ハウスの中に入ったとたんに、甘い香りに包まれました。整然と並んだ棚からは、真っ赤に熟したものなど無数のイチゴがぶら下がっています。
ここは山口県周南市の山間部、須金地区。標高約300メートルにある福田フルーツパーク。梨やブドウの観光農園ですが、2020年1月から、イチゴ狩りも始めました。取材に伺った日も、親子連れが楽しそうに摘み取っていました。
シーズンオフにも楽しんでもらえるように
「梨、ブドウのシーズン以外にも、ここで楽しめるものをと思って、実験的に始めてみたんです」と話すのは、園のオーナー福田陽一さん。扱っているイチゴは「よつぼし」と呼ばれる新しい品種。一粒いただいてみると、甘みがギュッと詰まっていました。
福田さんのところでは、梨(1.5ヘクタール)、ブドウ(2ヘクタール)、ブルーベリー(30アール)を育てています。
新品種「よつぼし」だからこそ栽培可能に
一方で、ブドウ農家がイチゴも栽培するのは、通常ではかなり無理のあることだとか。イチゴ栽培では株から伸びた茎を、初夏から夏にかけて根付かせて増やしていく必要があります。そのタイミングが、ブドウ栽培の一番忙しい時期と重なってしまうため、福田さんによると「これまで、イチゴというのは考えられない選択だった」そうです。

イチゴの様子を見て回る福田さん
でも、新品種の「よつぼし」は種から育てた苗を植えて実をならせる種子繁殖型。「これなら、僕たちのような果樹農家でもできるんじゃないか」。そう見込んだ福田さんは栽培方法を研究しつつ、ハウス2棟(計5アール)を新設。栽培を始めました。
「果実が土に触れない高設栽培だから病気にもなりにくく、作業もしやすい。これなら梨やブドウの農閑期にやっていけます。僕が先駆けとなって軌道に乗せて、ほかの観光農園にも広めていけたら」と福田さんは話しています。
フルーツランドは40代の若い園主が中心
福田さんの果樹園は、16園からなる「須金フルーツランド」の一画にあります。このフルーツランドの特徴は、若い園主が多いこと。16園のうち半数以上は、ここ10年ほどで世代交代したり、新規就農者が経営したりしています。そのため平均年齢は40代。全国的に見ても極めて若いため、各地からの視察も多いとのことです。
「でも、新規の人を集めようと何か特別なことをしているわけじゃないんです。新しく栽培を始めた人がブログなどで日々の生活を発信して、そこに魅力を感じた人たちが自然と集まってきている感じですね」。そう話す福田さんも、現在43歳。大学卒業後、アメリカでの2年間の農業研修を経て2002年に帰郷し、60年以上続く果樹園を2012年に父親から受け継ぎました。

須金の魅力について語る福田さん
「父の時代は、質のいい果物を求める方たちに満足してもらえたら十分でした。でもいまはレジャー的な要素も大切になってきています。果物とあわせて、若い家族連れのお客さんが思い切り遊べる場所にしていきたいですね」
「潜在能力を生かし、もっと交流人口を増やしたい」
そうした思いから、森のなかを巡りながら的を射るアーチェリー場をつくったり、ベッドなど豪華な設備とともにキャンプが楽しめるグランピング場を整備したりと、新しい取り組みを続けています。2020年1月にはこたつで暖まりながらテント内でバーベキュー料理が楽しめる「こたつバーベキュー」も。

テントのなかのこたつで焼き肉などが食べられる「こたつバーベキュー」
福田さんはいま、仲間たちと須金地区の新しい魅力を模索中。「ブドウ狩りなどフルーツだけでは、どうしても2~3時間で終わってしまう。リトリートの場所として、自然体験や農業体験、アクティビティーなどをあわせて2~3日滞在して、須金をまるごと楽しんでもらえるようにしていきたい。もっと交流人口を伸ばす潜在能力が、ここにはあるはずですから」
夏から秋の梨とブドウ。そして冬から初夏にかけてのイチゴに留まらず、須金地区はこれから一年中楽しめる場所になっていきそうです。
福田フルーツパーク
住所|山口県周南市須金2780番地
TEL|0834-86-2138
■イチゴ狩り
受付時間|10:00~15:00
入園料|1人220円(試食付き)。摘み取ったイチゴは100グラム270円で販売(時期により変動)。シーズンは5月上旬まで。
執筆時期:2020年2月
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