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2018/08/07

【発見!ヒットのつぼみ】山口県生まれの地ビールで乾杯

by 山田 祐一郎
日本で唯一(※本人調べ)のヌードルライターとして活動。現在、主に飲食関連の専門誌、雑誌、情報誌、企業のホームページ、会社案内などを手掛ける。著書に福岡発・福岡初…

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岩国生まれの兄弟による
地ビール造りへの挑戦

透明なカップに金色の液体がとくとくと注がれると、辺りに、軽やかで、フルーティな香りが広がりました。純白の泡を持ち上げながら、カップの中で容積を増やしていく金色。ゴクリ、思わず喉が鳴ります。


そんな欲望の膨らみなどは一切お構いなしに、その液体はカップの中で嵩(かさ)を増していきました。「はい、どうぞ」。やがて一定の量に達すると、柳昌宏さんはカップを手渡してくれました。


この金色の飲み物こそ、今年生まれたばかりの地ビール。昨年11月7日に岩国で設立された製造販売会社「アーチブルワリー」が初めて手掛けたIPA(インディアン・ペール・エール)です。泡をたっぷりと上唇に乗っけながら、このビールを流し込むと、香りがもたらしたイメージの通り、華やかなホップの風味が爽快に駆け抜けていきました。やがて程よい苦味が口の中に残ります。まさに苦味と爽やかさの極上ハーモニー。清涼感あふれる飲み口に、みるみるカップの中身は減っていきます。

「ひとまず、こういうボトルを作ってみたんですよ」と昌宏さんは2つの瓶を見せてくれました。


いずれも実にポップで、親しみのあるデザイン。「これからきちんと作り込んでいくんですけどね。できれば、岩国の象徴である錦帯橋をイメージして、アーチが連なるような仕様にしたいなと考えているんです」。昌宏さんは爽やかな笑顔でそう教えてくれました。


「アーチブルワリー」を営んでいるのは、昌宏さんとその弟・昌仁さん。二人は社会人になってからはそれぞれ関西で暮らし、昌宏さんは動画制作、昌仁さんは自転車関係の仕事に従事していました。柳兄弟が帰郷した理由は、父・秀生さんの仕事を手伝うため。兄弟は、まさか自分たちがビールを作ることになろうとは夢にも思わなかったそうです。

「父の仕事がひと段落ついた際、岩国の今が見えてきたんです。流行っている飲食店はあってもその数はとても少なく、いわゆるエンタメも豊富というわけではない。僕たち兄弟もそうなのですが、若者たちの多くは、高校を卒業するとこの地を離れてしまいます。そして、その流れは年々強まる一方で、現在の状況になっているんだと実感しました」。自分たちに何かできることはないか。そう考えた際、自転車をこよなく愛する昌仁さんからピッツァとクラフトビールの店を出す、というアイデアが出ました。


「確かに、これまでの岩国にないカルチャーで良いなと思ったんですが、私たちは飲食経験も十分ではありませんし、仮にピッツァまでやろうとすると、いきなりハードルが高くなると考えました。それでクラフトビール一本に絞ってチャレンジすることになったんです」。


こうして、全国にアンテナを広げ、ビール造りを学ぶべく、その修業先を調べ上げました。なかなか希望する酒造元が見つからなかったそうですが、山口からほど近い島根県にある「岩見麦酒」に巡り会います。熱意が伝わり、ここでゼロからビール造りのいろはを学びつつ、並行して、ビール造りに必要な醸造免許も取得しました。その期間、わずか半年。「周囲からも無理だと言われていました。ただ、やるしかなかったんです」と、昌宏さんはタイトなスケジュールの中でのビール修業を振り返ります。

 

このIPAが最初の一歩
岩国ならではの味を追求したい

ビール造りにおいて最も苦労したのは、苦味と香りのバランスでした。昌宏さんは「理想のバランスを表現するのは、難しくもあり、同時に最も楽しい醍醐味でもあるんです。最初に“こういう味にしたい”というイメージを頭の中で描き、そのゴールを目指し、ホップの入れ方によって味と香りのバランスをデザインしていく感覚です」と説明してくれました。



2018年4月26日、アーチブルワリーとして初のIPAを世に送り出し、ようやくスタートラインに立った柳兄弟。これからの目標は「このIPAを基本とし、そのほかに4種の銘柄を生み出し、ボトルを並べた時に、そのデザインの連なりによって錦帯橋が浮かび上がるようにしたいですね」と目を輝かせます。今後は地元・岩国の麦芽を取り入れていきたいと意欲をのぞかせていました。

一般向けの発売時期は8月中。購入場所は市内酒販店や公式サイトにて順次発売予定です。



取材時期:2018年6月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

取材・文:山田 祐一郎
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