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2019/09/02 【山口】山口

花は、愛と祈りそのもの。200%の想いを込めて会場を彩る|岡静風さん(フラワーアーティスト)

by 大村 たかし
防府市出身。地方新聞社で18年間記者として活動後、コーチ、カウンセラーとして独立。起業家へのインタビューやプロフィール記事の作成、書籍の編集も行っている。趣味は…

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結婚式の披露宴や、パーティー、会議、式典……。そうした会場には、必ず花が飾られています。山口市を拠点に活動するフラワーアーティスト・岡静風(じょうふう・花名)さんは、そんな「会場装花」のプロ。専属契約している湯田温泉のホテルで、新郎新婦の希望するイメージを花で具現化し続けています。岡さんが運営する「スタジオ静風 カフェレジスガーデン」(山口市矢原町)にお邪魔して、花に寄せる想いについて聞きました。

【スタジオ静風 カフェレジスガーデン】



会場装花の制作は、ライブそのもの

―いろんな会場で飾られている花を見かけますが、それがどういうふうに作られているのか、恥ずかしながらまったく考えたことがありません。岡さん自身は、会場装花というものをどのように制作されているのでしょうか?仕上げるのにどの程度の時間が掛かるのですか?

ブライダルの会場装花の場合、披露宴が日曜日なら、最終デザインをもとに3日前の木曜日に、金曜市場の品を予約し買付けます。それを披露宴前日に会場で4~6時間かけて作品として仕上げていきます。先日の披露宴では2,500本以上の花を使いました。それほどの規模になると、はさみを使いすぎて親指の付け根が擦れて、人差し指にはマメができてしまいます。

【披露宴会場にセッティングした花々 岡さん提供】


―手袋はしないのですか?

指先や手のひらからは、言葉にならない微細な感覚が伝わってきます。それは花を扱う上でとても大切なもの。だから真冬でも常に素手で行っていますね。


―かなり神経を使うお仕事のようですね。

ええ。花々はもちろん美しいのですが、それを取り扱うには覚悟がいります。神経や精神力だけでなく、体力もアスリート並みに使いますね。制作中はずっと立ちっぱなしですから。ブライダルの仕事が終わると、いつも体重が2キロほど落ちるんです。集中力が高まっているので、食欲がなくなってしまうというのも理由ですけど。朝コーヒーを飲んだだけで、気がつくと夜の10時まで何も口にしていなかった、なんてことも珍しくありません。


―ゾーンに入って、一気に走り抜ける。まさにトップアスリートの世界ですね。

そうですね。別の言い方をするなら、ライブコンサートのようなものです。花はまさにライブ、生ものですから。制作中に輪の大きさが違っていたとしても、瞬間的に全体のバランスを考えて調整していく必要があります。例えば絵画や陶芸作品なら、気に入らなければ外に出さなければ済みますが、会場装花はそうはいきません。とにかく、当日までに完璧な作品を作らなければなりませんから。セッティングが終わるまでは、ずっと緊張状態、ぶっつけ本番が続くのです。

【テーブルのキャンドルを彩るバラなど 岡さん提供】



心・技・体で、宇宙を表す

―デザインは、どのようにして決められるのですか?

新郎新婦からお話を聞いて、お二人のイメージを具現化していきます。


―花のイメージ?こんなふうに飾ってほしい、という希望を、みなさんお持ちなのでしょうか?

いえいえ。ほとんどの場合、はっきりとしたイメージをお持ちではありません。なので、たとえば「バラが好きですか?」とか、「赤い花はどうですか?」といったシンプルな質問をしながら、お二人から感じ取った人柄や雰囲気、魅力などの内面を、花で表現していきます。


―最も大切にされている考え方や、在り方はなんでしょうか?

