもすべて手作り。化学調味料は不使用

妻の愛さんによると、マヨネーズは豆乳が原料。「マヨネーズを塗らないと、素材の水気がパンに染みこんでしまうから。でも市販のものは使いたくなかった。じゃあ、これも自分たちで作ってみようと」。そうした徹底した二人のこだわりが、どのサンドイッチにもぎっしりと詰まっています。 

青森から沖縄まで自転車で。全国を巡って光市へ

幹太さんは千葉県館山市の出身。山口との縁は、高校卒業後のワイルドな旅がきっかけになりました。 

が青森から沖縄まで走るって言い出して。僕は荷物を持って自転車で着いていくことになったんです」 

道中、知り合った人たちの家に泊めてもらうことも。山口でも数人の方のお世話になったそうです。「そのなかに、周南市に住む画家の男性がい。自然の風景を描く方で、上関町の海の美しさについての話がすごく印象でしたね 

お客さん

取材中も、サンドイッチを求めてお客さんが次々と来店

沖縄へは延べ約90日間で到着。旅の後は東京でバンド活動をしたり、旅で出会った全国の人たちを訪ねて回ったりしていました。 

ずっと気になっていた上関町も訪れ、海岸にテントを張ってキャンプ生活をしているときに東日本大震災が発生。原発事故の影響に衝撃を受けます。 

この国でいったい何がおきているか、自分の目で確かめたくなって原発や米軍基地で揺れている地域を原付で巡りました」 

20年空いていた店舗を、自分たちでリノベーション 

その後、友人がいた周南市でアルバイトをしながら生活。愛さんと出会い、2016いまの自宅兼店舗を見つけ、移り住みました 

20年空いたままだった物件を、大工の友人の助けも借りながらリノベーション。厨房やカウンターを設置し、20173月、「三角屋」をオープン。サンドイッチを選んだのは、「店も駐車場も狭いので、テクアウトできる食べ物にしようとの理由からです。 

外観

「手作り」へのこだわりは、オープン当初から変っていません。「旅先でお世話になった人たちは素材や調味料などに拘っている人が多かった。9歳のときに亡くなった僕の母親も食材には気を付けていたので、自分がをするなら納得のいくものをと決めていたんです 

価格でなく、素材の質で選ばれるように 

ただ、始めてみると困難の連続だったとか。特にパンは思ったような食感と味が出せず、試行錯誤を繰り返しました。ようやく北海道産の小麦「春よ恋」出会い、いまの「三角屋のパン」が誕生しました塩は長門市の日本海で採れる天然塩、砂糖は種子島産の洗双糖。卵、牛乳、イーストフードは不使用です。  

6種類のサンドイッチを、それぞれ600850円で販売。その価格だけを見て高い店を出る方もいるそうです「でも、原価計算上これ以上は下げられないので」と幹太さん。葛藤を抱えながらも続けてきた結果、2 年が過ぎたあたりから変化が生まれてきたといいます。 

「価格じゃなく、『ここのサンドイッチだから』と求めてくれるお客さんが増えてきました。最近はリピートされる方も多いですね。妥協しなくて良かったです」 

新しいコミュニケーションが生まれる場に

まるちゃん

次女のまるちゃんを見つめる幹太さんと、愛さん

オープン時にまだ生後半だった長女のあんちゃん3歳に。1月には次女のまるちゃんも生まれました。 

「ここにきて、ようやくサンドイッチ屋として自信を持てるようになりました。これからも変らず、いい素材にこだわり続けていきたいです」と愛さん。幹太さんは、3年の経験を糧に、これからこの場所でSNSでは生まれないコミュニケーションを育んでいきたいですね。人が繋がり、楽しいことが生まれていく。無農薬栽培の農家さんなど、いいものを作っている人がきちんと報われる社会実験の場にしていけたら」と話しています。 

 

執筆時期:2020年2月
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三角屋 

住所|山口県光市室積正木12-10 

営業|原則土・日・月曜、11:00~18:00(食パンがなくなり次第終了) 

TEL|0833-79-0254

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