JR上山口駅で電車を降り、神社や学校を横目に、どこか懐かしさのある住宅街を歩きます。お店の住所を訪ねると看板は無く、緑いっぱいのウインドウに「Plain」という店名が書かれていました。

「Plain(形) 明白な、装飾のない、無地の/無骨な、気取らない、地味な、質素な」

オムレツやヨーグルトの「プレーン」とは少しイメージの違う、きっぱりとした言葉たち。

ここは山口市にある園芸店plain(プレイン)。園芸店と言っても野菜や花苗は無く、迷彩柄の葉っぱを持つ植物や小指のつめ程のラン、ヤシの実に生えたシダ植物の仲間や「火星人」という和名の塊根植物など、実に様々な観葉植物が並んでいます。

植物を愛でるのは人間の本能

オーナーは同市で建築業を営む岩光大祐さん。生まれも育ちも「このあたり」という生粋の山口県人です。店舗や住宅を作る木造大工のお仕事をしつつ、2013年から奥様の愛子さんと一緒にplainを営業しています。

子どもの頃から植物が好きだった岩光さん。野山をかけ回って遊ぶ中で父親から名前や特徴を教わり、自然と知識が身に付いていきました。また、山がちな場所に住んでいた当時から、ご自宅にも植物を置いて育てていたそうです。

「アマゾンの奥地に住む民族も、上流から流れてきたビンや缶に、お気に入りの植物を植えてそばに置くんです。好きな植物を身近に置いて世話をするというのは、人間の本能的な嗜好なのかもしれません」(岩光さん)

水をやる時間がないはずがない

そんな岩光さんのplainは、植物を「育てること」に特化した園芸店。植物の世話をすることで「本当の意味で豊かな暮らし」に近付けると言います。

「『水をやる時間がなくて枯れてしまった』とよく耳にするのですが、どんなに忙しくても、植物に水をやる時間がない生活なんてあるはずがないんです。夜露代わりにおはようとおやすみのシュ(霧吹き)をする時間だけでもいい。人以外のものに関心や思いやりを持つ心の余裕が、本当の豊かさではないでしょうか」

奇跡のモンステラ

岩光さんの元には、購入者以外の方からも相談が寄せられます。ある日の相談者は、近所に住む80代の女性。結婚祝いでもらった「モンステラ」という大型植物を、50年間育ててきました。10年前に旦那さんが亡くなってから植え替えが難しくなり、弱っていく様子を見て心を痛めているという内容でした。

【モンステラ。健やかに育てるためには2〜3年に一度の定期的な植え替えが必要】

現地を見に行くと、弱っていながらも大事に手入れされ、部屋からあふれるほど大きくなったモンステラが。1週間後に大工さんを集めて植え替えることになり、その場を後にした3日後のことです。

依頼者から岩光さんに、驚きの電話がかかってきました。

「岩光さん、新芽が出てきました!」

植え替えてもらえると決まった途端、10年越しに息を吹き返したモンステラ。「植物は人の思いに応えてくれる。そう感じた経験が過去に何度もあります」(岩光さん)

アイデンティティのある地域で、場所に関係なく好きなことを

plainには中四国から九州、東京や遠く宮古島からもお客さんが訪れます。また、夏季と冬季の年2回「TACOMA FUJI RECORDS」というアパレルブランドのポップアップショップが開かれていますが、これは地方では異例のことです。

「現代では、どこに拠点があっても関係ありません。僕が出向いたり、あるいはこちらに来ていただいたりすることで、価値観を共にしている人は自然につながっていきます」(岩光さん)

先祖代々受け継いだ土地で「好き」を仕事にし、自分の価値観を様々な形で表現しながら、本当の豊かさを提案し続けている岩光さん。アイデンティティのある地域に根を下ろし、力強く自然体で生きる姿が、植物そのものと重なって見えました。

取材時期:2019年7月
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Plain

住所 山口県山口市後河原37-1 ウッズプラザ1F
TEL 083-929-3395
営業時間 11:00〜18:00
定休日 営業日:第1・3土日  ※遠方からお越しの方などは、事前にご相談いただければ、営業日以 外でも可能な範囲で対応してくださるとのことです
URL https://www.facebook.com/Plain-526808657437699/