「世界各国のバックパッカーたちが訪れる、古民家をリノベーションした宿がある」 

そんな話を聞いて訪れたのは山口県山口市。一級河川・佐波川(さばがわ)の周囲に広がる田畑を抜けると小高い山の木々に抱かれるようにその宿「超民家(こみんか)やまね」はありました 

「こんにちは」と声を掛けながら玄関を開けると、そこには昔ながらの「和」の空間が広がっていました。 

2泊以上にして、客層がガラリと変化 

ここで民泊を営んでいるのは山根賢三郎さん、早紀さん夫妻。 

受付は2泊以上から。当初は1泊から受け付けていましたが、錦帯橋(岩国市)など近隣の観光名所を巡る際の「寝るためだけ」の宿として利用する人が大半だったそうです賢三郎さんは「十分に交流できないし、地域の良さも味わってもらえなかった」と振り返ります。「でも、現在の2泊以上に変えてから、客層がガラッと変わったですよ」と早紀さんは話します 

山根賢三郎さん(左)と早紀さん

「ジブリの世界」が目の前に 

それまでの観光旅行客から、その土地、土地での楽しみ方を自ら見出すバックパッカーたちが中心に川沿いの小道や周囲の山道を歩いたり、地元の小道をサイクリングしたりするだけで「すごく綺麗だった」とんでくれるそうです。なかには、本当に腰の曲がったおばちゃんが、畑仕事していた!」と興奮気味に話す人も。 

もののけ姫『となりのトトロといった、アニメでしか見たことのなかった世界に飛び込んだような気分になるみたいですね早紀さん民泊施設などを紹介するインターネットサイトairbnb(エアービーアンドビー)を通じ5年間で世界各地からやってきた宿泊客は延べ200人以上。中には1週間連泊したり、日本滞在の全日程をここで過ごしたりするリピーターも。 

「特別なおもてなしなどなくても、ありのままの日本の原風景がそのまま観光資源になっていです」(賢三郎さん) 

パックパッカーとして世界を巡る 

そんな2も、以前はバックパッカーとして世界を巡っていました。 

賢三郎さんは山口市出身。高校卒業後、関東の大学に進学。千葉県出身の早紀さんは同じ大学の友だちでした。大学を出たあと、数年の会社勤めを経て賢三郎さんはワーキングホリデーでオーストラリアへ。そこで早紀さんと再会し、資金を貯めて2人で11カ月かけてヨーロッパや東南アジアなどを回りました。民泊のアイデアも、その旅のなかで膨らませていったそうです。 

2015年に帰国後、賢三郎さんの地元で物件を探し、築60年ほどのいまの家を見つけました。 

家

不便だからこそのメリット 

「古い家なので、ある程度の不便さは覚悟していましたが、反対にメリットのほうが大きいですね」と賢三郎さんは話します。 

例えば、お風呂。いまはほとんど見かけることのない薪(まき)風呂です。 

「そう言うと必ず『大変でしょう』と言われるけど、追い炊きすればずっと温かいので、冬でも窓を開けて露天風呂状態で入れます。お湯がどんどん冷めていくガス風呂より、身体もずっと温まるですよ」 

昔ながらの薪風呂。冬場はガス風呂よりずっと温かい

あえて不便を選ぶことで、生まれてくる知恵も。 

冬は薪ストーブにまき付けた銅管に井戸水を通してお湯をつくっています。電力は可能なかぎり太陽光発電を利用。家の裏側には温室のようなテラスも。要らなくなったサッシをもらってきて天版にし、観葉植物を置いています。 

廃材だったサッシを再利用したテラス

庭では、トマト、ナス、ピーマン、玉ねぎ……など、季節の野菜を無農薬栽培サラダや天ぷらにして出しています。 

畑

手植えだからこそ育まれる人との繋がり 

野菜だけでなく、計1反の水田でお米も無農薬栽培。こちらもえて不便を選び、植えています。賢三郎さんにとって、手植え「貴重なコミュニケーションの時間のこと。 

「苗を植える『チャポン』という音だけが響くです。そんな中で手伝いに来ていただいた人と話していると、自然と深い話題になっていって、互いをよく理解しあえるようになる。機械を使えば1人で簡単に済むでしょうけど、それただの作業だなと感じますね  

実った稲穂はを使って刈り取り、はぜかけをして天日干しタイミングが合えば、宿泊客に手伝ってもらうことも。「到着したばかりなのに、大喜びで稲刈りをしてくれるです」(早紀さん) 

人

稲刈りを楽しむチェコから訪れたカップル(山根さん提供)

最後に「超」民家としている理由について尋ねると、賢三郎さんはこんな話をしてくれました。 

 「古民家をリノベーションしてっていうと、大金をかけおしゃれな内装イメージする人が多くて。でも、うちは本当にできる範囲で手を加え、改良しているだけですから。それができるのが、木と土できた昔ながらの日本の民家の魅力ですよね」 

無理のない暮らし。不便だからこそ生まれる工夫と、人との繋がり。そして、ありのままの田舎の風景。「超民家やまね」とその周りには、古くて、新しい豊かさが溢れている。外国からの旅人に愛されるのも、分かる気がしました。 

 

執筆時期:2020年6月
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超民家やまね 

住所|山口県山口市徳地岸見 

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