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2019/08/16 【山口】岩国

わざわざ行きたくなる! 里山の光や風がつくる「身土不二」なパン|パンと農園 種と土

by 大村 たかし
防府市出身。地方新聞社で18年間記者として活動後、コーチ、カウンセラーとして独立。起業家へのインタビューやプロフィール記事の作成、書籍の編集も行っている。趣味は…

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川ぞいを遡り、小道に入って、山あいの小さな集落を抜け、「さすがにこれは、道を間違ったんじゃんないか……」と不安になりかけたころに、そのパン屋さんは姿を現します。

「パンと農園 種と土」

築100年余りの古民家を活用した店舗は、見落としてしまいそうなほど周囲の里山の景観に溶け込んでいます。

ごまチーズ、黒糖クルミ、カボチャロール、塩バターパン……。まるで「田舎のおばあちゃんち」のような建物に入ると、多種多様なパンたちが出迎えてくれました。



その地域で採れた旬の食物が、一番いい

「種と土」のパンは、その建物と同じく「土地に根ざした」素材を使っているのが特徴です。

ベースに流れているのは、その地域で採れた旬の食物が、一番身体に適しているという「身土不二」の哲学。小麦粉は山口県産の「せときらら」を軸に、すべて国産のものを使用しています。塩は長門市の「百姓庵」が海水から作るミネラル分豊富な天然塩。砂糖も沖縄産黒糖や種子島産粗製糖です。

そして、すべてのパンに使われているのが「あこ天然酵母」。麹菌入りのため、素材のうまみを感じるパンに仕上がるそうです。「素朴だけど、噛むほどに美味しくなっていく。だから毎日たべても飽きがこないんです」と、チーフベーカーで、天然酵母パン研究家でもある五十嵐九重(いがらし このえ)さんが教えてくれました。

【チーフベーカーの五十嵐さん】



「おばあちゃんの野菜」も

「身土不二」。その思いがもっとも色濃く表れているのが、「ベジフルトースト」です。ナス、ラディッシュ、プチトマト、ニンジン、シシトウ、ビーツ……など、季節ごとに変わる豊富なトッピングは、すべて店舗近くの自社農園と、「スタッフのうちのおばあちゃん」が栽培しているものばかり。

「どれもほぼ無農薬なので、安心です」

五十嵐さんの話すとおり、焼きたてをいただいてみると、野菜それぞれの濃厚な味が主張の強すぎないパン生地と調和して、スッと身体に馴染んでいくように感じました。

五十嵐さんの指導のもと、工房では発酵や成形、盛り付けなどスタッフの方たちがてきぱきと動いて、次々と焼き上げていきます。

その間にもお客さんは途切れることなく訪れ、お気に入りのパンをトレーに載せていきます。持ち帰る人もいれば、イートインスペースで一休みする人も。

和室を板の間にリフォームしたイートインスペースは、窓を全面開放。里山の景色を眺めながらひと口ずつゆっくりと食べていると、「この土地、風、光に育まれたパンなんだ」としみじみ味わうことができました。

【イートインスペース。風や光を感じながらパンを味わえる】



人という種を、この土地で育てる

「種と土」は、スキンケアメーカー「あきゅらいず」(東京)のグループ企業「株式会社 土」(岩国市)が、「田舎を新しい切り口で面白くしよう」とのコンセプトで運営。店舗名には「人の才能やスキルという種を、その土地に根を下ろして育てていく」という思いが込められています。

五十嵐さんは、東京で国産小麦、天然酵母のパンづくりを30年ほど続け、国際薬膳師の資格も持つ本格派。2015年、「種と土」のオープンに合わせて移住してきました。それまで、岩国市にも、山口県にもまったく縁がありませんでしたが、「東京に戻りたいとは一度も思ったことがない」と言い切ります。

「確かに東京には刺激がたくさんあるけど、大きく括ると、どれも似たり寄ったり。でも、ここは東京にないもので溢れています。まず、空が広い。そして空気が違います。水も美味しい。山々の緑を見ながら働けるなんて、ほんとに贅沢ですよ。こんなところにこんな花が咲くんだ……とか、日々新しい発見に満ちています」

【店舗前の風景。丸太を切った椅子に座ってパンを食べることもできる】


自然豊かな環境、素材へのこだわり、薬膳の考え方などが注目を集め、パンの通信販売事業が少しずつ人気に。月に一度の配達を北海道から九州のお客が待っているそうです。

長いキャリアと専門知識から生み出される「種と土」のパン。でも「難しいパンにはしたくないんです」と五十嵐さんは語ります。「誰が作っても同じように美味しくできる。それが理想ですね。私にとってパンは個性の表現手段ではないので。いいものを、できるだけ作りやすく。そのようにして、これからは後に続く種も育てていきたいですね」

取材時期:2019年7月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

取材・文:大村 たかし
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Spot Information

パンと農園 種と土

住所 山口県岩国市竹安415
TEL 0827-93-4798
営業時間 毎週土・日・月曜(7,8月は土・日のみ)、午前9:00~15:30
URL http://tanetsuchi.com/

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