新型コロナウイルスが蔓延する中、一冊の旅行雑誌が発売された。 

雑誌

Discover Japan_TRAVEL 山口 旅と暮らしの間へ』
(株式会社ディスカバー・ジャパン発行) 

発売日は20213月25日。2回目の緊急事態宣言が解除されたとはいえ、感染拡大の報道は日増しに過熱しており、とても手放しで旅行には行けない。本書を手にしたのは、そんなタイミングだった。
それでも購入したのは、山口県に暮らすものとしてどんなところが紹介されているのか気になったからだ。 

帰宅し、写真を眺めるつもりでペラペラとページを捲り始めた。しばらくして、ちょっとした違和感を覚えた。その正体を探ろうと冒頭からじっくり読み進める。『Discover Japan_TRAVEL 山口』は、ただの「旅行雑誌」じゃなかった。  

Discover Japan編集部に直撃取材 

20215月、緊急事態宣言下の東京とオンラインで繋がった。
画面の向こうには、株式会社ディスカバー・ジャパン代表取締役兼統括編集長の高橋俊宏さんと『Discover Japan_TRAVEL 山口』編集長の吉田健一さんのお二人が並ぶ。そう、直撃取材だ。
なぜこのタイミングで山口県を特集しようと思ったのか?また外から見た山口県の魅力など、山口のローカルメディアとして聞かねばならないことが山ほどある。時間は60分。挨拶もそこそこにインタビュー取材が始まった。 

「すごいことが始まるかもしれない」 

――まず、『Discover Japan_TRAVEL 山口』発刊の経緯をお聞かせください。 

高橋俊宏さん(以下、高橋):始まりは2年前ぐらいです。長門湯本温泉へ知人に誘われ、訪れたことがきっかけです。当時、長門市では大型老舗旅館が破綻したり、老朽化した「恩湯」をどうするかの議論がなされているタイミングでした。
その時、長門湯本の若旦那衆や長門市役所の方々とお会いして、ものすごい熱を感じたんです。「このままではいけない」と強い危機感を持っていて、本気で変わろうとしていた。その熱は星野リゾート代表の星野佳路さんにまで伝播して、物件再生だけでなく、街づくりにまで取り組もうとしている。
他にも、全国で辣腕を振るっている街づくりの専門家がわさわさと集まっていて、「すごいことが始まるかもしれない」とマグマの胎動のようなものを感じたんです。その場で「ぜひ協力させてください」とお伝えしました。 

高橋さん

高橋俊宏さん・株式会社ディスカバー・ジャパン代表取締役兼統括編集長(提供:株式会社ディスカバー・ジャパン)

 ――星野さんも雑誌の中で「日本観光産業史上の奇跡」とおっしゃっています。長門湯本の取り組みのどこが、そこまで言わしめるのでしょうか? 

高橋:まず、民間、行政、さらにそれに関わる外部の人間の熱量が違います。旅館や萩焼の窯元などで世代交代が進み、そうした若い人をサポートする長老たちとの連携も取れている。また移住者が新しく事業を立ち上げ、人がまた人を呼ぶいい連鎖も生まれています。
また、事業全体の意思決定を行う「長門湯本みらいプロジェクト」内に、外部評価委員会を置いていることも大きな要因です。私もその評価委員の一人ですが、地域外の有識者で構成されていて、中立的、客観的な視点から官民の取り組みを評価・フィードバックします。すごくクレバーないい仕組みですが、ここまでやっているところはほとんどありません。
そうしたソフトとハードがうまく噛み合っていることが、長門湯本のすごいところだと思います。 

山口県ならではの魅力とは? 

――今、お話を伺っていて、なるほど!と思ったのですが、自分の第一印象が「これはただの旅行雑誌じゃないぞ」だったんです。手に持っただけで、作り手の熱量がビリビリ伝わってくるというか。 

高橋:どの雑誌も同じ熱量で作っていますが、この本はとりわけ、かもしれませんね。吉田も気付いたら山口にいたよね(笑)。どのくらい入ったっけ? 

吉田健一さん(以下、吉田):延べ1ヶ月以上は現地入りしましたね。制作期間は半年ほどだったので、月に56日は山口県にいました。もう習慣になってしまって、気付いたらいるって感じでした(笑)  

吉田さん

吉田健一さん・『Discover Japan_TRAVEL 山口』編集長(提供:株式会社ディスカバー・ジャパン)

――吉田さんは、山口は今回が初めてだったんですか? 

吉田:それまで一回行ったことがある程度だったので、知識はゼロに等しい状態でした。 

――これまでいろんな地域の本を作ってきたと思うのですが、山口県ならではの魅力をどこに感じましたか? 

