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2019/07/15 福岡

ホンモノの蒸気機関車と大鉄道ジオラマ!人と人の支え合いの大切さを伝え続けて|NPO法人汽車倶楽部・九州レイルウェイショップ

by 村野 哲郎
宇部市出身。山口銀行在籍中で、これまで山口県内外の拠点で勤務。 子供の頃から鉄道好きで、休日には「撮り鉄」「録り鉄」「乗り鉄」「模型鉄」「修理鉄」そして「呑み鉄…

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九州自動車道八幡ICから南に10分ほど車を走らせると、機関車や電車に囲まれた建物が目に飛び込んできます。そばに線路が走っているわけではないのに……鉄道ファンでなくてもチョット気になってしまうスポット。それが、今回ご紹介する「NPO法人汽車倶楽部/九州レイルウェイショップ」です。



今にも走りだしそう!保存SLに圧倒

敷地に入りまず目に飛び込んでくるのは、NPO法人汽車倶楽部代表の江口一紀さんが仲間とともに20年にわたり愛を込めて整備している蒸気機関車「59647」。

黒光りする姿や油のにおいから、今にも走りだしそうなくらい。毎月第一日曜日には保守管理を行っており、参加すると汽笛の音やブレーキの動作を実際に体感することもできます(時間帯による・要問い合わせ)。

「もともと、そんなに鉄道マニアじゃないんよ」と照れる江口さん。父親が国鉄の蒸気機関車の機関士だったことから、幼小の頃から蒸気機関車は身近な存在だったものの、時々沿線を走る姿を写真におさめるくらいだったと言います。

【普段は建設会社を営む江口さん】


江口さんの思いに火がついたのは今から20年前、直方市内の公園で静かに余生を送っていた「59647」が解体の危機に瀕していると知った時でした。満足な手入れをされることなく雨風で朽ち果てていくこの機関車の前を通る度に「何か話しかけられているような気がしよったんよ」。だから「絶対にスクラップにはさせん!」と。

この機関車、筑豊本線から蒸気機関車が引退する際に牽引を担当。江口さんの父親はその記念行事に機関士として乗務していました。その光景を間近に見ていた江口さんにとって、思い入れのある機関車だったのです。気がついた時には市役所で「何とか保存して欲しい!」と熱く訴えていました。しかし、話は思うように運ばず、「残すには自分たちでやるしかない」と、現在地に砂利とレールを敷き機関車を移設。錆び落としなど修理、修複し塗装を塗り直し、黒光りする現役当時の姿を取り戻したのでした。





伝えたいのは「支え合い、助けあい」

江口さんの思いと行動は地元でも評判になりました。近隣の小学校から「社会科見学に取り入れたい」との依頼も舞い込むようになり、敷地内に併設した模型館とあわせてこれまで、直方市内の小学校全11校の3年生児童、延べ3000名以上が見学に訪れました。

【蒸気機関車の運転方法を児童に伝える江口さん(提供:NPO法人汽車倶楽部)】

【模型館では直方機関区と直方駅周辺のジオラマを見学できる】


本物の蒸気機関車やリアルな鉄道模型ジオラマ……授業内容はさぞかし「鉄道愛」に溢れたものに違いない。そう思っていると、江口さんから意外な言葉が返ってきました。

「子供たちに伝えてるのはね、人間関係、『人と人との関係』なんよ」

「蒸気機関車は、運転する人と石炭をくべる人が乗務する。2人が運転席の左右に座り、『右ヨシ!左ヨシ!』と声をかけあう。圧力計を見ながら、蒸気を『アケル!シメル!』を確認しあう。2人が力を合わせないと蒸気機関車を動かすことができない、そして目的地についたらお互い『お疲れさん!』と労をねぎらうんよ」。つまり「運転する人と石炭をくべる人がお互いを信頼し、さらには石炭や水を積む人、合図を出す人などが協力し合わないと機関車を動かすことができない。人と人が協力しあい、理解しあう大切さを蒸気機関車が教えてくれる。このことを子供たちに伝えとるんよ」と。

【チョッとした遊び心に、思わず(笑)】



古き良き時代を、次世代へ……

江口さんは「59647」の修復・保存活動を皮切りに、これまで市内外の公園等で保存されていた蒸気機関車延べ9両を修複(一部は移設も実施)。現在も、行橋市内に保存されていた「D5110(デゴイチ)」を汽車倶楽部に移設し、有志と一緒に修複作業を行っています。

【行橋市内からに移設したD5110】

【仲間と修複に汗を流す江口さん(左)】


江口さんは活動への思いを緩めるつもりはないようです。これからの目標を江口さんにお聞きしました。

「鉄道を通じて歴史や文化をみつめ、ひとりでは何もできないことや、助け合い・支え合う大切さを伝えたい。そのために『鉄道資料館』を整備し、多くの人たちが憩う場所を作ることが我々の夢です。古き良き時代とその時代を生きた人の思い、連結器のように一度繋がったら離れない強い“絆”を、次世代へ繋いでいきたいと思っています」


<NPO法人汽車倶楽部による蒸気機関車修復/保存活動の実績>
・59647号機(1999年移設、毎月保守管理を実施中)
・C61形18号機(2003〜2005年、前頭部のみ保存)
・D51形225号機(2006年、毎月保守管理を実施中)
・D60形61号機(2011〜2012年、偶数月に保守管理を実施中)
・コッペル32号機(2012年、奇数月に保守管理を実施中)
・C11形260号機(2012〜2013年、偶数月に保守管理を実施中)
・29612号機(2014〜2015年、大分・玖珠町へ移設)
・D51形10号機(2017年移設、現在修復中)
・C11形131号機(2019年、奇数月に保守管理を実施中)


取材時期:2019年5月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。
 

取材・文:村野 哲郎
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Spot Information

NPO法人 汽車倶楽部 九州レイルウェイショップ

住所 福岡県直方市大字頓野550-1
TEL 0949-26-9600
営業時間 12:00~18:00(日、祝日10:00~18:00)
定休日 毎週木曜日
URL http://www.kisyaclub.gr.jp

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