オリンピックを目指すような本格アスリートの指導から、介護予防などを目的とした高齢者向けプログラムまで。社会福祉士などの資格も持つ男性が開いた卓球教室が、山口県周南市にあります。

扉を開けると、代表の河村和治さんが打ち込みの手を止めて取材に応じてくれました。

人

河村和治さん

介護予防、認知症予防にも最適

まず個人的に聞きたかったのが、「どうして介護予防などに良いのか」について。なぜなら、ほかにも高齢者向きのスポーツはいくつかありそうだからです。ところが、「その中でも、卓球は特に適している」と河村さんは言います。

「移動範囲がテーブルの周囲だけですから。広いエリアをあちこち動き回る必要がないので、ケガのリスクが少なくなります」。実際、教室には硬式テニスやバレーボールといった動きの激しいスポーツを卒業して通い始める方も少なくないそうです。

さらに身体面だけでなく、認知症予防にも繋がるとのこと。「集中力はもちろん、1本目はフォア、2本目はバックなど、打ち返すパターンを決めて練習すれば記憶力が鍛えられ、脳トレにもなるんです」

なるほど。確かに高齢者の健康維持にも役立ちそうです。しかし、まったくの未経験だった場合でも楽しめるようになるものでしょうか?

「生徒さんのうち、一番多いのが初心者の方です。ラケットに触ったことがなくても、基本レッスンを半年も続けたらラリーができるようになります」

卓球

サーブを打つ河村さん(中央)河村さん提供

福祉現場で10年。「その経験が、いまに生きている」

5歳から卓球を始めた河村さんは、全国スポーツ少年団準優勝、高校総体ベスト8、関西学生新人選手権優勝など、輝かしい成績の持ち主。大学卒業後は京都府の社会人チームに所属していました。

ところが、チームが廃部に。周南市にUターンして福祉事業所に就職し、介護福祉士や社会福祉士の資格も取得しながら10年間、勤務しました。そこでの経験が、教室開設のきっかけになっています。

「デイサービスの管理者だったとき、機能回復訓練のひとつとして卓球を取り入れてみました。すると、先ほど言ったように高齢の方にとても合っていることが分かったんです」

新しい可能性を感じた河村さんは、「高齢者の健康増進にも貢献できる教室を開こう」と動き出します。関西などで知人が開いている教室を視察するなどしながら構想を練り、2019年11月、思いを形にしました。

入り口

「いつか、石川選手のようなアスリートも育てたい」

広告などの効果もあって、すぐに人気教室に。現在は小学生から75歳まで計125人が通っています。そのなかには、強くなりたい一心で1日4時間の練習に打ち込む小学生も。

玄関には、ことしの全日本選手権で5度目の優勝を飾った石川佳純選手のサインが飾ってありました。河村さんは高校時代、当時まだ小学生だった石川選手と何度かラリーをしたこともあるとか。「当時から、ものすごく上手だったですね。何より負けん気が強かった。僕もいつか、あれほどの選手を育ててみたいと思っています」

サイン

石川佳純選手のサイン

ただ、一般的にいまの子どもたちを指導するのは難しいとも。

「試合で一度でも負けると、興味を失って辞めてしまう子も珍しくありません。学校で勝ち負けや順位を付けられるのに慣れていないことが原因ではないでしょうか」

それでも、河村さんは負けることの大切さを強調します。「負けると自分の課題が見つかるし、その課題を克服するために考えて、努力もします。さらに、乗り越えられたら自信もつく。人は負けることで成長するし、それは生きる力にもなっていくんです」

どうすれば試合から学び、成長に繋げていけるのか―。河村さんは日々、模索と工夫を重ねています。

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コロナ後は、「多世代の交流大会で盛り上がりたい」

新型コロナウイルスの影響で、高齢者向けのプログラムは現在、休止中です。そのほかの大会やイベントなども開催できていません。先が見通せない状況のなかで、河村さんは「コロナ後」にやりたいことを温めています。

「日常が戻ったら、まず多世代の大会を開きたいですね。卓球を通じて交流を深めてもらいたい。ラケットと球さえあれば年齢に関係なく仲間になれるのが、このスポーツの魅力ですから」

 

 

執筆時期:2021年1月
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KAZUKEN卓球

住所|山口県周南市久米3411-8

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TEL|0834-34-0195

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