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2019/10/02 【山口】周南

ワイルドなブドウで勝負!公務員から転職し、40年以上続く果樹園を受け継いだ夫妻の実り豊かな挑戦|田中友和さん、和歌子さん[きときと果樹園]

by 大村 たかし
防府市出身。地方新聞社で18年間記者として活動後、コーチ、カウンセラーとして独立。起業家へのインタビューやプロフィール記事の作成、書籍の編集も行っている。趣味は…

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周南市金峰、朴(ほおのき)地区。錦川に沿って国道をくねくねと走ると、「須金フルーツランド」の看板が迎えてくれました。観光農園など16園からなるフルーツ団地の玄関口。「きときと果樹園」は、その入り口からさらに約3キロ、山の中へ分け入ったところにあります。

園に入るとすぐ、太陽の恵みを浴びて輝くブドウの木々の美しさに圧倒されました。

標高200メートルの盆地に広がる、約1.2ヘクタールのブドウ園。ここで、ピオーネや藤稔、シャインマスカットなど約30種が有機・低農薬で栽培されています。

取材に訪れた9月中旬は収穫シーズンの真っ盛り。園主の田中友和さん、妻の和歌子さんが、パートの方たちと発送作業やお客さんへの応対に忙しくされていました。



ワイルドな「種あり」の美味しさ

「少し、こちらでお待ちになっていただけますか?」。そう言って、和歌子さんは4種類のブドウを盛ったお皿をテーブルに運んできました。

一番大きな粒の藤稔をいただいてみました。

とにかく、味が「濃い」。甘さはもちろん、ワイルドで、エネルギーを感じるような力強さがあります。そして、中にはしっかり種がありました。

「種からホルモンが出るので、生命力があって、品種の持つ味の個性が強く出るんです。もともとここには種ありが栽培されていたのですが、その割合をこれからもっと増やしていきたいですね」。作業の手をとめて、友和さんが丁寧に教えてくれました。

「もともと-」と言うのは、友和さんはこのブドウ畑の2代目の園主だから。前園主が約40年間続けてきた園を引き継いだばかりです。



農政の公務員から転身。果樹園主へ

友和さんは元県庁マンで、農政を担当。和歌子さんも農水省の職員として山口市で働き、3人の子どもたちとともに山口市で暮らしていました。

家族で観光農園を巡るのが趣味で、須金フルーツランドには2015年の秋に初めてやってきました。「本当にどのブドウも美味しくて、景色も素晴しい。なにより農園のみなさんが生き生きと働かれているのが印象的でした」(友和さん)

それからすぐ、フルーツランド内のある園主が、引退にともない後継者を探しているという話を耳にします。「須金でブドウをつくりながら、みんなでゆっくり暮らそう」。友和さんの中にそうした思いが芽吹き、家族での移住を決意。2016年から、前園主のもとで研修をスタートさせました。

春の雨よけのためのビニール張り、枝の誘引、3万個を越える房への袋掛け、夏場のエンドレスに続く草刈り……など、一通りの作業を体験。1年8ヶ月の研修を終え、2017年末に「きときと果樹園」として新たなスタートを切りました。

フルーツランドの一番奥という立地も考慮して、観光農園としての店舗販売は全体の約1割。JAの直売所や道の駅などでの販売が6割ともっとも大きく、残りは宅配ということです。



この土地の果樹園だから「きときと」

「きときと」というかわいらしい園名には、「実は、三つの意味を込めているんです」とちょっと嬉しそうに友和さんは教えてくれました。

「一つ目は、ここが盆地で、木と木の間にあるから。二つ目は、ここの字名の朴を、カタカナにすると『キト』だから(笑)。最後は北陸の方言で『新鮮』を意味する言葉だからです。やはり果樹は鮮度が大切なので」

一方で、山間地ならではの悩みも。「獣害には手を焼いていますね。サル、カラス、イノシシだけでなく、クマもブドウを食べに来るんです」

それでも「ここでの暮らしは素晴しい」と移住したことに迷いはない様子。「星が本当にきれい。それに、ホタルもすごいんです。幼虫だって、ぴかぴか光りながら地面を横切っていくんですよ」。和歌子さんも「地域の方が親切で、子どもたちにも本当によくしてくれて。パートの皆さんも一生懸命働いてくれるし、お客さんとのコミュニケーションも楽しいですね」

そんな田中さん夫妻の目標はやはり、お客さんの要望をもっと満たせる園になること。「今後はラズベリーやブラックベリーなども植えて、『果樹園』としての可能性を広げたいと考えています」と友和さん。和歌子さんは「わざわざ足を運んで頂いた方に、もっとくつろいでもらえる場所にしていきたいですね」と話しています。

40年余りの歴史を引き継いで、新たな種を蒔き始めたばかりの田中さん夫妻。木々に囲まれたこの地で、これからどんな「きときと」な果実を実らせていくのか、とても楽しみです。

取材時期:2019年9月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

取材・文:大村 たかし
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Spot Information

きときと果樹園

住所 山口県周南市須金3310
TEL 0834-86-2610
URL https://www.kito2.com/

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