山口県山口市にある湯田温泉。旅館やホテルが建ち並ぶメインの通りから少し入った静かな道沿いに、フランスの国旗がはためくかわいいお店があります。
木の扉を開けると、落ち着いたシックな空間が広がっていました。
その店内には、フランス語の陽気な歌声が響いています。
「ああ、お待ちしていました。ベストタイミングですよ~」と笑いながら迎えてくれたのは、歌声の主、オーナーシェフのルロワ・エルマンさん。「うちでは、フランスにある普通のお店のメニューを、そのまま出しているんです」。そういってエルマンさんが見せてくれたのは、鳥を丸ごと焼いた一品でした。
「普通のフランス料理」を味わってほしい
「これはテークアウトのお客さんのために用意したもの。ほかにもエスカルゴ、ウサギ、カエルのモモ肉……。どれもフランスで一般的に食べられているものばかり。そんなクラシック(伝統的)なフランス料理を、アレンジなしでそのまま提供しています」
高級で、小さなお皿に少しずつ、きれいに盛られているというイメージの強いフランス料理。「それがすべてと思っている人が多いけれど、ほんとは全然違うよ」と話すエルマンさんに、フランスでの飲食店のカテゴリーを教えてもらいました。
・ガストロノミー(星付きなど、最高級クラスのフランス料理店)
・レストラン(ガストロノミーよりもカジュアルな高級店)
・ビストロ(食事もお酒もしっかり楽しめる一般向けのお店)
・ブラッスリー(お酒メイン)
・カフェ(フードコートのような場所)
「うちはビストロ。調理は早いし、お皿にたくさん盛ってドンって出します。味も盛り付けも日本人向けのアレンジはなし。現地のスタイルそのままです」

手早く調理するエルマンさん
フランス中を巡って鍛えた料理の腕
明るくそう語るエルマンさんは、フランス北部・シャンパーニュ地方の出身。
料理学校を卒業後、西のブルターニュ地方、東のアルザス地方など、7年かけてフランス各地で修業しました。「数え切れないほどの料理店で働きながら、チーズ、魚、フォアグラなど、その土地ならではの料理を学びましたね」
修業後は南仏プロバンスでお店を開きます。フランスの食べ物が好きで滞在していた妻の智子さんは、そのお店の常連客でした。「食」という共通のテーマを軸に2人は意気投合。その後日本に移り、2012年には名古屋でフランス料理店を開業しました。人気店として5年間営業し、2017年からは智子さんの生まれ故郷である山口県でいまのお店を始めました。

智子さんが作るスイーツも好評
スイーツは智子さんの担当。ヌガーグラッセ(南フランスの伝統菓子)やレモンムースなど、本場の味を再現しています。お客さんのなかには「今日、あのデザートある?」と電話で確認して来店する方もいるとか。既製品を使わず、時間をかけて手作りした丁寧な味が好評です。
「本場の食べ方も伝えたい」
味だけでなく、食べ方も広めていきたいとエルマンさんは願っています。「美味しいものには、それぞれ美味しい食べ方ってものがあるんですね。例えば、フォアグラのテリーヌ。出すとすぐ、そのまま食べてしまう方が少なくないけど、あれはパンと一緒に食べることで美味しく感じられるものなんです。カルボナーラだって、パスタとソース別々だったら嫌になるでしょ。それと同じです」
名古屋から通う常連客も
ただ、食べ方の前に、山口ではまだ「普通のフランス料理」を食べ慣れていないお客さんが多いとか。なかには「思っていたのと違う」という表情をされる方もいるそうです。「でも、フランスに住んだ経験があったり、旅行でいろんな店を回ったりした方などは『懐かしい』と言って喜んでくれます」と智子さん。一度ファンになると何度も通ってくれるお客さんも多く、名古屋から食べに来るかつての常連さんもいるそうです。
取材中、フランス語混じりの日本語で冗談を言ったり、歌ったりとずっと賑やかなエルマンさん。そのエルマンさんに笑顔で的確な突っ込みを入れる智子さん。お二人が生み出す温かく、気取りのない雰囲気も、お客さんがリピートしたくなる理由のひとつなのだろうと感じました。
執筆時期:2020年7月
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} ?>住所|山口県山口市湯田温泉6-3-22
営業|11:30~14:00、17:30~21:30
定休|月曜日
TEL|083-902-0900