ドライいちじく、フレッシュオリーブの塩漬け、南高梅の梅干し……。 

goods

様々な果実を使ったこれらの加工品は、山口県周防大島の「西村果樹園」で作られたものです。農家さん自らが栽培から加工まで一貫して行なっているとのこと。一体どんな方が作っていらっしゃるのでしょう。  

周防大島の西村果樹園へ 

field

訪れたのは、周防大島の久賀(くか)地区。スーパーや飲食店が並ぶ島内でも賑やかな場所ですが、山手には長閑な風景が広がります。西村果樹園では、周防大島名産のみかんをはじめ、キウイや梅、いちじく、柿、オリーブ、木苺などを栽培しています。 

木

ちょうどこの時期はキウイの授粉作業があるとのことで、代表の西村てつあきさんに作業を見学させてもらいました。キウイの木は雌木と雄木に分かれており、雌花と雄花がそれぞれ別の木に咲くのだそう。 

花

こちらが雌花。果実はよく目にしますが、こんな可愛らしい花を咲かせるとは初めて知りました。一番スタンダードなキウイであるヘイワードという品種です。 

flowers

雌花が花開く朝の時間帯に、事前に集めた雄花の花粉を一つずつ付けていきます。花粉には色がつけてあり、授粉させたものが一目で見分けられるようになっています。 

「昨日は1,900個ほど授粉しました。10日くらいで花は終わってしまうので、今が勝負です」と西村さん。 

何度も園地の中を往復しながら、未授粉の雌花をチェックしていきます。一見シンプルな作業ですが、少し腰をかがめながらの行き来はなかなかハード。 

ひと

「棚が低いのは父がキウイを始めた時に、母の身長に合うように作ったからなんですよ」 

西村さんは、西村果樹園の2代目です。ずっと農業一筋かと思いきや、面白い経歴の持ち主でした。  

東京での生活を経て 

学校を卒業後、広島で就職した西村さんは、サラリーマンとして働く傍ら、大好きな漫画を描いていました。 

「習ったことはなかったのですが、昔から独学で描いていました。ある日『少年サンデー』の裏に漫画家のアシスタント募集を見つけて、応募したんです」 

1次、2次試験と通り、3次試験で面接と研修。そこで初めて漫画家の先生から線の引き方を学び、「3日間の研修で、自分の絵が変わっていくのがわかった」と言います。 

その後、東京で10年ほど漫画を描き続け、お父様の体調不良をきっかけに20年前、周防大島に帰郷しました。 

漫画と農業の共通点  

ところで、漫画の経験が農業に生かされていることはあるのでしょうか。 

「農作業をしているとき、ふと気づいたら息を止めていることがあるんです。昔、『線がブレるのは息をしているからだ。息を止めて描け』とよく先生に言われていました。その時の癖が出るんでしょうね。ひたすらコツコツ絵を描き続ける漫画と、こうやって地道な作業に取り組む農業は、どちらも持久力が大切だと思いますね」 

農業を続ける理由 

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一箇所から同時に3つの蕾をつけるキウイは、一番大きな真ん中の蕾を残し、他を間引く「摘蕾(てきらい)」という作業を行う

いくら農家に生まれたとはいえ、漫画家から農家への転身は、戸惑うことも多かったはず。やめたいと思うことはなかったのかとの質問に、「今でもやめたいですよ」と笑う西村さん。
それでも続けられるのは、父の代から西村果樹園の果物を毎年楽しみにしてくださるお客さんの存在と、農業の奥深さがあるからと言います。 

「父が健在の頃は、とにかく言われるがまま手伝っていただけでしたが、一人になって初めて、自分自身で考えて理解し、行動できるようになりました」 

農業を続ける中で、お父様がそれまでに行なっていたみかんの剪定方法を180度変え、作業を効率化しました。加工場を作って6次産業に取り組み始めたのも、西村さんが試行錯誤したからこそ、たどり着いた結果です。 

葉

ヘイワードより10日ほど早く授粉を終えたイエロークイーンには、もう小さなキウイが見えた

「果樹は特に剪定が大事なんです。去年の春に伸びた枝から、今年芽が出て、秋に収穫できる。実になるまで一年かかるので、今の剪定が来年の収穫に直結するんですよ」 

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完熟したものを梅干しに加工する南高梅

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一粒ずつ丁寧に収穫し漬けられた「まろみ南高梅」は、口に含むとほどよい酸味が広がる

最後に今後の目標について伺いました。 

「これまでの農業をもう少し楽にできたら、というのは常に思っています。今のやり方をどんどんブラッシュアップしていくのが目標ですね。去年始めた加工品づくりもその一環。今後はイチジクやみかん、柿だけでなく、キウイのドライも作れたら。時間を見つけて絵も再開したいんです」 

そう言って、こっそり見せてくれたスケッチブックには、異国情緒溢れる街や人が描かれていました。農家としての道を歩んだ西村さんの、新たなストーリーが見られる日はそう遠くないかもしれません。 

 

 

執筆時期:2020年6月
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西村果樹園 

住所|山口県大島郡周防大島町久賀 

TEL|090-4802-1977 

 

※西村果樹園のキウイや加工品は道の駅サザンセトとうわで購入できます。 

住所|山口県大島郡周防大島町西方1958-77 

営業時間|10:00〜18:00 

定休日|水曜日(祝日の場合は翌日)