「自然体」ですね。花は、一輪一輪が自然そのものなんです。その美しさを壊さないようにデザインすることがもっとも大切だと考えています。組み合わせによっては、それが死んでしまうこともあるので。どんな小さな花でも、その花が持つ自然体の美しさを生かしていきたいと考えています。

私のベースは、華道です。華道では心と技術と体得がひとつになったとき、「妙」を持つ花が活けられると考えます。妙とは、平たく言うなら宇宙のこと。そのようにして培った華道の美意識の上に、西洋のフラワーアレンジメントを加えて会場装花を作っています。

【花嫁さんのウエディングブーケ 岡さん提供】


―そもそも、どうして花の世界に入られたのでしょう?

華道は小学生から中学生までの間、ずっと習っていました。20歳から31歳までは、子どものころとは別の流派で学びました。社会に出た当初は、FM京都や「ぴあ」などで広報やイベントプロデュースを担当していましたが、1996年に山口に戻ったことをきっかけに、フラワーアーティストとして活動を始めたのです。県内だけでなく、北九州や東京など8教室ほど持っていました。


―ブライダルは、そのときから?

2001年から受けていましたが、いまのホテルの専属となったのは2009年からです。


―何がきっかけだったのでしょう?

実は、フラワーアーティストとして活動を始めた当初から、その源泉はあったんですね。1996年6月、初めての個展に向けて花を生けているときに、心の奥底から湧き上がってきた言葉があったんです。それは「祈り」でした。



「祈りとは、愛である」

―「祈り」ですか……。それは、何に対しての祈りなのでしょう?

何に対してというものではなく、これはただ、本当に直観的なものだったんです。さらに、「祈りとは愛である」と。そして、花を生けるという行為は、愛であり、祈りそのものだと感じるようになったんです。


―そうした言葉というか、思いが、直観的に湧き上がってきたんですね。

ええ。そのとき以来、それが私の中での活動のコアとして変わらずあり続けています。そうした想いのもとで個展を続けていると、2007年に宇宙観まで表現するに至ったんです。そのとき「ああ、自己表現はもうやり切った。これからは本格的にオーダーメイドを受けていこう」と決めたのです。


―そこで、どうしてブライダルになったんでしょう?

結婚式や披露宴会場には当然、愛がありますよね。そして、二人の幸せを願う人たちの祈りで満ちています。


―なるほど。先ほどの直観そのもの。岡さんのコアな思いと一致するのですね。

そうです。ブライダルの会場装花なら、私のすべてを出し切ることができるのです。

【ドライリーフとバラを組み合わせた作品 岡さん提供】


―個展アーティストとしての活動と、オーダーメイドでの会場装花の制作。岡さんにとっての一番の違いは何でしょうか?

厳しさ、ですね。あくまで自分の中でのものですが。新郎新婦にとって、一生に一度のもっとも晴れやかな舞台を、花で彩らせていただくわけですから、当然ながらミスは許されません。100%どころか、200%完璧でなければならないと考えています。生半可ではできません。本当に、1回1回、命がけで取り組んでいます。ギャランティーをいただくとは、そういうことだと考えています。


―そこまでの真剣度で挑まれるなら、「専属」という形でないと難しいかもしれないですね。

そうですね。空間演出とテーブルコーディネートも受け持っているので、仮に会場の規模、空気感、ホテル側スタッフとのコミュニケーション度合いなどが毎回違うと、それだけでエネルギーが削られてしまうでしょうから。200%のパフォーマンスを出すには、専属という形が最適だと感じています。


―これからの目標はありますか?

私は、目標というものは持っていません。ただ、常に自分を磨き続けていきたい。愛と祈りを込めて、目の前の花に触れ、静かな風が吹き渡るような作品を作っていきたいと願っています。


取材時期:2019年7月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

取材・文:大村 たかし
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Spot Information

スタジオ静風(お花教室) カフェレジスガーデン

住所 山口県山口市矢原町13-5 MAISONひまわり1F
TEL 083-932-5905
営業時間 11:00~21:00(水曜は15:00まで)
定休日 月曜(祝日の場合は営業)
URL https://hiro5336.wixsite.com/regisgarden

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