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2019/07/07 【山口】小野田

ネルドリップの珈琲屋が伝える珈琲への敬意|園田力也さん[sonoda coffee]

by 松田 澪衣菜
埼玉県出身、山口県在住。ソーシャルメディアに特化した広告代理店に勤務後、2年前に萩市にお引越し。現在はゲストハウスで勤務する傍ら、古道具屋を営んだり、萩の魅力を…

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物語に引き込まれるような空気感の珈琲店

長く続く山道の先に、ぱっと現れる「sonoda coffee」。

ひとたび扉を開けば、そこには予想だにしない世界が待っています。

まるで物語の中へ迷い込んだかのような錯覚を起こしてしまう内装。随所に散りばめられた装飾は、いずれも主張はせずとも存在感を放っていて、どこを切り取っても絵になる空間です。

店内を見渡し終えたタイミングで、店主の園田力也(そのだりきや)さんがメニューを持ってきてくれました。

【手書きの無骨なメニュー】


sonoda coffeeでは、珈琲豆の焙煎も自らの手で行い、抽出にはネルを使っています。園田さんの手元で零れ落ちる珈琲。その光景を眺める静寂の間さえ、心地よく過ごすことができます。

ネルは園田さんご自身で作られ、販売も行っています。自ら彫っているという握り手は、一つ一つ味わいが異なるので、愛着を持って長く使うことができます。



店主・園田さんがお店を始めるまで

園田さんがお店を始めたのは3年前の2016年6月。はじめはsonoda coffeeと同じ敷地内にある複合施設「ぽんぽこの里」でテイクアウトの珈琲を販売していました。当初はお店を構える予定はなかったそうですが、ある常連さんの姿を見て、お店を構えることに決めたと言います。

「必ずお店の前で飲んで帰る常連さんがいたんです。雪が降る中でも珈琲を買って、体を震わせながら飲んでいってくれる。それも、テイクアウト用の紙カップではなく、マイカップを使って。その姿を見て、これは室内がいいなあと。それで、お店を構えることにしました」

お店を作るのは、なかなか勇気のいること。園田さんも「ここに人、来るのかな?」という気持ちは少なからずあったと言います。半信半疑ではあったけれど、当時は何かをはじめられることへの安心感の方が大きかったそうです。



理想は満足をしないまま続けること

自然な流れの中で珈琲屋を始めることになった園田さん。オープン当時はお客さんとの繋がりもなく、先のことは見えていなかったそうです。一人でお店をしていて、息がつまるようなことはないのでしょうか?

「焙煎で煮詰まることはあります。嫌な味がついていて、取りたいのに取れない。どうにか解決してほっとしていたら、もうちょっといけるんじゃないかという気がしてきて、試してみる。で、またさらにスランプに陥る……」そんな状態が1年弱続いたと言います。

それでも、常連さんと過ごす時間の中で「あ〜なんだか気持ちが入れ替わったな」と感じ、もうひと頑張りできることもあるのだそう。

また、同業者の本当に素敵なお店に出会った時には、すぐにでも帰りたくなると言います。早く自分も珈琲を入れたい。そんな衝動にかられる瞬間があるのだと表情をほころばせていました。

焙煎以外にも、お客様とのやり取りの中で気づかされることも多いようです。最近では、「自分の口から出た言葉が自分の中でまわるようになってしまった」と言います。否定的な言葉を口にした時点で自分自身が汚染されてしまう感覚。だから、否定的な言葉は口にしないようにして、なるべく自分を納得させるよう頭の中で変換しているとのこと。

そして何より、満足感に対する危機感を強く感じているようです。

「満足感はあまり持っちゃいけないなって思っています。憧れている珈琲屋の方は年配の方ですが、今も努力をしていて。だから、そういうのがいいなぁ。満足しないままやっていくのが理想です」



うつろい変わりゆくsonoda coffee

sonoda coffeeが目指す珈琲とはどんなものなのでしょうか。

園田さん曰く、苦味は珈琲が本来持っている味ではなく、人間が焙煎して後でつけている味なのだそう。だから園田さんはなるべく苦味のない、素材本来の味を目指しているとのこと。

「珈琲屋がやっていることは珈琲を焙煎したり、淹れたりすることにすぎないので」と園田さん。本当の意味で珈琲を作っているのは、土や水や太陽、そして農家の方。珈琲を提供する立場の珈琲屋が、農作物である珈琲に感謝の気持ちを持つということが、今後ますます大切になっていくのでは、と教えてくれました。

静かに自分の言葉で話をする園田さん。日々珈琲と向き合う中で生まれた言葉は、どこか哲学的です。

「珈琲豆などの自然物は純粋なもの。だからこちらの、人間の中身を綺麗にするのが大事かなって。今はまだ自分の中で肥やしている段階ですが、珈琲に滲み出るようにしていきたいと思っています」

そんな“sonoda coffee”は、来るたびに内装が変わっているのも魅力のひとつ。独特の世界観は、コーヒーを最後に弔う場として相応しい修道院や教会を意識していると言います。

聞けば、改装工事を初めて3年経った今でも、まだ工事を続けているとか。園田さんにとって、この場所は、自分自身の投影の場。完成したと思っていても、翌日になったら何かが違うと感じたり……。その度に内装を変えるので、完成はあるようでないとのこと。

深い思慮の元、研ぎ澄まされた感覚により作られた空間と一杯の珈琲。うつろい変わりゆくsonoda coffeeから目が離せません。


取材時期:2019年6月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

 

取材・文:松田 澪衣菜
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Spot Information

sonoda coffee

住所 山口県美祢市大嶺町奥分3118-1
営業時間 11:00-22:00(木曜のみ 13:00-17:30)
定休日 不定休 ※Instagramをご確認ください
URL https://www.instagram.com/______sonodacoffee___/

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