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2019/07/26 【山口】長門

【対談|百姓庵・井上雄然×山口銀行・吉村猛】百姓と地方銀行のコラボで生まれた、百の仕事を地域に生み出す新たな挑戦|Dining Bar Zen

by 藤本 雅文
東京都出身。広告制作会社と編集プロダクション勤務ののち、4年前に山口県・周防大島へ移住。現在、フリーの編集者・ライターとして、広告や出版物などの企画・編集・執筆…

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令和元年7月29日、山口銀行油谷支店が新しく生まれ変わる。銀行としての機能を残したまま、地域の食材をお酒と一緒に楽しめる「Dining Bar Zen(ダイニング バル ゼン)」が併設オープンする。タッグを組むのは油谷湾で塩づくりを中心に地域ビジネスを展開する百姓庵。高齢化・過疎化をはじめ様々な課題に直面する地方において、地元起業家と地方銀行の生き残りをかけた新たな挑戦が始まろうとしている。

今回、株式会社百姓庵・井上雄然さん(代表取締役)と株式会社山口フィナンシャルグループ・吉村猛さん(代表取締役社長)のお二人の対談が実現。オープンを二週間後に控え改築が進む油谷支店で、本事業にかけるそれぞれの思い、今後の展望を伺った。


−まず、「Dining Bar Zen」とはどんなお店なんでしょうか?

井上
いわゆるスペインBAR(バル)です。自分たちが作る塩、野菜、お米、地元で獲れる魚介を美味しく食べていただきたい。素材本来の味をそのまま楽しんでいただきたいという思いがあり、シンプルなスペイン料理が合うと考えました。

吉村
油谷エリアがスペインに似ているということはないんですか?

井上
環境はすごく似ていますね。

吉村
というのも、はじめにスペインBARと聞いて、なるほどな〜と思ったんです。

井上
特にスペイン北部のバスク地方はBARばかりがあるエリアなんですが、料理がシンプルですごく美味しい。環境がほぼ同じなので、獲れる食材もよく似ています。

【百姓庵・井上雄然さん】


吉村
料理は百姓庵さんの塩で?

井上
それらをベースにアソート塩を作っているので、それで食べていただこうと考えています。ガーリックソルトやバジルソルトなど、それが今、30種類ありまして……その中からお客様に選んでもらって、というスタイルです。

吉村
30種類もあるの!すごいですね。最終的にお客さんが自分の好みに合わせて味付けするってこと?

井上
そうです。それぞれのテーブルで、「これが合う」とか会話や団らんが生まれるといいなと。

吉村
なるほど、お客さんがシェフになるんですね。

井上
はい。よく料理人はどうされるんですか?と聞かれるんですが、基本、焼く、煮る、蒸す、揚げるというシンプルな料理を考えています。それも、素材に自信があるからです。百姓として料理をする前に料理をしている気持ちがあって……種を蒔いた時から、土作りから料理は始まっていると思っているので。
お店の名前「Zen」には、自然の恵みをそのままいただく「然」、無駄を削ぎ落とすことで大事なものが残る「禅」などの思いを込めています。enは「縁」で、いろんなご縁をつなぐ場所になれたらと思っています。

吉村
「禅」は禅宗の「禅」ですよね。マインドフルネス。

井上
そうです。無駄なもの、余計な華美を取り除くことで、シンプルイズベストを突き詰めたお店にしたいと思っています。

吉村
実は、銀行も同じなんです。

井上
どういうことですか?

吉村
ここの支店は無駄なものを全て削ぎ落として、本当に必要な金融機能だけ残すというコンセプトで作られています。事務はATMで、相談窓口が一つ。バックヤードもありません。銀行の機能として究極の姿なんです。
無駄なものを削ぎ落としたBARに、無駄なものを削ぎ落とした銀行。全く同じコンセプトの二つの店舗が同居するんだなと、今、思いました(笑)

井上
なるほど。これもご縁ですね(笑)

【山口フィナンシャルグループ・吉村猛さん】


−そもそもどういった経緯でこのご縁は繋がったんでしょうか?

吉村
以前から中山間地の支店をどうするか?という課題を抱えていました。メガバンクが地方の店舗を減らすという方針を打ち出す中、地方銀行としてどうするべきかを話し合い、山口銀行はお客様との接点であるお店は極力減らさず、最後の最後まで頑張ろうと決めました。ですが、銀行だけじゃ経営が成り立ちません。そこで地域の事業者とタッグを組んで、地域の役に立つ機能だったり、必要なお店だったりを併設できないかとずっと考えていたんです。油谷支店もその一つで、油谷支店長と百姓庵さんに訪れたのが最初のきっかけです。

井上
最初はカフェに、という話でしたよね?

吉村
そう、最初はカフェ。油谷支店長をマスターにして、百姓庵プロデュースで美味しい珈琲を出せないかと思っていた。支店長には実際にバリスタの資格まで取ってもらったり(笑)

井上
お話を聞いて面白い試みだなと思いました。ただ、カフェだと採算が取れないだろうなと。しばらくしてプロデュースではなく、経営を打診され、であればとスペインBARを構想したんです。

吉村
びっくりしました。その発想は全くなかったので。

井上
最初は無理だろうなと思いました。言ったはいいものの、銀行でお酒が出せるのだろうか?と(笑)

吉村
そうそう、僕もすぐに聞きました。当局に確認した?って(笑)……そうしたら、OKだと。銀行にいると、この発想はまず出ないですね。

井上
「好きなようにやっていい」と言っていただいていたので。それに、お店だけでなく、自分のやりたいことがこの場所ならできるかもしれないと思ったんです。

吉村
というと?

