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2019/07/22 【山口】周防大島

島の新鮮フルーツをふんだんに。25年貫き続ける「素材へのこだわり」|大島スイーツ工房ゆーたん

by 大村 たかし
防府市出身。地方新聞社で18年間記者として活動後、コーチ、カウンセラーとして独立。起業家へのインタビューやプロフィール記事の作成、書籍の編集も行っている。趣味は…

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山口県周防大島町。海沿いの国道を東へ走ると、赤と白で彩られたお店が目に入ってきます。

「大島スイーツ工房ゆーたん」


扉を開けると、ずらりと並んだオレンジ色のバームクーヘンが目に飛び込んできました。「なつみバームクーヘン」

なつみ(南津海)は、周防大島生まれの柑橘。高い糖度の濃厚な味が特徴で、5月から7月が食べごろの晩柑です。



島ならではの新鮮素材をふんだんに

「希少な地元の特産品。この美味しさをたくさんの人に伝えたくて」と、オーナーの伊藤裕子さん。バームクーヘンのほか、なつみを使ったロールケーキ、プリン、ゼリー、クッキーなどもあります。この日はなつみのキャンディーロールをいただきましたが、柑橘と生クリームが調和した、独特の「さわやかな甘さ」が口の中に広がりました。

なつみに限らず、イチゴ、ブルーベリー、キウイなど、商品に使うフルーツの多くは、地元の農家から伊藤さんが直接仕入れています。

「無農薬、低農薬、使いやすいサイズ……。生産者の方に、こちらの様々な要望を聞いてもらえるのでとても助かっています。新鮮な素材が豊富に手に入ること。生まれ故郷のこの島でお店をやっていて感じる一番の喜びは、そこですね」

2010年に周防大島で開業して、9年。パティシエとして独立してからは25年以上のキャリアを持つ伊藤さんですが、「最初は料理人を目指していた」といいます。

調理師専門学校で知識と技術を磨き、卒業後は神戸市にある一流ホテルのレストランに就職。ところが、「料理人として採用されたのに、入ってみるとスイーツの部門に配属されたんです」

最初は「私は料理がしたいんだけど……」と思っていた伊藤さんでしたが、次第に魅了されていきました。

「無数の食材を扱う料理の世界と違って、スイーツは基本的に、卵、砂糖、バター、小麦粉の4つで作っていきます。限られた素材だけで、こんなにも多様で、しかもいろんな形のスイーツが生まれていく。そこが面白くて」

ホテルでのパティシエを4年間勤め、独立。1993年、山口市で「洋菓子工房ゆーたん」を開業します。そして2010年、かねてからの念願だった古里でUターン起業を果たしました。



苦戦しても貫いた「素材へのこだわり」

しかし、地元では当初、なかなかお客さんが定着せずに大変だったといいます。「『高い』と言われることが多くて。でも、ここで妥協したら、今まで応援してくれたお客さんを裏切ってしまうことになってしまう……」。葛藤を抱えながら、伊藤さんは独立後ずっと守り続けている信念を貫きました。

伊藤さんの変わらぬ信念。それは、素材へのこだわりです。

・平飼いの有精卵
・鹿児島県産サトウキビ100%のきざら糖
・無農薬栽培の国産小麦粉
・山口県産の牛乳

「やっぱり、自分が安心して食べることができて、美味しいと思えるものを提供していきたいので」

ただ、そうするとどうしても、それなりのコストが掛かります。

素材のクオリティを保ったまま、価格を少しでも抑えるために、サイズを変えるなどの努力を重ねていきました。そのうち「ものの良さ」が分かる人が一人、また一人と増え始め、ファンもつき始めます。石の上にも三年と言いますが、「そこまで行くのに4~5年ほど掛かりました」。いまでは、山口市時代のお客さんが、わざわざ買いに来てくれることもあるとか。「このスタイルを貫いてきて、本当によかった」と伊藤さんは笑顔を見せます。

最近はお菓子作りだけでなく、日替わり弁当の販売も始めました。

地元で採れた野菜や魚などを使い、家庭の味を心がけた素朴な味が人気で、50食分が毎回ほぼ売り切れるそう。

「コンビニ弁当ばかりじゃ、どうしても皆さん、飽きてしまうでしょうから」

お菓子と弁当。調理、盛り付け、店頭での販売、翌日の仕込み……。午前4時前に起き、午後10時~11時まで働く毎日が続きます。

「確かにハードだけど、楽しいんです。やっぱりお客さんに喜んでいただけると、嬉しいですからね」

【店内にはイートインスペースもあり、家族連れやライダーに人気】



「私がおばあちゃんになっても」

最後に、これまで四半世紀に渡って走り続けることができた理由について尋ねました。

伊藤さんは、それまでと変わらない柔らかな表情で「謙虚さだと思いますね」と。

「長くやっていると、どうしても凹んだり、落ち込んだりすることもあります。ときにはくしゃっとした気持ちになることも。でも、どんなことも神様からのメッセージだと捉えて、常に謙虚な気持ちを心がけてきました。たぶん、それがここまで続けられた一番の理由だと思います。このまま、おばあちゃんになっても作っていきたいですね」

飽きることのない優しい味。それを生み出す素材の素晴らしさと、伊藤さんの謙虚さ。実は筆者は、10年来のゆーたんファンです。というのも、市販のケーキなどを食べるとちょっと頭が痛くなってしまうことがあるのですが、ゆーたんのスイーツでは、これまでまったくそういう経験がないから。今回の取材で、その秘密の一端が分かった気がしました。

取材時期:2019年6月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

取材・文:大村 たかし
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Spot Information

大島スイーツ工房ゆーたん

住所 山口県大島郡周防大島町土居1478-1
TEL 0820-73-0544
営業時間 10:00~18:00
定休日 木曜日

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