山口県の北部、島根県との県境にほど近い山口市の阿東徳佐地区。田園やりんご園が点在するのどかな景色が広がります。

田園

そんな空が広い、のんびりとした場所にあるのが「earth kitchen 地球食堂」です。決して便利な立地ではなく、有名観光地ではないこの場所に、お客さんが続々とやってくる理由とは?そのヒミツを探りに伺いました。

阿東徳佐のカフェ「地球食堂」

建物

ナビを頼りに、集落に入っていくと見つけました。古民家の納屋を改装したカフェ「地球食堂」です。

浅田さん

運営するのは浅田美帆さん。2013年に山口県岩国市から家族で移住しました。当初は近くの道の駅に間借りして調理し、イベント出店やケータリングを行なっていましたが、2018年、この場所にカフェをオープンしました。マクロビを学んだ経験をもつ美帆さんが得意としているのが、野菜料理です。使われているのは、友人や知人の農園でとれた米や野菜、秋川牧園の卵など、オーガニックの地元農作物が中心。春先には週一のペースで山菜を採りに山に入ります。

野菜たっぷりの「特製ベジランチ」

ランチ

この日のランチにはドラゴンフルーツを使った自家製ドレッシングのサラダ、茎わかめと生姜の酢の物、切り干し大根のナムル、山口県祝島産ひじき入りの卵焼きなど、彩り豊かな旬のおかずがたっぷり。黒米入りご飯には自家製梅干しと蕗味噌、お味噌汁には山から摘んだ花ウドが入っていて、素材の滋味と季節を舌で感じることができます。どれもシンプルな味付けながら、体に染み渡る美味しさで、肩の力が抜けていくよう。

料理のテーマは「脱力」?

浅田さん

「料理にこだわってはいるのですが、力は入れすぎない。1,000円のランチを寝ずに作っていたら、ヒリヒリした味になると思うんですよね。私は勝負する料理ではなく、気が抜ける料理を作りたくて。テーマは『脱力』です(笑)」

そう話す美帆さんですが、今にたどり着くまでには紆余曲折ありました。

「マクロビを学び始めたのは、現代の畜産動物を取り巻く環境について知ったことがきっかけです。それまでの食生活を見直そうと、教えに基づいて、日々厳密に料理を作っていました。あと一歩で師範の資格を取るところだったのですが、我が子に『母さんの作る料理はまずい』と言われて。自分自身も考えすぎて苦しくなっていた部分があり、ハッとしました」

そこから徐々に思考が変わり、今は違う視点でマクロビを捉えながら、料理を楽しんでいるのだそう。

テーブル

カウンター席とテーブル席の他、小さな子ども連れでも安心できる座敷があり、絵本も色々

ケーキ

ふわふわのシフォンケーキ。マンツーマンでシフォンケーキの作り方を教えてもらえるワークショップも不定期で開催している

理想の暮らしを求めて

ところで、美帆さんはなぜ縁もゆかりもないこの場所を選んだのでしょう?

「3.11以降、電気に頼らないオフグリッド※な暮らしに興味がありました。電気を使わないとなると、まず冷蔵庫のいらない寒冷地がいいのでは、と思って。薪風呂や囲炉裏があるお家があったり、畑ができたり、田舎に行けば可能性が広がるかも、という気持ちもあったんです」

ところが引っ越して一年で「オフグリッドは無理」と気づいたと言います。
「冬は寒すぎて、逆に冷蔵庫に食品を入れておかないと凍るんです。車は必須だし、子育てと半自給的な暮らしを両立するのも難しい面が多かった」

今では文明の良さを享受しながら、田舎暮らしを満喫している美帆さん。
「あるものをありがたく使おう、という考えに変わりました」

※オフグリッド……電力会社の送電網に繋がっていないこと。

カウンター

左は美帆さんの妹である、ハイカラ製作所の浅田久美さん。よく地球食堂に遊びにくるそう

(ハイカラ製作所の記事はこちら)

ゆるやかな雰囲気の中、偶然同席した美帆さんの妹、久美さんも交えてお話していると、時間を忘れ、あっという間に3時間が経っていました。

「この前もお客さんと話し込んでしまって。4時間くらい経っていたかも!帰る頃にはどこの誰か、大体どんな人かお互いに分かっている感じ(笑)わざわざここを求めて来てくれるお客さんが愛おしくて。会いに来てくれる人のエネルギーが自分の根底を満たしてくれていますね」

カップ

大らかな美帆さんと話していると、悩み事も小さく思えてくる

地球食堂のこれから

「今は足元を地固めしている段階ですが、将来は加工品作りやキッチンカーでの販売にも興味があります。地元の人や移住者の雇用を少しでも生み出せたらと思うけど、そこまでいくには時間がかかる。自分で全てはできないので、次の世代に繋いでいくのが私の役目かな」

しっかりとした軸を持ちながらも、無理せず楽に、しなやかに。
“楽にやることにこだわっている” 美帆さんと話しているうちに、いつのまにか私も肩の力がスーッと抜けていくのを感じました。

 

執筆時期:2020年3月
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earth kitchen 地球食堂

住所|山口県山口市阿東徳佐上2594

TEL|090-5701-1905

営業時間|11:00〜16:00

営業日|木、金、土曜日(冬季休業あり)

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