井上
ずっと経営者が生まれる環境を作りたいと思っていたんです。地域が存続するためには、僕ら一社が頑張ってもどうにもならない。油谷を盛り上げようという人が起業して、雇用を生みながら、みんなで地域を支えていく。そうしないと、立ち行かない状況まで来ているので。僕がここに移住してきた十数年前は、耕作放棄地も空き家もまだ少なかった。それがここ10年で、急速に廃れていってます。過疎化が進むことで害獣被害が増え、農業離れに拍車がかかってる。保育園や学校の統廃合も深刻で、うちの子供がちょうど通っている時に保育園がなくなりました。今、通っている小学校もこのままだと存続が難しい状況です。こうした中で、どうやったらこの地域が存続していけるか?それを5年前ぐらいから真剣に考えるようになりました。

吉村
うん、うん。

井上
それまでも移住者を増やす活動はしていて、述べ150人ぐらいを受け入れ、実際に十数組が移住してくれました。ただ結婚して子供ができると経済的な問題に直面する。それで出ていってしまうということが何度も起こったんです。そこでまず雇用できる体制を作ろうと二年前に百姓庵を法人化しましたが、僕らだけでは限度があります。仲間を増やして、地域ビジネスを横に広げていく。そのための場所づくりが山口銀行さんと組むことでできるんじゃないかと思ったんです。

吉村
二階がそのスペースになるってことですよね。

井上
はい、二階はそのためにフル活用する予定で、同時進行で今、プロジェクトを走らせています。事業を起こす時って、同じ問題意識や思いを共有できる仲間がいるか、思いついた時にすぐに動けるかが大切です。ここがそういう人たちが集える場所になって、いいビジネスプランが生まれたら、すぐ融資の相談にいける。油谷支店長にもときどきカウンターに入ってもらう予定なので、酔った勢いでも(笑)そういう意味でもこのBARという形態に可能性を感じています。

吉村
どんどん使ってください(笑) 地方銀行として地域ビジネスを生むこと、その環境づくりは使命だと思っています。井上さんと出会う前は、起業家を育てるインキュベーションセンターにする計画もあったので、本当にありがたいことです。


−今後、どんな地域ビジネスが必要とされると思いますか?

吉村
僕は、「地域」「地方」と名のつくものは全て成長産業だと思っているんです。人口の多い東京でビジネスを成立させるモデルはもはや必要なくて、人口が少なくいろんな不足がある地域の中で光るものを見つけてそれをビジネスにしていく。そうしたことの方が今後、世界中いたるところで必要となってくるロールモデルになりうるし、将来性があると思います。地方で起業するような仕掛けづくりをこれからもどんどんしていきたいですし、何よりそこまでハードルが高くないってことを伝えていきたいですね。

井上
今後、ビジネスの仕方はすごく変わっていくと思うんです。人口減少もありますし、AIがいろんな職業を奪っていくのは間違いないことなので。ただ人間の領域って奪えない領域がたくさんあるので、そこにフォーカスしていけることが地方の強みじゃないかと。また、一つに特化するより複合型経営で並行的にいろんな仕事をしていくことが大切になると思います。地方は自然相手の仕事が多いので、天候にかなり左右されてしまう。どれかがダメになったとしても、どれかが生き残る。カバーしあって、助け合える状態にしておく必要があります。
そもそもカンパニーの語源は「一緒にパンを食べる仲間」です。糧を作って、その糧を分け合い、食べる。その原点に立ち返って、「自分たちが食べたいものは何か」「何をすれば豊かに感じるか」をシンプルに追い求めていけばいいと思っていて、そうしたカンパニーが今後伸びていくだろうなと思います。

吉村
複合型経営は地方銀行もそうで、これから銀行業だけをやっていては間違いなく衰退していきます。地域経済が落ち込む中で今までと同じことをやっていてはダメで、地域にどんどん入っていっていろんなビジネスを模索する必要があります。百姓庵さんとのコラボもその一つですが、いろんなパートナーと一緒に考え、地域経済が活性化する方法を見つけていきたいですね。いずれは社員が地域ビジネスを起こして独立するような会社になってほしいと期待しています。

井上
山口銀行は、副業はOKなんですか?

吉村
副業は解禁になっていますので、OKですよ。

井上
ということは、他の支店を山口銀行の社員さんが使って起業ということも考えられますね。

吉村
もう、大歓迎です。以前、窓口の社員にネイリストをやりながらお客様の相談を受けてはと提案したことがあったんですが、冗談だと思われたのか相手にされませんでした(笑)

井上
面白いですけどね(笑)吉村さんがやるとしたら、何をやりますか?

吉村
聞く、それ?

井上
はい(笑)

吉村
うーん、そう言われるとな〜。ペットショップ(笑)

井上
いいじゃないですか(笑)

吉村
真面目な話、僕はここ「Dining Bar Zen」のようなモデルが理想だと思っているんです。こうした取り組みを次の世代に残していきたい。吉村は何をやったんだ?と聞かれたら、胸を張って「Zenです!」と答えるつもりです。こう言うとプレッシャーかけてしまうかもしれないけれど、フラッグシップ店として本当に期待しています。

井上
ありがとうございます。「百姓」って農家のイメージですが、元は百の仕事をする人ってことなんです。この場所から百の仕事を地域に生み出せるよう、頑張ります。




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取材時期:2019年7月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

取材・文:藤本 雅文
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Spot Information

Dining Bar Zen

住所 山口県長門市油谷新別名駅通960-4
TEL 0837-32-1560
営業時間 月・火・水:11:00~17:00、金・土:11:00~22:00、日:11:00~21:00
定休日 木曜日
URL http://hyakusho-an.com

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