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2019/04/28 【山口】宇部

たばこ屋を「おもしろい空間」に。癒し、ユルユル、クセになるキャラ……。独自セレクトの濃い作品が並ぶ小さな雑貨店|はるとゆき 雑貨店

by 大村 たかし
防府市出身。地方新聞社で18年間記者として活動後、コーチ、カウンセラーとして独立。起業家へのインタビューやプロフィール記事の作成、書籍の編集も行っている。趣味は…

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いかにもユルユルな表情のネコやコアラ、古代遺跡から発掘されたような真鍮製のアクセサリー。宇部市の銀天街アーケードにある「はるとゆき 雑貨店」は、どこかサブカルチャーな空気に満ちている。しかも、外観は思いっきり昭和な「たばこ屋」なのだ。

アーケード内の交差点に位置する店内は、たった1.5坪。大人が2人入ればいっぱいだ。だけど、そこには得体の知れない奥深い世界が広がっていた。置かれている作品が、どれも強烈な個性を放っているからだろうか?

一歩踏み入れたときから、どうしても目に付いて離れなかったのが動物たちの図柄をあしらった布製品。真っ白な生地に、黒い糸を縫い込んだだけのシンプルなものだ。ユルいような、反対に不機嫌なような……。見れば見るほど、その不思議な魅力に取り憑かれてしまう。

「これは東京のミシン刺繍作家さんの作品。取り置きを頼まれるお客さんもいるほど、人気ですよ」と、オーナーの小川成子さん。

棚の上には「シロネコ」「クロネコ」と名付けられたコーヒーや、ごつごつ、ザラザラした手触りのいびつなステンドグラスなども。いずれも静岡や南阿蘇など、県外の作家によるものばかりだ。

【真鍮と樹脂で作ったアクセサリー】



世界観のある作品だけをセレクト

いったいどんな基準で作品を選んでいるのだろう?

「世界観に共感できる作家さんの作品だけ、置いています」

なるほど。これで店内にサブカルチャー的な奥深さを感じた謎が解けた気がした。だけど、そんな濃い作品を、小川さんはどうやって見つけているのだろう?

「主にSNSです。そこに上げられている写真などから物語を感じて、作家さんと繋がっていくことが多いですね」

SNSの投稿から物語を感じて、アポイントを取っていく。そう聞くといかにも現代風だが、そこからはいたって昭和的だ。互いの価値観を大切にしながら、関係性を深めて行くのだという。

「大切なのは、やはり人脈。人と人、その繋がりがすべてですから」

【作家たちから届いた直筆の手紙など】


店内の一画には、作家たちから届いた直筆の手紙が貼られていた。人との繋がりを重視する小川さんの言葉を裏付けているようだ。

丁寧な人間関係を紡いでこの空間に集まった作品たちを求めて、広島や福岡から訪れる女性客も珍しくないという。



たばこ屋を、「おもしろい空間」に

開店して2年。もともとは親戚のおばあちゃんが長年営んでいた「たばこ屋」だった。閉店後10年以上、物置状態だったという。

「ほこりだらけ、カビだらけだったけど、絶対におもしろい空間になるとずっと思っていたんです」

【店の周囲は、シャッターを閉じた店舗が目立つ】


あるとき、この商店街で開かれた育児サロンに参加した小川さんは、若いお母さんからこんな言葉を聞いた。「久しぶりにここを歩いたけど、なんだか怖いですね」

大半の店がシャッターを下ろし、アーケード内は昼間でもどこか薄暗い。それは分かっていたが、この地で生まれ育った小川さんは、その女性の言葉に改めて寂れゆく地元の現実を突きつけられた思いがした。

「だったら、私がここで何かやろうと考えたんです」

壁を塗り替え、棚を付けるなどリフォーム。以前から、子連れの母親が遠慮なく楽しめる雑貨店がないと感じていたため、業種の選択に迷いはなかった。

店名「はるとゆき」は、長男晴信くん(6)と次男泰幸くん(4)からとった。

「今日ねえ、女の子の友だちできたよ~」

取材中にも、晴信くんがお母さんを慕って何度も顔を出し、即興で作った歌を大声で聴かせてくれた。

【ハイテンションで自作の歌を歌う晴信くん】


小川さんがタンポポの綿毛で創ったハーバリウムやチューリップのドライフラワーなどもさり気なく飾られている。そうした小物に、癒しを求める育児世代の女性も多いという。「ここに住みたいって言う人もいますね」

【小川さんが作ったチューリップのドライフラワー】



わざわざ来たくなるお店に

一方で、物販店はインターネットや通信販売に押され、経営難に陥るところが多いことも事実。小川さんは、だからこそ「はるとゆき」のような店が大切になっていくのだと言う。

「いまの若い女性は、量産品にウンザリして、職人の手仕事に飢えている方が多い。それもスマホの画面ではなくて、実際に目で見て、手で触って、自分で感じたうえで選びたいと思っているんです」

遠くのお客さんがわざわざ足を運んでくる理由は、そこにあるようだ。

「そこで大切になるのは、やっぱりお店の世界観。この作家さんの作品を、この店で買いたいと思ってもらえる空間にしていきたいですね。購入した作品を見るたびに、お客さんの頭のなかに店内の風景が甦るような、そんな雑貨店になると嬉しい」

帰り際、「お土産に」とネコ柄の弁当包みを手にした。すると、マスキングテープ、そしてコーヒーも買わずにいられなくなってしまった。作品に惚れた……というより、「ここで買わないと、もうこの子(作品)たちに会うことはないかも?」というなんとも言えない切ない気持ちに襲われたのだ。どうやら、小川さんが生み出す世界観にすっかりはまってしまったようだ。


取材時期:2019年4月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

 

取材・文:大村 たかし
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Spot Information

はるとゆき 雑貨店

住所 山口県宇部市中央町2丁目12-8
TEL 090-6416-4158
営業時間 土曜日13:00~17:00、水・木曜日及び第2・4日曜日11:00~15:00
URL https://www.instagram.com/zakka.harutoyuki/?hl=ja

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