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2019/07/01 【山口】岩国

「かわいい」だけじゃない、ねこ保護活動のリアル|立場愛さん[猫処りとや]

by 大村 たかし
防府市出身。地方新聞社で18年間記者として活動後、コーチ、カウンセラーとして独立。起業家へのインタビューやプロフィール記事の作成、書籍の編集も行っている。趣味は…

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寝転がったり、追いかけっこをしたり、柱をガリガリしたり……。部屋に入ると、キジ、トラ、サビ……など個性豊かな「猫スタッフ」たちが勝手気ままな姿で迎えてくれました。

そのうちに1匹、2匹とジワジワ寄ってきて、すぐにメモも取れない状況に(汗)。

山口県岩国市の中心市街地にある猫カフェ「猫処りとや」。ここにいる17匹の猫たちはもともと、みんなノラ。オーナーの立場愛さんが、同市横山地区などで保護した子たちです。

「猫ブーム」が続くなか、「人も、猫も幸せに暮らせる世界」を目指して地道な取り組みを続けている立場さん。その言葉には、「かわいい」や「かわいそう」だけではできない「保護活動のリアル」がありました。



猫アレルギー持ちの「猫の変態」

―ここの子たち、すごく人懐っこいですね。ノラでも、こんなに慣れるものなんですか?

もちろん猫ちゃんによって違います。ここにはそういう子たちを連れてきているので。なかにはすぐに隠れたり、隅っこにうずくまったままだったりした子もいますが、みんなそれぞれのペースで「猫スタッフ」に成長していくんです。

【店内の壁には、猫スタッフが写真付きで紹介されている】


―猫カフェに保護活動。立場さんの毎日は猫への愛で溢れていますね。

本当にずっと猫まみれです。自分でも猫の変態だなと思いますね(笑)。でも、もともと猫好きなわけじゃなく、それに猫アレルギーもあるんですよ。



助けられる「小さな命」

―それがどうして、ここまで?

5年ほど前の冬、自宅近くで瀕死の黒猫を見つけたんです。事故にあって口元が変形し、しかも猫エイズ。動物病院では「1ヶ月生きたらいいほうだよ」って。でもどうしても助けたいと思って連れて帰り、必死に看病したら元気になったんです。そのときに、「この子と同じように、私が助けられる命があるんじゃないか」と思ったのが始まりです。

せっかくこの世に生れてきたのに、生きられなかったり、殺処分されたり……。猫カフェも、地域猫活動も、そんな不幸な子たちを少しでも救いたいと考えて続けています。

―地域猫活動というのは、具体的にどんなことをするのですか?

「餌をあげる」「掃除をする」「地域の方に理解してもらう」「避妊・去勢手術をする」。この4つを柱に、同じ気持ちの方たちと地道に継続しています。このうち、どれが欠けてもだめだと私は感じています。


―すべてセットで、ひとつの活動ということ?

ええ。例えば、餌だけあげる方をよく見かけますが、そういう場所には当然猫が集まります。すると糞尿、臭いの問題がでて、その地域の方たちの迷惑になるんです。だから掃除は不可欠。でも餌やり、掃除で止まってしまうと、猫たちはどんどん繁殖していきます。そうなると飢えたり、冬を越せなかったりして死んでいく不幸な子猫が増えるだけ。だから、猫たちへの避妊・去勢手術は避けて通れないんです。

そして、こうした活動を地域の方にご理解いただいていないと、「ただ猫を可愛がっているだけ」「地域住民への迷惑は何も考えていない」といった誤解を受けます。すると活動を続けられなくなる。そうなればまた、飢えたり死んだりする猫たちが増えはじめ、地域の方の迷惑になるし、結果として保健所に連れて行かれて不幸な結末を迎えてしまうのですのです。

―4つの柱が深く繋がっていること、よく分かりました。カフェも、その一環なのですか?

あえて言うなら、保護活動への理解を広める「入り口」のような場所です。ここでお客さんに猫ちゃんたちを可愛がっていただくことが、過酷な環境で生きているノラちゃんたちへの支援に繋がっていく。そうした循環の輪がどんどん大きくなっていくのが理想ですね。

【猫スタッフと戯れるお客さん】


―カフェを開設されて2年(2019年現在)。その理想には近づいていますか?

