山口県山陽小野田市の山野井地区。深呼吸したくなるような緑に囲まれた自然豊かな山あいに、陶工房「夢紅(ゆめくれない)」があります。週末にはカフェもオープンするとのこと。陶芸にカフェ?一体どんな方が営んでいらっしゃるのでしょう。 

山陽小野田市の山あいに佇む夢紅

outside

手作りの看板を頼りに、山道を上がった先に大きな建物が見えてきました。軒先には本焼きを待つ様々な器が並んでいます。 

cafe

左手の入り口を進むと、居心地の良い空間が広がっています。デッキやテーブルの茶色に、それを取り囲む濃い緑が、どこか南国のような雰囲気を漂わせています。早速、夢紅の人気メニュー、サンドイッチを注文。 

こだわりの夢紅サンドイッチ 

view

そよそよと涼しい風が吹き抜ける、大きな柿の木のそばで。 

sandwiches

ローストビーフサンドイッチ(手前)と、ハム・サラミ・チーズサンドイッチ(奥)。しっかりとしたバゲットに噛めば噛むほど味わい深いローストビーフ、シャキシャキの野菜、エメンタールチーズのまろやかさが口の中で合わさり、とっても美味しい!それに、普段食べるようなサンドイッチにはない、風味豊かなソースが絡んでいます。 

「注文を受けてから野菜を切って具材を挟んでいるから、フレッシュでしょう。ドレッシングも特製、オレガノを効かせたイタリアンサンドイッチです」 

そう話すのは、夢紅のオーナー、中嶋夢元(むげん)さん。  

40歳で始めた陶芸

人

陶芸家でもある夢元さんは、滋賀県出身。大学卒業後、デンマークへチーズやバター、ソーセージなど酪農の勉強をするため5年間留学、その後は10年ほどアメリカで生活し、サンドイッチ店を営んでいました。帰国後、神奈川県の茅ヶ崎でサンドイッチ店をオープン。そこで奥様の紅(くれない)さんと出会います。 

人

笑顔がチャーミングな紅さん

「これから陶芸をやる、と決めた頃に、ある陶芸家の方の家に二人でお邪魔して。お父さんが席を外れた隙に、そこの奥様に『陶芸家の妻は大変よ』って言われたこともある」と紅さんは笑います。40歳の時に独学で陶芸を始めた夢元さんですが、幼い頃から陶芸作品には触れていたのだそう。 

「伯父が京都民藝協会の会長だったので、周りに沢山の作品があったです。中でも河井寛次郎さんの作品が好きで、辰砂(しんしゃ)と呉須(ごす)の色合いに魅せられていました」

cups

夢元さんの作った辰砂(左)と呉須(右)の器。河井寛次郎の鉄を追いかけているが、まだそこまでは届かないという ※鉄:釉薬の一種

cups

ギャラリーを兼ねたカフェには、あちこちに夢元さんの作品が展示されている

DIYで自宅を建築

1988年に山口県旧山陽町(現在の山陽小野田市)へ移住し、築窯。町中に暮らし、陶芸とアルバイトに明け暮れる日々を過ごします。週末にはこの山里に通って、山から切り出した木を使い、自ら工房の建築。  

「出来上がった時、プロの大工さんに『これじゃ横に揺れて危ない』と言われ、急遽梁を一本入れることにしたですよ」と夢元さん。 

inside

自分で家を建てるなんて、普通は思いつかないですが、夢元さんはこれまでに5軒もの家を建てたそう! 

「お父さんが建てた家が一番ホッとして住みやすい。カウンターでも動きやすいように、棚の高さでも私の手が届くように考えて作ってくれるから」と紅さん。 

山口から奄美大島へ 

徐々に大きな仕事が入るようになり、手が足りず、遠方に住んでいた息子さんも呼び寄せて粘土こねをしてもらうなど、陶芸家として10年間山口の工房で活動した夢元さん。ある時、友人の紹介がきっかけで奄美大島へ移り住むことになります。  

「向こうですぐ家を見つけました。一度、鹿児島の本土に住む大家さんに断られたのですが、諦めがつかず、その日のうちに奄美からその方の自宅へ行き、話をしたです。器が好きな方で、すっかり仲良くなってしまって(笑)」と夢元さん。
一晩泊まり、翌朝島に戻る前に地元の百貨店へ寄り、すぐに陶芸の展示会を開催することが決まったのだそう。夏に山口から引っ越し、工房を作り、作品を焼き、秋には予定通り展示会を開催。豪快でフットワークの軽い夢元さんのエピソードは、驚きの連続です。 

drinks

左から、アイスカフェラテ、グレープフルーツジュース、バナナジュース。どれもフレッシュで爽やか

奄美でも工房の2階にカフェを併設していたそう。パッションフルーツなど地元の新鮮な果物を使ったドリンクや、紅さんの作るパスタが人気だったと言います。 

pudding

夢元さんの器で供されたのは美しいプリン。「これはグランマ・ケーキ。奄美では私の母が作っていたの。今は私が作っているだけど、私ももうおばあちゃんだから、そのままグランマ・ケーキよね」と紅さん。滑らかでしっかりとした濃厚な味わいが口の中で溶けていきます。 

終わらない旅  

人々

これまで国内はおろか、海外もあちこちを飛び回ってきた夢元さん。3年前に20年間暮らした奄美大島を離れ、山口の工房に戻ってきました。これからもこの場所で作陶されるのかと思いきや、 

「カナダのソルトスプリングアイランドはよかったねぇ。初めて訪れた時、本当に『終の住処だ!』と感じた。あそこに住みたいなぁ」と紅さんと微笑みます。 

幾つになっても探究心を持ち、輝き続ける夢元さんと紅さんのエネルギッシュな姿に、なんだか心が弾んで嬉しくなりました。 

 

執筆時期:2020年7月
※本記事の情報は執筆時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
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夢紅 

住所|山口県山陽小野田市山野井918 

TEL|080-2713-1364 

営業時間|お昼〜夕方頃まで 

定休日|火、水、木曜日 

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