山口県岩国市の山間部。国道2号線から小道へ入り、点在する住宅の間を抜けて進んでいくと、田畑の中にぽつんと民家風のお店が立っています 

「中国菜 K’s Kitchen 

外観

店内は、どこか昔の木造校舎の教室を思い出させる、落ち着いた空間です。 

内観

蓮の葉のおこわ、ピータン、よだれどり……本格中華の数々 

「特徴的なお料理を」という筆者の漠然とした注文に対し、オーナーの羽田野圭介さんが用意してくれたのはおこわでした。ただ、このおこわ。なにやら葉っぱに包まれています。 

「岩国で栽培され蓮の葉っぱです。どうぞ開いて食べてみてください」 

葉っぱを開くと、ほっくほくのご飯が隠れていました 

おこわ

ご飯のなかには鶏肉、豚肉、エビ、タケノコなどが混ざっています。食べてみると、蓮の葉っぱのなんとも言えない爽やかな香りとともに、どこか懐かしい味が口の中に広がっていきました。 

続いてこちらは前菜の盛り合わせ。チャーシューと鶏のパリパリ皮付き豚バラ肉、鴨肉の燻製、ピータン、そして真ん中に置かれたお皿が「口水鶏(よだれどり)」。 

よだれどり

「想像しただけでよだれが出るほど美味しいということで、そんな名前が付いたそうです」との話を聞きながら、いただいてみました。 

あっさりとした鶏肉にピリッとしたタレが絡んでクセになりそうな味わい。香り付けのパクチーのおかげで、後味も爽やかです。 

そのほか、香港製の大きな釜でつくる北京ダックと同じ製法の鶏料理や、塩漬け発酵豆腐の野菜炒め、黒酢酢豚……など、あまり見慣れないメニューもたくさん並んでいます。 

丸焼き

香港製の釜でつくった鶏の丸焼き。紹興酒も多数揃っている

自家製のタレは100通り以上

広東料理を主体にした、本格中華料理ばかり。それもそのはず。実は羽田野さん、福岡や東京の中華料理店で20年以上腕を振るってきた、ベテラン料理人です。 

その日手に入った食材を最も引き立てるために、メニューは日々更新。あわせて自家製の調味料やタレも変えていきます。タレの種類について尋ねると、「100通り以上はあると思います」とさらっと答えてくれました。 

羽田野さん

築130年を越える納屋を改築 

お店は20192月にオープンしたばかり店舗は、妻の京子さんの実家納屋を改築しました。しかもその納屋、明治期に建てられた築130年以上の年代物。当初は至るところで床が抜け、とてもお店ができるような状態ではなかったそうです。 

その納屋を店舗にしようと提案したのは、羽田野さん本人でした。「せっかくなので、あるものを生かしてみようと思って」。けれど、周囲からなかなか賛同を得られませんでした。町の中心部でもなく、人通りの多い道沿いからも外れた立地。地元の人でさえあまり来ることのない場所で「商売が成り立つのだろうか」と。 

この土地の水に惚れ込んで 

しかし、羽田野さんにはここで満足のいく料理がつくれるという確信がありました。その理由は、水の良さ。「生まれ育った福岡と比べると、ここの水はとても質がいい。この水で調理するなら、必ず美味しい中華が提供できると感じました 

梁

天井の梁はそのまま残し、生かしている

納屋をわざわざ再生したのには、もうひとつ理由がありました。
現在、人口減と都市部への人口流出から、空き家がどんどん増えていっています。京子さんは「古い家でも、いくらでも再生できるという一例になれたらと思って。しかも、それが130年以上前に建てられた納屋だったら、なおさらインパクトが強いはずですから」と想いを明かします 

ひいひいおじいさんも、ここで菓子工房を 

納屋の整理中には、思わぬ発見もありました。
それは、「豊田卯佐吉 御菓子所」と刻まれた印判です。 

印判

ひいひいおじいさんが茶菓子を作っていたという話は、幼い頃に聞いたことがありました。これを見つけて、本当だったんだと分かりましたと京子さんは嬉しそうに話します。 

オープンして1年。味の良さが少しずつ評判となり、地元だけでなく山口市や広島市からのお客さんや、毎月一度来られる常連さんも。懸念していた立地も、それほどの問題ではなかったようです。 

ときには、料理やタレついて質問を受けることも。希望される方には、羽田野さんは惜しみなく作り方を伝えているそうです。「中華を美味しく作れる人が増えたら、それだけ中華料理の文化が盛り上がっていきます。奥深い中華の魅力を、この場所から広めていきたいですね」と話しています。 

ふたり

「まだまだ130分の1」

店内には、羽田野さんの親友から贈られた愛情の籠もったメッセージ飾られていました。 

たった一周年

明治期から時を刻み続ける建物で、これからお二人がどんな歴史をつくっていくのかとても楽しみです。 

 

執筆時期:2020年3月
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中国菜 K’s Kitchen

住所|山口県岩国市玖珂町663 

営業|12:00~14:30、18:00~21:00   ※いずれも要予約

定休|月曜

TEL|0827-82-3629

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