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2018/08/07 【山口】

【発見!ヒットのつぼみ】リンゴのお酒、誕生秘話

by 近藤 耕平
スポーツ新聞記者、タウン情報誌編集者、広告代理店コピーライターを経て、現在はフリーのライター&編集者として活動中。スポーツ選手やタレントから一般企業の取材まで、…

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シンプルがゆえに難しい
試行錯誤のシードル作り

山口で地元産のリンゴを使った果実酒「シードル」作りに取り組む女性がいると聞いて、取材先である山口市阿東徳佐地区に向かうと、目的地に近づくにつれて道の両サイドにリンゴ園が次々と!取材に行くまで正直、山口=リンゴの産地というイメージがなかったのですが、それは私の勉強不足で、山口県阿東徳佐地区は西日本有数のリンゴの名産地でした。冬は気温が氷点下にまで下がる気候などがリンゴ栽培に適しており、この地区だけで約20ものリンゴ園があるのだそうです。



お話を伺った「やまぐちシードルプロジェクト」の原田尚美さんは山口市出身。大学進学を機に関西で14年間過ごした後、2016年に「地域おこし協力隊」としてUターンすることになりました。元々ワインが大好きで、食や農業にも興味があったことから、関西に住んでいた頃にはわざわざ山梨県のブドウ園やワイナリーまで農作業の手伝いに行っていたそうです。「自分の畑でブドウを育てて、そのブドウでワインを作って、そのワインを通じて会話が生まれて、人と人とがつながって…。ワイナリーを巡るうちに、いつしか自分もそんな生活がしてみたいと思うようになりました。もしかしたら、地元に帰った方が実現の可能性が高いのかも?なんて思っていた時に、知人に紹介されたのが地域おこし協力隊の募集でした。応募してみたら、そこからは不思議なくらいトントン拍子で、いろんなことが動き始めましたね」と原田さん。

当初はワイン作りを目指していたものの、山口市阿東の気候特性やりんご農家さんとの出会いもあり、阿東徳佐の名産品であるリンゴを使ったシードル作りへとシフト。18年4月から試験醸造を始めています。

ここでシードルの作り方を簡単に紹介します。シードルとはリンゴを発酵させて作る発泡性のお酒。リンゴのスパークリングワインと聞けば、分かりやすいと思います。

まずはリンゴを砕きます。その名も「アップルクラッシャー」という機具を使うものの、人力です。原田さんは一度に約100kgのリンゴを使って試験醸造を行っています。



その後、リンゴ果汁に酵母を加え、3~4週間ほど発酵させれば完成。と、文字にすればシンプルですが、原田さんが醸造している場所は設備が整っていないので、温度管理一つをとっても大変です。「今年の春は気温が低くて、室温のままでは酵母がうまく発酵してくれませんでした。電気毛布や湯たんぽを使って温めたり、逆に発酵が進んで低温にしたい時には水で冷やしたり、瓶に詰めるまでは付きっきり。泊まり込みで作業することもありました。最初に仕込んだ『ファーストバッチ』を試飲した時には、わが子のように愛しく思ってしまいました(笑)」。

取材した18年6月の段階は、シードルの仕込みを3回行い、リンゴや酵母の種類、発酵の時間など、いろいろと試行錯誤している最中。試飲して味を確かめるだけではなく、山口県産業技術センターの協力のもとで数値化してデータを比較するなど、来るべき商品化に向けて着々と準備を進めています。



 

1杯のシードルを通じて
山口の魅力を発信したい

原田さんが目指しているのは食中酒として楽しめるシードル作り。そこには、山口の食材をお酒と一緒に楽しんでほしいという、原田さんの想いがあります。「山口って、分かりやすい名物は少ないんですが、海もあって、山もあって、豊かな自然で作られた農産物、海産物に恵まれた土地だと思います。毎日口にする“日常品が上質”ってとても贅沢なことだと、関西からUターンしてきて強く感じるようになりました。だから、そんな食材を引きたてるすっきり辛口のシードルを作りたいと思っています。いつかは、山口といえば『とりあえずシードルで乾杯!』みたいな、そんな文化が根付けばいいなって。やるからには夢を大きくもって、楽しみながら取り組んでいます」。

そんな壮大な夢の実現に向けて、シードル作りと並行して、飲食店のオープンも計画中。「店の奥にはガラス張りのシードルのタンクがあって、地元食材で作ったタパスやピンチョスが楽しめて、みたいな醸造所付きのパブスタイルをイメージしています。シードルってリンゴ100%のシンプルなお酒なので、リンゴの品種が変われば味も全然違ってくるんです。試験醸造したシードルの試飲会でも『これは香りがすごくいいね』とか、『いわれるまでリンゴのお酒って分からなかった』とか、飲み比べをしながら、その日会った人同士も会話が弾んでいて。そんな風に、シードルを通して、山口や阿東徳佐に興味をもってもらえるきっかけになると嬉しいですね。阿東徳佐だけでも30品種くらいはリンゴを作っているので、今年の収穫期には、いろいろ試してみたいと思っています」。



「やまぐちシードルプロジェクト」の活動や、1~2年後を予定している店舗オープンの情報はホームページで紹介されていますが、この記事を読んで興味を持った方は、ワークショップに参加するのもおすすめです。



リンゴ農園でリンゴの生育や収穫を体験したり、自分たちで収穫したリンゴを使ってシードルを仕込んで試飲をしたり、継続して何度も楽しめる内容が企画されています。こちらも、ホームページで随時、紹介されているのでチェックしてみては?

 

■やまぐちシードルプロジェクト
<公式サイト>

http://yamaguchi-cidre.net/

<ワークショップ参加などのお問合せ>
090-9500-7522(原田)

取材:2018年6月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

取材・文:近藤 耕平
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