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2019/05/08 【山口】宇部

「ハンドメイド」で商店街を、まちを、人生をリノベーション|昭和女子屋台Lab

by 大村 たかし
防府市出身。地方新聞社で18年間記者として活動後、コーチ、カウンセラーとして独立。起業家へのインタビューやプロフィール記事の作成、書籍の編集も行っている。趣味は…

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閉まったままのシャッターばかりが目につくモノトーンの商店街。そこに突然、赤、オレンジ、紫の水玉模様に彩られた柱が現れた。

「昭和女子屋台Lab(ラボ)」。

いったい何のお店なのだろう? 屋台か、それも女子限定の? その前に、昭和女子って? ピンク色に縁取られたビニールカーテン越しにのぞき込むと「ああ、どうぞ!」と中に通された。いや、僕のような男子が入ってもいいものなのか……。

でも、足を踏み入れると不安は一変。寂しい商店街とは真逆の明るい笑い声が響いていた。両サイドに並ぶ木製の小さな棚には、布製品、陶器、ガラス食器、ペーパークラフト、ハーバリウム……などなど、多様なハンドメイド商品がずらりと並んでいる。それぞれの棚をじっくりと見て回ると、時間を忘れて長居してしまいそうだ。

「この棚の一つひとつが屋台なんです」と話すのは、ラボのプロジェクトリーダー槌谷直美(つちたになおみ)さん。「ここは昭和のアーケード街。賑やかだったあの頃の思い出を共有している人たちと一緒に、もう一度楽しい場所に変えていきたい。そんな実験的(laboratory)な想いを込めて運営しているんです」

【ラボの魅力を語る槌谷さん】


なるほど、昭和、屋台、ラボの意味が一気に分かった。残る謎は「女子」だけだ。そこには、女性が抱える切なる願いが込められていた。



週2日だけ、楽しく働きたい 

ラボは、まちづくり会社「(株)にぎわい宇部」が運営。事業開始前、建築士、不動産関係者、民間ボランティア団体代表、主婦などで企画チームをつくり、空き店舗をリノベーションして再活用する案を出し合った。その際、主婦メンバーの西村美弥子さんから「週2日だけ働ける場所がほしい」との声が上がったのだ。

【ラボではワークショップやセミナーも開かれる】


「育児、介護、そしてパートに追われて、自分の時間がとれない人が多い。週に2日だけでも好きなことをして、それが仕事に繋がるなら幸せなんです」(槌谷さん)

じゃあ、どうやったらそんな場所がつくれるだろう? 場所ができたとして、どうすれば家賃や光熱費などの必要経費を生み出していくことができるだろう?



シェアでチャレンジしやすい仕組みを実現

そこで生まれたのが集合屋台という形態のチャレンジショップだ。10年以上シャッターが閉じたままになっていた元紳士服店を活用し、賃料の一部を屋台の出店料(1屋台あたり、ひと月8000円)でまかない合っている。ひとつの屋台を共同出店、委託販売などでシェアできる仕組みにした。

【ペーパークラフトの財布やカード入れが並ぶ屋台】


出店者一人ひとりの負担が軽くて済み、夢への一歩を踏み出しやすくしたのだ。現在9台の屋台を35人でシェア。ラボ全体の店番は、1屋台15時間を下限に各自が自主的に行っている。屋台が並ぶ店内はまるで、商店街が活気に満ちていたころの空気そのものだ。

「最初は自分の商品が売れるのだろうかと不安だったけど、いまは買っていただけることの喜びを感じています。いつか起業するための大切なステップになりますね」。フラワーアレンジメントやアクセサリーを販売している為村理恵さんは、確かな手応えを感じている。

【イラストレーターを目指す柏村さん】


ユニコーンなどのファンタジー世界を描いたポストカードを販売している柏村祐香子さんは、通信制大学で美術を学ぶイラストレーターの卵。「ディスプレイの仕方など、とても勉強になっています」。参加によって大きな刺激を受けているという。

「週2回」を提案した西村さんは、国産の素材にこだわった惣菜を出品。1人でも食べきれる分量に小分けし、近所の住民たちから好評を得ている。この日はラボの店頭で、白米をピザ風に味付けした「ご飯ピザ」を販売していた。「現在、週2日だけ開けている自宅カフェを将来本格的に開きたいんです。そのためのスキルアップになっていますね」と笑顔で話す。

【手作り惣菜が人気の西村さん】


ラボが始まって2019年4月で1周年。当初は予想していなかった変化も生まれている。この1年でアーケード内にイタリアンのお店や美容院などが新たに出店したのだ。まだわずかだが、灰色のシャッターが開き、再びまちに彩りが戻りつつある。



手作りで「たのしいまち」に

でも一番意外だったのは、会社員の男性や、近所のおじいちゃん、おばあちゃんも寄ってくれることだという。「ここで何か新しいことに出逢えると思って来てくれるのが嬉しい」と槌谷さんは喜ぶ。アーケードの近辺では近年、百貨店や量販店の撤退が相次いだ。そのため「買い物難民」となるお年寄りも増えているという。槌谷さんは「ここで野菜やピクルスなどを販売してほしいという声も届いています。そうした方たちのお役にも立っていきたい」とも話す。

ハンドメイドの商品が並ぶラボは、「自分たちの毎日を楽しくハンドメイドしていこう」とする女性たちの実験室そのものだ。その実験結果はいま、近隣の住民へ、そしてまち全体へと少しずつ拡がりつつある。


取材時期:2019年4月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
 

取材・文:大村 たかし
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Spot Information

昭和女子屋台Lab

住所 山口県宇部市中央町2丁目11-27 (にぎわい宇部内)
TEL 0836-39-6907
営業時間 10:00~18:00
定休日 日曜日・祝祭日
URL http://nigiwai-ube.co.jp/yatailab/

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