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2019/05/12 【山口】岩国

ファッションはライフスタイル。昔ながらの洋服屋だからこそ伝えられる「本当にカッコイイ」世界|藤田信雄さん[フジタメンズU]

by 大村 たかし
防府市出身。地方新聞社で18年間記者として活動後、コーチ、カウンセラーとして独立。起業家へのインタビューやプロフィール記事の作成、書籍の編集も行っている。趣味は…

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We keep the good taste of American traditional.
=アメリカン・トラディショナルファッションのセンス、ずっと守っています。

JR岩国駅前にある中通り商店街で、半世紀以上続く紳士服店「フジタメンズU」。米軍基地のある街のお店らしい言葉を掲げたひさしをくぐると、オーナーの藤田信雄さんが「お、こんにちは!」といつもの笑顔で迎えてくれました。



一歩入れば、古き良き薫りの空間

小さな店内に並ぶシャツ、パンツ、ジャケットなどはすべてアメリカ、イギリスのトラッドファッションばかり。70年代のジャズが流れる空間は、まるで「古き良き時代」にトリップしたかのような錯覚を覚えます。

取材に伺った日の藤田さんの服装は、黒いジャケットにネクタイ、それにブルージーンズ。その軽妙な格好について尋ねると、ブランドや素材だけでなく、文化的背景に至るまでサラサラ~っと説明してくれました。

「これは『理由なき反抗』でジェームス・ディーンが履いていたライダーズデニムの復刻版。腰のあたりが深くなってるでしょ? これだとバイクに乗って前傾姿勢になってもシャツが出ないんですよ」

「このジャケットも復刻版。1960年代に若者たちが好んでいたもの。ほら、こうして一番上の白いボタンを襟からチラ見せするのが当時は粋だったんですよね~」

【「チラ見せ」の白ボタンを指さす藤田さん】


洋服のことになると本当に生き生きと語る藤田さん。この笑顔に甘えて、以前から気になっていたことを思い切って聞いてみました。



洋服は、ライフスタイルそのもの

それは、「ファストファッションと呼ばれる安価な大量生産品を扱う店舗や、インターネットでの注文が主流となっているいま、昔ながらの洋服屋にしかないものって何ですか?」ということです。もちろん、品揃えの違いや、オーダーメイド対応の有無ということではなく、存在意義という観点で。

「あのね」少しの間を置いて、藤田さんは続けました。「衣食住って言うでしょ。つまり、ファッションってライフスタイルの一部なんです」

洋服は着ている人の生活表現。加えて、時と場所によってそれなりの「国際ルール」があるとのこと。それくらいなら自分もだいたい知っていると思っていたのですが……、いや、浅かった(汗)。

【ショーケースに並ぶカフスボタン】


「例えば、紺色のスーツが欲しいというお客さんがいたとします。そこで大切なのは、どういう場面で着用するのかということ。フォーマルなパーティーだったら、ちょっと着丈が長めのエレガントなもの、仲間うちの打ち上げだったら短めの軽快なものが相応しい。ひとつのボタンを止める、止めないで礼や信頼を失する可能性もある。ただ紺色のスーツならいいってわけじゃないんです」

そういったルールを心得ているかどうかが、その人自身のライフスタイルを表してもいるのだ、と。これは、量販店で既製品を選ぶだけでは分からない世界ですね。

「そうしたことを伝えるのが、本来、洋服屋の仕事でもあるんですよ」

そう言って藤田さんは「APPAREL Report」(アパレル・レポート)と題された冊子を見せてくれました。



ファッションの百科事典

「これは先代の父が、お店の会員さんに出していたガリ版刷りの会報をまとめたもの。10年以上、ほぼ毎月発行していました。父は会報を通じて、ファッションルールなどを伝えていたんです」

冊子を開くと、そこにはボタンダウンシャツの着こなし方や革靴の手入れの方法、レストランマナー、さらには「服は人生観だよ」というコラムまで……。これはもうレポートの域をはるかに超えた「ライフスタイルとしてのファッション」の百科事典です。

「このころはホテルでフランス料理の食事会を開いたりもしていました。そんな店に招かれたとしたら、どんな服を選び、どう振る舞い、どのような会話がスマートなのか。そういった体験学習の場を提供していたんですね」



「ビスポーク」としてのプライドを胸に

その情熱を、そっくり引き継がれている藤田さん。これからの展望を尋ねると、

「洋服屋として、ビスポークであり続けたい」

言葉を噛みしめるように、そう話されました。

ビスポークとは、背広という言葉の語源とも言われるロンドンのセビルロー通りに軒を連ねるオーダーメイドの仕立屋の総称です。その語源は、「been spoken for」だとか。

【お客さんの身体のサイズを測る専門の道具を手にしながら説明する藤田さん】


「つまり、話をしながら、相談を受けながら服を作るプロのことです。この店でいうなら、岩国という土地の社会背景、文化レベル、空気感を踏まえた上で、お客さんに最適な提案をしていく。そして、その人の身体の特徴を正確に計って一点物のスーツを生み出していく。これからもずっとそういう店でありたいし、そのための努力を重ねていきます。それがビスポークとしての僕のプライドですから」

移り変わる時代と、失われてほしくない誇り高き文化。

We keep the good taste of American traditional.

お店を出て振り返ると、この言葉の持つ意味が取材前よりずっと深く感じられたのでした。


取材時期:2019年4月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

取材・文:大村 たかし
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Spot Information

フジタメンズU

住所 山口県岩国市麻里布町2丁目3-24
TEL 0827-21-0250
営業時間 10:00~19:00
定休日 水曜日
URL www.fujitagroup.com

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