「保護した猫ちゃんと、猫好きな方が触れあう場を創りたい」という当初の思いは、形になってきていると感じています。お気に入りの猫ちゃんがいる常連さんのほか、餌の差し入れなど継続してご支援いただいている方もいらっしゃるので。また、猫と一緒の「猫ヨガ」や、猫好き限定の「お見合いパーティー」なども開いて、交流の可能性がすごく広がりました。



猫カフェは、駆け込み寺じゃない

―このお店をきっかけに、里親さんと猫ちゃんが出会うこともあるのですか?

譲渡もしています。ここが窓口になって、子猫を飼いたい方と、保護活動をされている方との橋渡しをすることも。けれど、そうした協力は本当に信頼できる方についてだけです。というのも、こうした取り組みをしていると、どうしても駆け込み寺のような誤解を受けてしまうので。

【保護活動をしている女性から一時預かりした子猫に、興味津々の猫スタッフたち】


―「ここに連れてくれば、なんとかしてくれる」という感じでしょうか?

そうなんです。そういう依頼を全部受けつけて、預かっていくとどうなると思いますか?


―何十匹、何百匹と増えてしまうんじゃ……

大げさな話じゃなくて、リアルにそうなんですよ。だから私は最初から、「引き取りはしません」と言っています。なのに、「生まれたから」「捨てられていたから」といって連れてくる方がいまだに後を絶ちません。時に出産シーズンの後には、毎日電話が入りますね。

放っておけないという気持ちは本当によく分かります。でも、まずは自分で小さな命を救うためにできる限りの努力をしてほしい。どうしても自分で飼えないのなら、知り合いに声をかけるとか、里親募集のチラシを作って手当たり次第に貼っていくとか。そういうことをまったくせず、うちのようなところに「丸投げ」されるとどうなるか……。あっという間にキャパオーバーとなってパンクします。


―飼える頭数の限界だけでなく、餌代も掛かるし、去勢代なども必要となって、金銭的負担もすごいことになりますよね。

ええ。どんどん連れてこられる子猫を抱えきれずに、活動を断念される方も珍しくありません。皆さん、本当にギリギリのところで踏みとどまりながら続けられているんです。まずそこを理解してほしい。



「誰かが……」ではなく、自ら行動を

これは猫カフェに限った話じゃないんです。保健所の猫を一時的に預かって、里親探しをされている方がいます。保健所レスキューと呼ばれるボランティアさんたちです。すると、「保健所に預けても、殺処分されずにレスキューが助けてくれるんだ」と短絡的に考えて、猫を保健所に連れて行く、というか捨てに行く人たちが出てくるんです。


―あまりに安易で無責任ですね……。

これが現実なんです。正確に情報を理解し、小さな命のために何ができるのかを真剣に考えて自ら行動していく人は、ほんの一握り。悲しいけれど、大多数の人は「誰かがなんとかしてくれる」としか考えていないんです。自分の手から離れるなら、それでいい。だから、根本的には何も変わっていかないんですよね。

【優しいまなざしで猫スタッフを見つめる立場さん】


―そんな大変な状況が続くなか、立場さんはどのような気持ちで活動を続けていらっしゃるのでしょう?

「小さな命を救い、不幸に亡くなる子をなくす」という根本を見失ってはいけない。そう自分に言い聞かせています。正直、私だって心折れそうな時はしょっちゅうありますよ。でも、自分が何のためにこの取り組みをしているのか? 何度もそこに立ち返りながら、これからも自分にできる限りのことを積み重ねて行きます。「小さな命を救う」という輪が、ほんの少しずつでも広がることを願って。


*****


救える「命」に向き合う想いの深さと、取り組みの真摯さ。

立場さんの言葉と姿勢からは、このふたつが強く感じられます。

「かわいい」や「かわいそう」だけでは、何も解決しません。「小さな命のために、自分には何ができるのか?」。そうした問題意識を持ち、行動を続ける人が増えることでしか、「人も、猫も幸せに暮らせる世界」は実現しない。そう強く感じた取材でした。


※山口県では2016年度から保健所での保護情報を積極的に公開。譲渡対象も拡大し、地域猫活動の周知にも取り組んでいる。結果、2017年度に処分された猫の数は542匹。取り組み前と比べ約2000匹減少した。それでも、全国では同年度に34854匹もの猫が処分されている。


取材時期:2019年6月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

 

取材・文:大村 たかし
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Spot Information

猫処りとや

住所 山口県岩国市今津町1丁目9-22
TEL 090-1352-4580
営業時間 11:00~17:00
定休日 不定休
URL https://www.instagram.com/nekodokororitoya/?hl=ja

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