「若い人が飲みたくなるような、スッキリ美味しい日本酒を造りたい」 

創業150酒井酒造(山口県岩国市)が生み出した、新時代のお酒「G」(ジーシャープ)。手掛けたのは、20代、30代の若き4人です「悩みながら、すべて自分たちだけで仕上げました。日本酒好きになるきっかけの1本になってくれたら」と願う彼らに、「G」にかける想いや開発秘話を聞きました。 

4人

「G♯」を手掛けた4人。次世代の日本酒造りに奮闘している

取材にうかがったときは、醪(もろみ)を造るための三段仕込みの最終工程「留添」(とめぞえ)の真っ最中。蒸したお米と麹、水を酒母に加えながら、酵母の増殖を調節していく大切な作業です。巨大な蒸し器から米を掘り出したり、長い櫂で桶のなかをかき混ぜたり。時間が勝負の、かなりの力仕事に見えます。皆さん手際良く、黙々と作業を続けていました 

鍋

フレッシュなまま飲みきれる辛口を目指して 

2時間近い仕込み作業の後、開発チームの皆さんに酒蔵へ集まってもらいました 

お聞きしたのは、「G」のコンセプトについて。「若者が飲みたくなる日本酒」とは、具体的にどういうお酒なのでしょうか。 

「辛口だけど、アルコール度数低く飲みやすい、ということですねと簡潔に答えてくれたのは、チームリーダーの最年長、片山優一さん35 

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片山優一さん

若い人から聞く日本酒の悪いイメージ一つ『酒臭く、度数が高くて悪酔いしそう』というもの。僕たちはあえてそこに着目したんです。それなら、さらっと飲めるお酒を造ってみようと」 

アルコール度数は、日本酒としては低めの14度。仕込みの温度管理を当した松村貴明さん(31)は日本酒開けたてが一番フレッシュで美味しいんです度数が低くてサラッと飲めるなら、フレッシュなまま飲みきっていただけるのでと話します。 

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松村貴明さん

辛口を目指したのは、「食事に合わせやすいように」との想いから。
僕は、食事には辛口の日本酒が一番合うと思っています」と話すのは、酒母造りを担当している吉岡勇輝さん(23 

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吉岡勇輝さん

度数を抑えるとチューハイのように甘くなってしまいがちそれでもシャープな辛口に仕上げているところが、このお酒の一番の魅力だと感じています 

伝統製法から生み出された、新しさ 

「若者向けのお酒」といっても、あえて昔ながらの製法にこだわっているのも「G」の面白いところです 

最も特徴的なのは、発酵の元となる酒母を手作りする伝統製法「生酛(きもと)造り」を採用している点。酒蔵に棲み着いている天然の乳酸菌を繁殖させる方法で、酒母ができるまでの日数は2526日。人工的に乳酸を加える一般的な製法の約3の時間を要します 

桶

仕込み木桶を使用。発酵のもととなる酵母には、広く使われている日本醸造協会のいわゆる「協会酵母」ではなく、山口県が独自開発した「やまぐち山廃酵母」を使用しています。  

「効率」「スピード」が重視される現代にあって、あえて手間のかかる造り方こうした製法を選んだのも、彼ら自身です。そこには「蔵人」ならではの理由がありました。 

悩み、壁に当たる日々。「いつか財産に」  

「将来のを担っていく世代として、言われたことをやるだけじゃなく、自分たちで必死に考えて挑戦、経験値を積み上げておきたいんです」と片山さんは明かします。 

ただ、それは同時に不安との戦いでもありました。「いつものように決まった手順があるわけじゃなく、すべて自由。だから、自分たちが選択した方法が正しいのか、それとも間違っているのか。逆にいつもやっている工程でも、不必要なものもあるんじゃないのか……。答えが分からないことだらけ。正直、いまでももやもやしています」 

人

真剣なまなざしで仕込み作業をする片山さん

すべてを自分たちだけで手掛けるのは、4人にとって初めての経験。杜氏も、副杜氏もあえて口出しせず、ノータッチだったそうです 

吉岡さんは「生酛造りは未経験だったので、いままで覚えたことが役に立たない場面の連続。まだまだ、自分は未熟だなと痛感する日々でした」と振り返ります。 

「でも、人に答えを求めずに自分の頭で考えて、壁にぶち当たりながらも行動を続けることでしか成長しないですから」と片山さんそういう意味ではこの経験は今後の僕たちにとってすごく大きな財産になっていくと確信しています 

まず手に取ってほしい。「きっと感動するから」 

そんなリーダーの言葉を少し緊張した面持ちで聞いていたのは、蔵人歴3の木村仁紀さん(20)。「まだ何も身に付いていない僕には、この挑戦はちょっと早すぎたかも……」 

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木村仁紀さん 

「そういう木村くんのような若者が一生懸命造っているっていうのも、このお酒大切な要素なんだと思うと、片山さん優しいまなざしで語り掛けます。 

人

「これからも4人でああでもない、こうでもないと悩みながら、もっと美味しく、感動のあるお酒を目指していきたい。そんな僕たちが造る『G』が若い人たちに受け入れられて、夕飯と一緒に日本酒を飲むという食卓文化を受け継いでいくきっかけになるなら、これ以上嬉しいことはないですね 

びん

取材を終えて、さっそく「G」をいただいてみました。まず感じたのは、ぶどうのような豊かな香り。口当たりは軽く、すっと溶けていくように後味もさわやかです。これなら和食にも、洋食にも合いそう。酔うためではなく、友人たちと愉しい時間を過ごしたいときにぴったりのお酒だと感じました。 

 

G♯
酒井酒造と、地域商社やまぐちが共同開発。山口県産の山田錦、清流「錦川」の伏流水を使用。伝統製法「生酛造り」、山口県独自開発の「やまぐち山廃酵母」を採用して造った純米吟醸酒。「G」は、岩国市の錦帯橋に由来する酒井酒造の代表銘柄「五橋」の頭文字を、「♯」はすっきりとした口当たりを表している。720ミリリットル1980円(税)。 

■購入お問合せ先
地域商社やまぐち株式会社
TEL|0120-414716(平日9:00-17:00) 

やまぐち三ツ星セレクション | jimotto(じもっと)

 

 

執筆時期:2021年3月
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