山口県長門市の俵山温泉。標高約150メートルの山間部で1100温泉のまちです。 

街並み

古くから湯治場として知られ、立ち寄り湯老舗の旅館が軒を連ねる細い通りに、このほど手打ち蕎麦のお店ができました。「そば居酒屋 たべ山(やま)。温泉客の人気となっています。 

看板

メニューを開いてまず目を引いたのは「けもの南蛮そば」という一品。いったいどんな蕎麦なのでしょうか? 

運ばれてきたのは、こちら。 

トッピングしてあるのは、猪の頬肉のチャーシューと、鹿肉のつくね。いずれも甘みがあり、特にチャーシューはその柔らかさに驚ました。猪も鹿も、地元で獲れたものをさばいています。つまりジビエです。 

「けもの感」たっぷり
山の幸が生み出す旨味 

猪の頬肉は、一頭から600グラムくらいしか取れない希少な部位。赤身、脂身、コラーゲンともに豊富なんですそう説明してくれのは、店長の木村芳雄さん。 

人

木村芳雄さん

「つゆには、チャーシューを作ったときの煮汁と、特産のゆず『長門ゆずきちの果汁が入っています。コクと旨味を加えて、よりけものを楽しんでいただきたくて」 

確かに、しっかりとした濃いめの味。そこに爽やかな酸味感じました 

メニュー表には、「鹿肉ステーキ丼」という文字も。 

ステーキ丼

鹿肉ステーキ丼(株式会社CREIN提供)

「鹿のヒレ肉が余っていると聞いたので、どんぶりにしてみようと。普通ならバルサミコやベリー系のソースを使うところを、敢えてしょうゆや蕎麦の出汁を使って和風に仕上げています」 

このほか、「鹿そぼろチャーハン」「猪チャーシューチャーハン」など聞き慣れない商品が並んでいます。 

きっかけはラグビーワールドカップ
「食べるところがないなら、作ろう」  

意外性は、このお店がオープンするきっかけにも潜んでいました。「実は、2年前のラグビーワールドカップが大きく関係しているんです」と木村さん。いったいどういうことでしょうか? 

20199に日本で開催されたラグビーワールドカップで、長門市はカナダ代表チームの公認キャンプ地に。練習会場は、俵山の多目的交流広場でした。 

選手関係者が温泉街を歩いて、食事するところがなかったら申し訳ないそう考えて動き出したのは、俵山の活性化を目指す地元企業SD-WORLD空き店舗を活用してキャンプ期間中だけ蕎麦屋を開きました 

その後月に一度試験的に営業。メニューの選択や味の研究を重ね、翌年1月に本格営業を始めました。蕎麦の実は地元で無農薬栽培されているものを使用し、同社の社長と電気屋さん、大工さんの3人が交代で手打ちしています。店名は俵山の「山」と、豊富な山の幸、そして「食べなさい」という意味の山口の方言「たべさん」にちなんでいます。 

テーブル

たべ山の店内。テーブル席だけでなく、和室もある

和食×イタリアン
地元素材のメニューを次々考案 

本格営業を前に、飲食業を任せるのにぴったりの人物がUターンしてきたことからメニューも充実していきました。それが木村さんです。 

「祖母が日本料理店などを経営ていたので、もともと出汁の取り方など基本は身に付いていた」という木村さん。高校卒業後に地元を離れて福岡や東京で働き、帰郷前の10年ほどは愛知県のイタリアンレストランに勤務していました。 

「お店をやるから手伝ってしい」と誘われると、新しいメニューを次々と考案していきました 

「ジビエだけじゃなく、山菜や無農薬野菜が豊富なのも、俵山のいいところですね」そう言って木村さんが作ってくれたのが、旬の山菜の天ぷら。タケノコ、ノビル、タラの芽、カラスノエンドウなどをさっと揚げています。いずれも瑞々しく、香りが豊かでした。 

天ぷら

食を通じて、湯の町の灯りを次世代へ 

木村さんは、地元出身だからこそ感じる寂しさもあるとか「僕が高校生のころ2000人ほど暮らしていました。でもいまは1000人弱。高齢化も随分と進んでいます」 

だからといって悲観しているわけではありません。 

人口は少なくなっても、ここの温泉は根強い人気があります。広島や大阪、先日は宮城県からのお客さんもいらっしゃいました。そうした皆さんに、俵山が育んだ無農薬野菜や天然の食材を堪能していただきたい。それがこの湯の町の灯りを次世代に繋いでいくきっかけになるなら嬉しいです 

人 

 

執筆時期:2021年4月
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住所|山口県長門市俵山5110-1 

営業|11:30~14:00、17:00~21:00 

定休|火曜、水曜 

TEL|0837-29-0303