標高約400メートル。島根県との県境に近い山口県岩国市の錦町宇佐郷(うさごう)地区。スキー場として知られる羅漢山を目の前に臨む山の中腹に、約半世紀続く榎本牧場があります。 

牧場

新たに「チーズづくり」に挑戦 

榎本牧場では、2020年春から新たな取り組みを始めました。それはチーズづくり。物置として使っていた自宅の一部を工房改築し、家族でモッツァレラチーズなどを製造して商品化しています。 

「わしは乳牛の世話専門じゃけえ。チーズは母さんが中心。もうすぐ始まるけえ、これを着けて見学したらええよ」牧場主の榎本要さんにそう促され、帽子とマスクを着けて工房に入ってみました。 

工房内では、妻の富貴子さんと、長男の耕大さん、次男の拓也さんが作業用の白衣に全身を包ながら、ちょうどチーズづくりに取りかかるところでした。 

工場

原料は、生乳と塩のみといたってシンプル
まず、チーズ製造器で牛乳をカードと呼ばれる固形にします。 

カード

チーズ製造器から取り出されるカード

次にカードをカット。約130グラムずつに分けて、十分な粘り気と滑らかさが出るまで練ったり、伸ばしたりを続けていきます。 

人

モッツァレラなど4種類を商品化 

ただ、一見地味なこの作業ほぼ熱湯につけた状態で行うため、手袋をしていてもかなり熱い様子。榎本さんたちは何度も冷水に両手を浸し、冷ましながら繰りかえしていました。 

成形を終えたら冷水につけて完了です。40リットル分の牛乳が1時間半ですべてモッツァレラチーズに変わりました。 

チーズ

まん丸に成形したモッツァレラチーズ

工房内で、3人はほとんど言葉を交わすことがありません。それでもしっかり連係しながら次々にチーズを仕上げていきますこの作業を始めて半年も満たないとは思えない手際の良さ。家族ならではの信頼感と結束の強さを感じずにはいられません。 

現在、モッツァレラチーズと、チェリーモッツァレラ(モッツァレラチーズをサクランボ大に小分けにしたもの)、ストリング(棒状の裂けるチーズ)、リコッタ(ホエーを煮詰めたもの)の4種類を商品化しています 

パンフレット

榎本牧場のチーズを紹介するパンフレット

JAが運営する農産物直売所「FAM’Sキッチンいわくに」(岩国市)などで販売し「牛乳の風味がすごい」「優しい味がしました」と、お客さんからも好評とのことです。  

そもそも、どうしてチーズづくりを始めたのでしょう?
富貴子さんは「酪農家だから、以前から牛乳で何か作ってみたくて。東京での研修会に参加してチャレンジすることに決めたんです」と教えてくれました。 

脱サラ、Uターン。家族全員で運営 

榎本牧場は現在、乳牛約40頭を飼育。数年前からは、脱サラし耕大さんが和牛約25頭を食肉用に育てていますその後、拓也さん広島からUターンし、牧場運営に参加。耕大さんの妻舞さんもチーズ造りなどを手伝い、家族全員で歴史ある牧場を新たに盛り上げています。 

家族

(左から)拓也さん、舞さん、富貴子さん、耕大さん(榎本牧場提供)

持続可能な循環型牧場を実現 

そんな榎本牧場は、飼育方法にも特徴があります。
牛の飼料となるトウモロコシを3.5ヘクタールの畑で栽培、牧草も3ヘクタールで育てています。牛の排泄物は堆肥化して畑に還元。持続可能な資源循環型の牧場を実現しているのです。その取り組みは、牧場のロゴマークにも表現されています。 

畑

飼料用のトウモロコシ畑

ロゴマーク

ロゴマーク

将来、経営を担う耕大さんは「自分たちが作った餌を、牛さんたちが喜んで食べる姿を見ると、日ごろの苦労も吹っ飛びます」というほど根っからの牛好き「これから耕作放棄地を活用して、飼料作物の栽培をもっと広げたい。そして、いずれはこの地域の人たちが働けるような観光牧場にしていけたら嬉しいですね」と話しています。 

チーズ

自宅に帰ってモッツァレラチーズをいただいてみました。大自然のなかで育まれたチーズは、ミルクとの風味以外、余計なものをまったく感じないあっさりとした味わいいくらでも食べてしまいそうです。今後はカマンベールやカチョカバロ(熟成チーズ)のほか、ジェラートの開発も構想しているとか。これから榎本さん一家が牛たちとともに、どんな商品を生み出していくのか楽しみです。 

 

 

執筆時期:2020年8月
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榎本牧場 

住所|山口県岩国市錦町宇佐郷574 

TEL|0827-74-0955

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