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2019/06/09 【山口】岩国

ラジオパーソナリティから転身! 全国区の「かぶり物職人」へ|山口亜希子さん[オーダーメイドかぶり物 かぶせ屋]

by 大村 たかし
防府市出身。地方新聞社で18年間記者として活動後、コーチ、カウンセラーとして独立。起業家へのインタビューやプロフィール記事の作成、書籍の編集も行っている。趣味は…

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イチゴ、メロン、モミジにコアラ……。無表情にかぶり続けているマネキンに見つめられていると、シュールな世界にどんどん引き込まれていきそうだ。

ここはかぶり物職人、山口亜希子さんのアトリエ。そもそも、かぶり物職人という職種がこの世にあることさえ知らなかった。

「オーダーを受けてこんなものを作っている人、おそらく他にはいないと思います。だから注文も全国から来るんですよ」とメロンをかぶった山口さんが答えてくれた。

確かに、既製品のパーティーグッズはあっても、オーダーに応じて作ってくれる人って聞いたことがない。



ないのなら、自分で作ろう!

でも、山口さんはどうして「かぶり物の道のプロ」を目指そうと思ったのだろう?

「もともと、コミュニティFMのパーソナリティーをしていました。あるとき、ソフトクリームのかぶり物をして市役所前でリポートをしたらすごく注目されて、初対面の人たちも笑って楽しんでくれたんです」

かぶり物には、人を笑顔にする不思議な力がある……。そう感じた山口さん。「次はイチゴをかぶろうと思ったら、どこを探してもなくて。だったら、自分で作ってしまおうと」

中途半端が嫌いで、何事にもとことんまで全力で取り組むタイプ。2012年春には「オーダーメイドかぶり物 かぶせ屋」として仕事を始め、ホームページも開設。「ゆるキャラブーム」もあって、徐々にオーダーが増え始めた。

お店や企業から「うちのキャラクターを」との依頼だけでなく、

・「竹組」の園児のお父さんたちから「リレーのバトン代わりに竹のかぶり物で走りたい」
・富士山のゲレンデである仮装コンテスト出場者から「ほかとはレベルの違う富士山を」
・テニスの試合に出るという方から「ダブルスのユニホームとしておそろいのかぶり物を」

……などなど、想定外の要望も。

すっぽり被らなくても、頭にタオルを巻くだけで手軽に変身できる「かぶりんぱっ」も用意。カエルやカッパ、ニワトリ、ネコ、ウシ……など約30種類。販促イベントなどの「盛り上げグッズ」として人気だ。

見ているだけで笑ってしまう作品の数々。でも、制作に入ると山口さんは完全にプロフェッショナルの目に変わる。

オーダーものの場合、お客さんのイメージ図などをもとに立体的な展開図を考え、円周率などを計算しながら型紙を起こす。これはもう、勘と経験がものを言う職人の世界だ。

「世の中に参考になるものが何もないので、すべてゼロから自分で考えるしかないんですよ」。場合によっては試作品を作って、少しずつ理想に近づけていくことも。地道で根気のいる日々が続く。

「制作に入ると、没頭しちゃって。ずっと全力で走ってしまうんです」

ただ、プロとなって4年が過ぎたころ、その「常に本気モード」が限界に。

一人で部屋に籠もり、納期に追われる毎日。「楽しくて、笑顔を増やしたくてはじめた仕事なのに、どうしてこんなに辛いんだろう。このままじゃ自分がだめになるかも……」。そんな疑問と不安が募りに募っていた2016年5月、ある大きな案件が終わったのを機に、かぶり物職人の仕事をすべてストップした。



ファンの声に支えられ、3年ぶりに復活

休止中は「私がやってきたことは、何だったんだろう?」そんな虚しさを感じることも。けれど、しばらくすると「以前作ってもらったものが古くなったから、また新しく作って」といった問い合わせが届くようになった。なかには「お願いだから、連絡ください」と往復はがきで切実に訴えるファンまで。

そうした声を受け止めるうち、「自分を求めてくれる人がいるなら、もう一回やってみよう」と決心。宮島が一望できる高台にアトリエを設け、2019年1月に再出発した。縫製業の経験者を雇用し、無理なく、自分も笑顔になれるように体制も整えている。

「ものづくり、そして笑顔づくりがやっぱり好き。これからはその原点を大切にして、自分も楽しみながらかぶり物の魅力を広げていきます」

そんな山口さんの想いを聞きながら、最後にどうしても試してみたいことが……。

「かぶったら、どんな気分になるんだろう?」

ちょっと勇気を出して、タコの「かぶりんぱっ」を試着してみた。

【撮影・山口さん】


……いや、なんでだろう。笑わずにいられない。どうしても笑顔になってしまう。これをつけて眉間にしわを寄せたり、深刻な表情になったりは、ちょっとできないかも。

自分が楽しく、笑顔になる。それが周りに広がっていく……。 かぶり物って、もしかしたら最強のコミュニケーションツールなのかもしれない。


******


オーダーメイドかぶり物 かぶせ屋
住所/山口県岩国市室の木町4-51-7(事務所)
   広島県廿日市市前空2-1-7 201号(アトリエ)
URL/https://kabuseya.shop-pro.jp/

 

取材時期:2019年5月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

 

取材・文:大村 たかし
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オーダーメイドかぶり物 かぶせ屋

住所 山口県岩国市室の木町4丁目51-7
URL https://kabuseya.shop-pro.jp/

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