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2019/07/05 【山口】岩国

「メッセンジャーであれ」。ジャズレジェンドの言葉を胸に、6年ぶりのアルバムに込めた想い|ジャズシンガー・蔵本りささん

by 大村 たかし
防府市出身。地方新聞社で18年間記者として活動後、コーチ、カウンセラーとして独立。起業家へのインタビューやプロフィール記事の作成、書籍の編集も行っている。趣味は…

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新たな人生が始まった
心が求めていた場所へと落ち着くの
痛みや悲しみを癒して
私は前へと進みたいだけ
(「Dew Of Life」より)

山口県岩国市を拠点に活動するジャズシンガー、蔵本りささん。

2019年5月に発表した6年ぶり、2枚目となるアルバム「Dew Of Life」は、穏やかな空気のなかに幼い日々の思い出や、これからの希望、祈り……などが感じられる深みのある一枚となっています。

アルバムのことはもちろん、ジャズへの想い、地元で活動する喜び、そして、歌を通して一番伝えたいこと……。そんなことを聞きたくて、蔵本さんにインタビューしました。



錦川のせせらぎは、私の子守歌

―「Dew Of Life」。まず、アルバムタイトルでもあるこの歌に込めた想いからお聞きしてもよろしいですか?

日本語にすると「人生の雫」「命の雫」といった意味になります。悲しみや痛みを背負っていても、川が流れていつか海に辿りつくように日々を生きていこう、という願いを込めて書き下ろしました。


―川の流れ。アルバムの中には「にしきのゆめ」という歌もありますが、やはり地元の錦川がモチーフになっているのでしょうか?

そうですね。錦川の近くで生まれ育ったので、せせらぎの音は私にとって子守歌のようなものでした。「にしきのゆめ」は幼い頃にずっと側にいてくれた祖母への感謝を綴った歌ですが、祖母の歌う子守歌と錦川のせせらぎは、いまの私の原点ですね。


―おばあさんの子守歌が原点のひとつなんですね。では、ジャズはどんなきっかけで歌われるようになったのですか?

高校を卒業して、カリフォルニアにあるカレッジに留学したんです。すると、そこがとても音楽教育に熱心だったので、基本的な理論や発声法などを学ぶことができました。続いて、ニューヨーク市立大学シティカレッジ校のジャズボーカル科で本格的にトレーニングを受けたんです。

【ライブ中にバンドメンバーと談笑する蔵本さん(左) 蔵本さん提供】



その場、そのときの化学反応がすべて

―そこで才能が開花したわけですね。

いやいや。周りはプロみたいな人がいっぱいでしたが、私はジャズのジャの字も分からないど素人だったので本当に大変でした。厳しい教授にダメだしばかりされて泣いてしまうこともしょっちゅうでしたね。


―それでも歌い続けられたのは、やはりジャズに魅力があったから?

若くて、怖いもの知らずだったというのが一番の理由かも(笑)。卒業後はニューヨーク市内のレストランで1年半ほど歌っていました。

ジャズの魅力って、完成がないところだと思うんです。譜面にあるのはメロディーとコードだけだったり。あとはそのときのメンバーや会場の雰囲気などとの化学反応で無限に変わっていく。そうした即興性と、その場だけに生まれるグルーヴに、いまでも一番魅了されています。

【ライブでは、メンバーとのその場だけの化学反応が楽しめる 蔵本さん提供】


―2005年に帰国後、もう15年近く活動を続けられていますが、地元でジャズの魅力は広がっていますか?

もともとジャズ文化がほとんどない土地でしたから、最初は「何やってるの?」という目で見られることも多かったですね。でも続けていくうちにだんだんと認知されるようになって。いまはジャズボーカル教室を開いていますし、5年前に始まった「岩国ジャズストリート」も定着してきて、その楽しさが少しずつ浸透しているように思います。

【ボーカル教室で熱心にアドバイスする蔵本さん】


―蔵本さん自身は、ジャズへの想いに変化はありますか?

ジャズに対してというより、好きなことを続けていくことの大変さと、それに比例する喜びを感じます。いまは幼い二児の母親でもあるので、正直、練習の時間を確保するのも難しい。だからライブに出演する機会などをいただいたときは本当に有難く、以前にも増して、大切に、感謝を込めて歌うようになりました。



「メッセンジャーであれ」

―ジャズシンガーとして、これから目指していきたい姿はありますか?

アメリカで学んでいたとき、講師の1人にジャズ界のレジェンドであるシンガー、シーラ・ジョーダンがいました。彼女が口グセのように言っていた言葉があります。

Don’t Be A Diva, Be A Messenger.
(歌姫になるな、メッセンジャーであれ)

つまり、ただ歌うだけでなく、聞く人に何かを伝えられる人になれ。伝えるべきメッセージを持てということです。自分もそんなシンガーになりたい、と常に思っています。


―では最後に、蔵本さんがメッセンジャーとして伝えたいことがあるとすれば、それは何でしょう?

希望を持って生き続けていくことの意味、ですね。歌の内容や歌声からはもちろん、トークも含めてすべてをメッセージとして伝えたい。そんなシンガーになれたら……。

特に小中学生に伝えたいですね。学校という閉じた環境のなかで傷ついたり、悲しんだりを繰り返すうちに絶望的になってしまうこともあると思うんです。そんなときには未来なんて考えられない。私がそうだったから、よく分かります。でも、そこを生き抜いてほしい。いつか必ず、振り返って笑える日がくるから。


夜は凍てつき、夢は古びて、秘密は握られていた
でも今、光は煌めきだしたのだ
命の雫は私たちの生命を華々しく輝かせ
あなたの目に映る全ての美しいものを花開かせる
(「Dew Of Life」より)

インタビューを終えて車の中でアルバムを聴いていると、蔵本さんの言葉が雫のように僕の心を潤してくれました。


アルバム「Dew Of Life」
8曲入り 2000円(税別)


*****

蔵本りさ
TEL/050-5437-7775(ロータスプロモーション・橋本)
HP/http://risajazz.com/
BLOG/https://ameblo.jp/risas-pieces/
MAIL/risakura21@gmail.com


取材時期:2019年6月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

取材・文:大村 たかし
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