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2019/08/05 【山口】柳井

野菜は面白い!「野菜ソムリエ上級プロ」が誘う多彩なベジタブルワールド|柳井さつきさん[さつきカフェ]

by 大村 たかし
防府市出身。地方新聞社で18年間記者として活動後、コーチ、カウンセラーとして独立。起業家へのインタビューやプロフィール記事の作成、書籍の編集も行っている。趣味は…

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甘みを感じるニンジンのサラダ、じんわりと身体に染み入るようなダイコンの煮物、ほのかな香ばしさが口の中に広がる焼きナスとかつお節の和え物……。

山口県柳井市、JR柳井駅前にある「さつきカフェ」。波佐見焼の皿や小鉢に盛られた品々は、いずれも素朴だけど、いつまでも食べていたくなるような「温かみ」を感じるものばかりです。

「基本、薄味なんですよ。できる限りその野菜が持っている美味しさをそのまま味わってもらいたいので。だから、テーブルにお塩やお醤油などの調味料は一切置いていません」

そう語るオーナーの柳井さつきさんは、山口県内に2人だけという「野菜ソムリエ上級プロ」の1人。「ソムリエ」とつくからには、ワインのそれのようにかなりの専門知識を披露されるのかと思いましたが、まったくの思い過ごしでした。



ダイコンのひげ根?

「野菜っていうと、すぐに栄養とか、健康志向とか、そういう話になりがちですよね。でも私は野菜の面白さを伝えていきたいんです」

野菜の面白さ……。野菜を「面白い」とか「面白くない」という感覚で捉えたことがない筆者にとっては、まったく新しい視点でした。

「例えば」と柳井さん。「ダイコンのひげ根って、どんなふうに生えているか知っていますか?」

……ひげ根の生え方?これまでの人生で特にひげ根に着目した経験がなく、答えようがありません。

「そうでしょう。そういう部分から入ると、野菜ってすごく面白いんです。小学校でこの質問をすると、『じゃあニンジンとの違いは?』とか『サツマイモはどうなっているんだろう?』って、子どもたちの興味や関心がどんどん広がっていくんですよ」

そこから野菜そのものへの見方が変わり、食べることが楽しみになってく。それが自然と「食育」や「健康」に繋がっていく、と柳井さんは考えています。

確かにそのほうが、「栄養が……」などと言われながら、「食べないといけないもの」として口にするより楽しいし、美味しいはずですね。



「これなら、食べられる!」で涙

柳井さん自身、2005年に「主婦の経験を生かして、何か食の資格を取ろう」と軽い気持ちで「日本野菜ソムリエ協会」の講座を受け、その多彩な魅力のとりこに。その奥深さを伝えたいという一心で、講演やラジオ出演、調理指導、執筆活動などを続けています。

10年ほど前に調理実習に訪れたある小学校では、こんなことも。

その日の課題は「ナスのジャムづくり」。すると児童の中に、人一倍積極的に動いている男の子が。実はその子、ナスが大の苦手で普段はまったく食べられないとか。だから「せめて調理だけは」と思って懸命にやっていたそうです。

でも、出来上がったジャムを試しにひと口だけ味わってみると「美味しい!これなら僕、食べられる」と本人もびっくり。その日は参観日で、その子が食べ始めたとたん、教室の後ろで一人の女性がボロボロと泣き始めたそうです。「きっとその子のお母さん。食べられるようになって良かったなって、私も本当に嬉しかった」と振り返ります。

カフェは2018年9月にオープン。「人が集まり、食べて楽しめる場をつくりたくて。人の輪の中に新鮮な野菜料理がある。そんな空間にしていきたいと思っています」



世界一好きな「りんごのような、ごぼう」

では、柳井さん自身が一番好きな野菜は?そう尋ねると、

「美東ごぼう!」

と即、答えが返ってきました。

美東ごぼうとの出会いは数年前。「収穫体験に参加したときのインパクトが、あまりに強烈だったんです」。

カルスト台地の粘土質の畑から掘り出したばかりのごぼうを、生産者の人から「食べてみる?」と手渡され、まだ少し泥の付いたものを恐る恐るかじってみると……

「りんごの味がしたんですよ。シャキシャキしていて、甘かった。もう、本当に衝撃を受けて」。以来、柳井さんにとって「世界一好きな野菜」に。

ごぼうについて嬉しそうに語る柳井さんの表情を見ていると、筆者もちょっと泥がついたままでかじってみたくなりました。



ブランド戦略チーム発足

「美東ごぼうに限らず、本当に美味しくて、面白い野菜が地元にはたくさんあるんです」

そう話す柳井さんがカフェ運営と合わせ、これから力を入れていきたいのが「山口県産野菜のブランド化」。デザイナーとタッグを組んで、昨年「農産物ブランド戦略専門家チーム」も立ち上げました。

「野菜のロゴやパッケージ、ホームページなどをつくって、素晴しい野菜をつくられている生産者をサポートするのが目的です。私は野菜ソムリエとしてのこれまでの活動で培った人脈などをフルに生かして、販路拡大のアドバイスなどをお手伝いしていきます」

そうした活動を通じて柳井さんが目指す最終目的地は、農業の後継者育成です。

「ブランド力が高まれば、その方のつくった野菜の単価が上がり、収益アップへと繋がっていきます。そうなれば、『農業をやってみよう』という若者も増えていくはず。そのようにして、将来的な農業振興の種まきをしていきたいですね」

****

野菜ソムリエ

「日本野菜ソムリエ協会」が発行する民間資格。同協会によると、野菜・果物の知識を身につけ、その魅力や価値を社会に広めることができるスペシャリストを指す。有資格者は全国に約50000人。うち、柳井さんと同じ「上級プロ」は約140人。

 

取材時期:2019年6月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

取材・文:大村 たかし
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Spot Information

さつきカフェ

住所 山口県柳井市中央2丁目17-12
TEL 080-1923-2241
営業時間 11:30~17:00、金曜・土曜11:30~14:00、18:00~22:00
定休日 水曜・木曜(営業の場合あり)
URL http://satsuki-cafe.com/

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