「どぶろくを通じて、ふるさとの歴史を広く発信しよう」  

山口県防府市で、そんなプロジェクトが進んでいます。江戸時代、お殿様への献上酒に使っていた仕込み水製造。どぶろくを味わえる専門近々開店します。どぶろくソフトクリームや甘酒も販売し、全国発信の構想も膨らんでいます 

もともと、お酒と言えば「濁酒」のことだった 

どぶろくって、米と米麹、それに水を加えて発酵させた濁酒(だくしゅ)。昔は各家庭で作って、農作業のあとにちょっと飲んでいたんだよね」そう話すのは、日本伝統濁酒研究所の右田圭司代表このプロジェクトの発起人です。 

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右田圭司さん

さっそく右田さんは、試作中のどぶろくを皿に注いで見せてくれました。どくどくと流れ落ちる液体は、確かに白く濁っています。 

「透明でさらさらなお酒なんて、江戸時代まではごく一部の金持ちだけのものだったんだから。お酒って言ったら、農家などで造っていた濁酒のこと。明治以降、製造が禁止されちゃったけど。久しぶりにふるさとで暮らすようになって、このどぶろくで街を面白くできないかなって考えたんだよね」 

そんな右田さんの想いに同級生や知人たち次々と協力。2019年末、防府市が国からどぶろく特区(※)の認定を得たことで、実現に向けて一気に動き出しました。 

実は、ソムリエ資格の生みの親 

それにしても右田さんはお酒に詳しい。それもそのはず。日本のワインソムリエ認定資格に当初から関わり、試験問題の作成にも携わるなど、お酒に関係するプロとして長年、世界中を巡ってきた人なのです。 

右田さんは防府市生まれ。東京の短期大学を卒業後、都内のホテルに就職し、ソムリエとして活躍。ジェトロ(日本貿易振興機構)の専門調査員として、アフリカや中南米など世界168カ国を訪れて現地の酒文化を調べたことも。 

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50歳を過ぎてから大学院進み国際観光学などについて研究。卒業後は立教大学大学院のビジネスデザイン研究科客員教授として教鞭を執っていました。2008年には日本酒のソムリエ資格「酒(ききざけ)師」の試験を行うNPO法人「料飲専門家団体連合会」を設立し、現在も理事長を務めています。 

歴史へのリスペクトを込めた「瀧水」 

母親の介護のため2018年に帰郷。「自分の経験を生かして、ふるさと活気づけることはできないか」と考えて辿りついたのが、その土地の風土を色濃く反映して造られるどぶろくでした。 

米は市内でプロジェクトメンバーが栽培する低農薬米。水は江戸時代、長州藩主への献上酒「瀧水(たきみず)」の仕込み水として知られ、指定史跡の宮市本陣に残る井戸水を使っていますそんな由緒ある水へのリスペクトを込めて、商品名も「瀧水」に決定。20208月から製造に取りかかりました 

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右田さん提供  

防府から始まる「たき」と「みづは」の物語 

20212月には、防府天満宮の参道沿いにどぶろくを味わえるお店「みづは」オープンさせます。そのおのすぐ近くには、お酒に関係の深い「酒垂(さかたり)神社」 

鳥居

この神社の歴史は平安時代末期にまで遡ります。 

奈良・東大寺の再建に尽力した重源上人が、再建が成功したのは天神様のお陰として、お礼に天満宮の社殿を建造しました。このとき、工事に携わった人たちが近くの岩から湧き出る水を飲んで渇きを癒していたところ、その水が香り高いお酒に変わったと伝えられています。人びとはこの奇跡も天神様の神威」と感謝し、新たに建てたのがこの酒垂社です。 

こちらに祀ってあるのは、水の流れを司る「水波能売命(みはのみこ)」店名は、この神様にちなんでいます。 

「瀧水」のたき、「水波能売命」のみは。この言葉を聞いて、2016年に大ヒットしたアニメ映画「君の名は。」に登場する2人の主人公を思い浮かべた方もいるかもしれません。あの作品も神事やお酒にまつわるストーリーだったこともありプロジェクトはサブカルチャー的な観点からも注目を集め始めています。 

どぶろくから広がる出会いに期待 

将来的にはどぶろくに関連した冷凍製品を開発し、全国展開していくことも計画中。また、どぶろくについてのセミナーも開催していく予定です 

右田さんは「まずは『瀧水』をモデルケースに、特区であるこの街でたくさんのどぶろくが誕生していったら嬉しいですねそうしたひとつひとつが、観光資源に繋がっていくなら最高です」と話しています  

このプロジェクトは、ふるさと納税を活用した寄附型クラウドファンディングKAIKAふるさと納税」にも登録しています。「自分もどぶろくを応援したい!」という方は、こちら

 

 

※どぶろく特区
特区内において自家栽培の米を使い、自営の店舗に限って提供するなら、酒税法に定められた製造量(年間6000リットル以上)に満たなくても酒造免許が取得できる制度。自治体が申請し、国が認可する。 

 

 

執筆時期:2020年12月
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住所|山口県防府市新田1463-1 

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