「山口県周防大島に、木工作家が移住したらしい」
そんな噂を耳にしたのは2019年の冬のこと。それから数ヶ月後、仕事でお世話になった同僚から、「新たな旅立ちに」と一本のボールペンをプレゼントされました。 

周防大島の桜の木で作ったボールペン 

pen

美しいフォルムと木材の温かな色合い。上部には、私の名前が刻まれています。聞くと、周防大島で木工作家として活動する方が作られたものとのこと。ボールペンに使われている素材は、島の桜の木だそう!
その日から、このボールペンは私の大切な相棒となっています。 

一体どんな方がどんな思いで作られているのだろう? 

ずっと気になっていた木工作家に会いに、周防大島の港町、安下庄(あげのしょう)を訪れました。 

周防大島のGUWASHI GREEN WORKS 

view

周防大島は山口県の東部、瀬戸内海に浮かぶ温暖な島です。秋から冬にかけて、山口県屈指の生産量を誇るみかんの収穫がピークを迎えます。そんな「みかんの島」で木工作家として活動するのが、「GUWASHI GREEN WORKS(グワシグリーンワークス)」の楳田亨樹(うめだこうき)さん。 

atelier1

atelier2

自宅に構える作業場には、様々な木材のほか、木を削るための機械や道具が並びます。木屑が飛ばないよう、壁には養生がしてありますが、天井にはシャンデリア、日本人形や絵画などがあり、応接間のようです。 

「ここは僕の祖父の家で、元々応接間として使っていました。小さい頃は皆でこたつに入って遊んでいました(笑)」と楳田さん。
長年空き家になっていたこの家に、楳田さんが越してきたのは2019年3月のこと。 

「その前は青年海外協力隊としてドミニカ共和国に赴任していました。任期の終わり頃から、帰国後は周防大島のこの家に住めたらな、となんとなく思っていたんです」 

広島県福山市出身の楳田さん。幼少期から、お盆やお正月には周防大島で過ごし、楽しい思い出がいっぱい詰まっているのだそう。 

地元産木材へのこだわり 

umeda

「これが、大島のみかんの木なんですよ。農家さんから剪定した木を分けてもらいました。周防大島に住むなら、島のものを使って何かできたらいいなと、地元産の木材にこだわって物作りをしています」 

燃やして処分されることの多い剪定木は、楳田さんの手によって、新たな作品に生まれ変わります。 

手

「どんな木目を出すか、考えながら作業するのが楽しい」
木工との付き合いは10年以上になります。 

削る

みるみるうちに角材が美しい丸みを帯びていく

「父方の祖父が大工、父が建築士というのもあってか、子どもの頃から物作りが好きでしたね。祖父の作業場でもよく遊んでいました」 

家具デザイン専門学校を卒業後は、広島県府中市の木工会社へ就職。4年間営業職を経験しましたが「自分には物作りの方が向いている」と感じ、家具作りのメッカである岐阜県高山市へ。そこで2年間、家具の作り手として修行しました。
ドミニカ共和国の青年海外協力隊へ応募したのはその後のことです。 

「20代後半になり、海外の空気を吸ってみたい、と思ったんですね。行くなら今しかないなと。子どもの頃から協力隊のことは知っていて、実際に協力隊を経験した知人もおり、興味がありました」 

ドミニカ共和国へ木工隊員として派遣 

写真提供:GUWASHI GREEN WORKS

楳田さんはドミニカ共和国の人口約1,000人の村、ラリスタに派遣されました。村人の多くが家具作りを生業とする木工の村です。  

「そんな田舎の村でも、近年はIKEAなど海外資本の参入で、村の家具需要は伸び悩んでいました。そこで収入向上のため新商品の開発を任されたんです」 

写真提供:GUWASHI GREEN WORKS

楳田さんが提案したのは、地元の魚をデザインしたまな板やキーホルダーなどの小物作り。ラリスタ村の近くには大きな観光地があり、観光客向けのお土産として販売すれば、新たな収入源になるのではないか、という思いからでした。 

「ただ家具職人としてのプライドもあるのか、始めはなかなか村人に理解されませんでしたね。そのうちに女性が先に興味を示してくれ、時計を作ったりして、マルシェで販売するようになりました。実際に売れると皆やってみようか、となるんです。僕がいた2年間で新たなやり方が根付いていたら嬉しいですね」 

accessories

GUWASHI GREEN WORKSのアクセサリー。デザインは自然をモチーフにしたものが多い

帰国後に移住した周防大島では、みかんや桜、栗、柿など地元の木材を使ったボールペンの他、アクセサリー作りにも取り組んでいます。 

木工作家とみかん農家 

木工作家として活動する楳田さんは、実はみかん栽培農家でもあります。 

「せっかく島に住むのだから、みかんも作ってみたいなと思って」 

そんな気持ちで始めた農業ですが、聞くと1ヘクタールもの面積があるのだそう!全くの未経験から営農塾に通い、みかん試験場で勉強しながらみかん作りに挑戦しています。 

mikan

畑はパートナーの羽白(はしろ)ミクさんと2人で管理。今年が初めての収穫

「みかん作りはやりがいがあって面白い」と話す楳田さん。農業も物作りと共通する楽しさがあるのかもしれません。 

今後の目標 

umeda

「将来、みかんの観光農園を作りたいんです。みかんを食べながら、すぐ横で木工のワークショップができる施設。切ったばかりのみずみずしい生木を使って、その場でイスを作るような、グリーンウッドワークもできたら」と語ってくれました。 

木材も有効活用できる循環型のみかん農園。これまでにない、みかんと木工のコラボレーションが実現する日も近そうです。 

 

 

執筆時期:2020年11月
※本記事の情報は執筆時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。 

 

 

GUWASHI GREEN WORKS 

住所|山口県大島郡周防大島町東安下庄 

TEL|090-7130-6802 

メール|koki.umeda89@gmail.com 

HPはこちら

Instagramはこちら

オンラインショップはこちら