吉田:「人」ですね。先ほど高橋が申し上げた「長門湯本みらいプロジェクト」のメンバーだけでなく、お店の人だったり、農業をやっている人だったり。会う人会う人、どこに行っても本当にパワフルで。なんでこんな面白い人がいるんだろう、と。 

――雑誌を拝見していても、人物の写真が多いですよね。 

吉田:制作過程でそのことに気づいて、食のページも人物を中心に構成しています。食そのものではなく、それを作っている人の背景がとにかく魅力的だったので。食は個人的に好きで、本もかなり作ってきましたが、このアプローチで構成したことはほとんどありません。 

高橋:「焼きとり こうもり」とか「大阪屋」とかね。 

吉田:ええ。こんな仕事をしていて、ボキャブラリーが貧困で申し訳ないのですが、どこも、本当に、うまい(笑)。よくある地元のお店だなとふらっと入ったら、まずびっくりするやつです。 

高橋:大阪屋にお邪魔したとき、女将さんに「美味しいですね」と伝えたら、「私が今朝獲ってきたからね!」と。本業が海女(あま)なんです。それを知ったら、なおさらですよね。 

雑誌のページ

『Discover Japan_TRAVEL 山口』p072-073(提供:株式会社ディスカバー・ジャパン)

吉田:普段地元の人が通っているお店のクオリティがめちゃくちゃ高い。その格好良さと美味さにやられました。 

高橋:この本のキャッチコピー「旅と暮らしの間へ」に込めた思いもそこにあります。山口というとフグが有名ですが、そうした高級なものではなく、暮らしの中に溶け込んでいるクオリティの高いものに触れる。そういうものこそ旅の醍醐味だし、ラグジュアリーだと思っていて、我々はそこを伝えていきたいんです。  

山口の魅力、再発見!

――そこに山口の、日本の魅力があると考えているわけですね。 

高橋:ええ。ディスカバー・ジャパンのコンセプトは「ニッポンの魅力、再発見。」です。ポイントは「発見」じゃなく、「再発見」というところにあります。日本の魅力を語るとき、新しいことを無理やり見つけたり、作らなくていいと思っています。その土地にあるものを掘り起こして、しっかり文脈からひも解く。それを現代の人に響くように再編集して伝えれば、魅力を感じてもらえると思います。 

――なるほど。今回の本で「絶景」を地質学者がナビゲートしていたり、「食」も「歴食」として専門家が監修しているのはそのためなんですね。 

高橋:そもそも絶景がなぜ絶景に見えるかというと、珍しい地形だからです。そこにはそうなった理由がある。なんとなく綺麗だなーと眺めるだけじゃなく、土地の成り立ちを地質学の観点から見ると景色の見え方が変わります。食もそうですよね。 

――じつは読み進めていくうちに、これは「旅行雑誌」ではなく、「生きた教科書」だと感じたんです。そうしたら、最後に「防長大学」が開講し、「1時限目」と授業が始まった(笑) 

吉田:遊び心で授業形式にしましたが(笑)、ああした普遍的なところが一番知ってもらいたい部分なんです。歴史や文化などちゃんと背景を知った上で訪れてもらいたい。それが山口の旅をより面白くすると思うんです。 

高橋:なぜ日本を作った偉人たちが山口からこれだけ輩出されているのか。どうやって育まれたのか。私はそれがすごく気になっていました。本州の端っこで三方を海に囲まれた海上交通の要所。人やモノと同時に、情報が行き交い、独自の風土や文化が育まれ、それが教育にも反映された。
巻頭に山口県出身のタレント・田村淳さん(ロンドンブーツ12号)と星野さんの対談記事がありますが、その対談中にも淳さんが「松陰先生」とおっしゃる。そうした維新の気風が今もまだ人々の根底に息づいている。長門湯本の取り組みも、そうした下地があって大きなうねりとなっている気がします。 

吉田:まだまだ掘り下げ甲斐がありますよね。 

雑誌のページ

『Discover Japan_TRAVEL 山口』p008-009(提供:株式会社ディスカバー・ジャパン)

――ありがとうございました。お二人のお話を伺っていて、山口に暮らしていることが誇らしくなりました。この雑誌は山口県の人こそ読むべき本かもしれないですね。 

高橋:ぜひ読んでいただきたいですね。客観的に見てこんなに魅力に溢れたところはないと思います。 

 

株式会社ディスカバー・ジャパン

『Discover Japan_TRAVEL 山口』ご購入はこちら

 

 

執筆時期:2021年6月
※本記事の情報は執筆時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。