「こちらはインドネシア。どうぞ飲んでみてください」
差し出されたコーヒーをいただいてみると、ブラックなのにまろやかな甘さを感じました。 

コーヒー

「次は、ゲイシャという豆グアテマラ2019カップオブエクセレンス2位、最高品質のものです」
先ほどとはまったく違って、サラッとした舌触り。果実のような香りもします。 

山口県山口市のスペシャティコーヒー専門店「サイコーヒーロースタリー」。オーナーの齊藤光信さんは、コーヒーについてのどんな質問にも、分かりやすく答えてくれます。 

接客

いい豆は「冷めてもおいしい」 

優れたコーヒーついて、齊藤さんは「冷めても美味しいというのが、ひとつの指標」と言います。 

「熱いと、人間の味覚はまずその熱さを強く感じます。でも冷めていくと、コーヒーそのものが持っている味や香りをより強く捉えられるようになるんです。本質の部分で優れたコーヒーは、朝淹れたものを夕方に飲んだとしても、味も香りも十分楽しめますから 

かつては「苦くて嫌いだった」 

コーヒーの奥深さについて情熱的に語る齊藤さんは下松市で50年以上続く自家焙煎コーヒー店「オリエンタル」の長男。小さな頃からコーヒー親しんできたのかと思えば「苦いという印象があって、美味しいと思ったことがなかった」と言います。大学卒業後は福祉関連企業に就職し、営業マンとして働いていました。 

ある日、仕事関連の知人から手帳を見せてもらったことが、生き方を変えるきっかけとなりました。「その人の手帳に、人生の目標が書いてあったんですね。それを読んで、自分はなにを目標に生きていくんだろう考えるようになって」 

ドリップ
「人の笑顔をつくりたい」との想いから、コーヒーの道へ 

そこで出てきたのは「人の笑顔をつくりたい」という想いでした。「それから改めて両親の店を見たときに、お客さんたちが笑顔になっていることに気づいたんですね。週末ごとにお店を手伝い始めコーヒーの世界へ。2015年には10年勤めた会社を辞めて、お店の経営を引き継ぎました。 

さらに、福岡の有名コーヒー店で飲んだ一杯がいまの道を方向付けます。「浅煎りのゲイシャ種をいただいたんですが、フルーツみたいですごく美味しくて。本当に鳥肌が立ちましたそれがスペシャティコーヒーと出会いでした。 

豆

現在扱っている豆は11種類。すべてスペシャルティ以上の評価を受けたものばかり

ずっとお店で愛されてきた昔ながらの深煎りコーヒーと、いったいなにが違うのか……。豆の種類だけでなく、農園ごとの特徴や焙煎の仕方、味や香り幅広さなど、スペシャティコーヒーの豊かな世界にのめり込みます。次第に、「オリエンタルとは別に、スペシャティの専門店を開きたい」との思いが強くなり20194月、「サイコーヒーロースタリー」をオープンさせました。 

外観

理想の味を作り出すために、焙煎機にもこだわっています。使っているのは、日本ではまだ珍しいというアメリカ製の「ディードリッヒ」というマシン。「豆のもつ個性をギュッと閉じ込めたままローストするには、このマシンの強い火力が必要なんです 

火力さがれほどの違いを生むのか、齊藤さんは「玉ねぎ」を説明してくれました。「中華料理屋の強い火力でササッと火に掛けられた玉ねぎは、シャキシャキで歯ごたえがあって美味しいじゃないですか。でも家のガスコンロとしなしなになって味も飛んでしまう豆の焙煎でも同じことが言えるんです 

焙煎機

豆の美味しさを引き出すディードリッヒの焙煎機

大切なのは「うま味」を整えること 

焙煎するときに、齊藤さんが気を付けているのが「甘みとうま味を引き出すこと」。
特にうま味については細かく気を配っているそうです。「うま味は、日本人特有の味覚。例えばワインのような香りのするコーヒーは実を発酵させているものが多いのですが、海外の人はその風味を出しすぎてしまう傾向があるんです。そこを引き算しながら調整することで、絶妙なバランスのうま味を生み出していきたいんです」 

そんな想いを込めて、店名の「サイ」は、「整える」「揃える」「きれいにする」などの意味を持つ、名字の「齊」の字から採っています。 

ロゴ

ロゴマークは、「匠」と「齊」という字を組み合わせている

農園主とともに、「最高の一杯」を届けたい

都市部ではスペシャティコーヒー浅煎りの豆浸透ていますが、地方ではまだまだ。齊藤さんもオープン当初は「深煎りはないの?」と言われることが多かったそうですでも1年が経って、「浅煎りを求める方が確実に増えてきました。山口市内だけでなく、宇部市や防府市からもいらっしゃいます」と笑顔を見せます。 

4月に1周年を迎えたばかりですが、齊藤さんはすでに大きなビジョンを描いています。それは、海外の農園と一緒に、理想の豆を作っていくこと。 

「収穫された豆を処理する過程で、味も大きく変わっていきます。最も美味しく飲めるように、農園主の方と一から考えていきたいんです」。そのために、今年から来年にかけてアジアや中南米、アフリカなどを巡る計画でしたが、新型コロナウイルスの影響から中断せざるを得ない状況に。 

いまの事態収束したら、必ず再開します。最高の豆で淹れたコーヒーでお客さんに笑顔になってもらいたいですから 

人

「農園主と一緒につくり上げた、最高の一杯を届けたい」と語る齊藤さん

帰り際にまだカップに残っていたゲイシャのコーヒーを飲んでみました。冷めかけていても確かにフルーツのような爽やかな風味がよりはっきりと口のなかに広がっていきました。 

 

執筆時期:2020年4月
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サイコーヒーロースタリー

住所|山口県山口市矢原1154-7

営業|10:00~19:00

定休|木曜日 

TEL|083-929-3722

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