夏の訪れとともにシーズンが本格化する鮎漁。山口県内の各河川でも、6月に入って順次、漁が解禁されています。

川沿いで100年近く続く名店

天然鮎の料理を求めて訪れたのは、防府市を流れる一級河川・佐波川(さばがわ)沿いにある日本料理店「月鳴亭 多かはし」。昭和2年(1927年)から続く老舗です。

外観

川沿いにたつ「多かはし」。青い幟が目印

客室からは、とうとうと流れる川面を眺められます。鮮やかな青と緑。パステル画のように透明な外の景色に、思わず目を奪われてしまいます。

内観

 

待つこと数分。シンプルに盛られた鮎の塩焼きが運ばれてきました。

鮎

食べる前に、大将の伊藤大起さんが骨をきれいに抜き取る方法を伝授してくれました。


①まず、鮎の胴体を中骨に沿って箸で軽く押していきます。
②裏返して、同じように押します。
③今度は鮎を立てて、背中も同じようにします。
④しっぽを取り除きます。
⑤最後に、箸で胴体を押え、頭を指でつまんでゆっくり抜いていくと、中骨も一緒に抜けていきます。

あゆの食べ方

箸で中骨を押していく

お手本どおりにやってみましたが、筆者は頭に骨が付いていかず、骨だけ改めて抜くことに(笑)。
「特にいまの時期の若鮎は、骨が柔らかいから難しいんですよ」。伊藤さんのフォローに救われながら、実食。

あゆと蓼酢

酢と、近くに自生している蓼(たで)とをあわせた「蓼酢」にちょっと付けて、皮ごといただきます。
かすかに甘みを感じる鮎に、さわやかな酢の風味がぴったりです。

絵のような一品「盆画」

伊藤さんによると、お店には景色だけでなく料理そのものを鑑賞できる品もあるとか。それが「鮎の盆画」です。

鮎の盆画

鮎の盆画(同店提供)

まるで、渓流のなかを泳いでいるような鮎。水の流れを塩で描き、笹舟の上には葉わさびなどが添えられています。風流で清涼感のある盛り付けは、特に女性のお客さんに人気とのこと。(3名以上から。要予約)

伝統のすっぽん料理を、ランチで手軽に

「多かはし」は、すっぽん料理のお店としても知られています。コース料理を求めて県外からのお客さんも珍しくありません。「ここ10年ほど、東京から毎年2、3回通われるご夫婦は、『最後の晩餐としても食べたい』と仰られています」(伊藤さん)。

そのすっぽんを手軽に味わってもらおうと、ことし(2020年)3月から新しく始めたのが、「すっぽん雑炊」(1500円、税別)。佐波川やその近くの小川などで獲れたすっぽんを1時間半から2時間半ほどゆで、煮出したエキスでつくった贅沢の極みのような一品です。

伊藤さん

雑炊の準備をする伊藤さん

すっぽんというと「こってり」「濃厚」というイメージがありましたが、この雑炊はとてもあっさりとした味わい。添えられた漬け物をつまみながら、いくらでも食べられそうでした。

ぞうすい

伊藤さんによると、ランチの弁当を始めようと1月から試作を繰り返したものの「でも、街中で売られているおしゃれな弁当には敵わない。じゃあ、どうしようかと……」。そして行き着いた答えは、原点に戻ることでした。

「うちはすっぽんのお店。すっぽん雑炊なら、どこにも負けない自信がある」

メニュー化した直後に新型コロナウイルスの影響を受けて来店客数は8割以上減少。でも6月に入って、雑炊目当てのお客さんが増えてきているそうです。

 

「景色とあわせて、佐波川の豊かさを味わって」

伊藤さんは約40年前から料理人としてこのお店で働きはじめ、ことし1月に先代から引き継いで3代目に。「鮎は、いま時分の若鮎、お盆のころの脂の乗り切った鮎、そして10月の落ち鮎と、それぞれ違った味を楽しめます。すっぽんは季節を問わず提供できます。周囲に何もない田舎ですが、美しい佐波川の景色とともに、天然の恵みをゆっくり堪能していただけたら嬉しいですね」と話しています。

佐波川風景

 

 

執筆時期:2020年7月
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月鳴亭 多かはし

住所|山口県防府市奈美150-1

営業|11:30~14:00、17:00~22:00

定休|水曜日

電話|0835-36-0005