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2019/10/06 【山口】岩国

仕事は自分で創るもの!Uターン後、高齢者の「頼れる助っ人」に|柳川顕児さん[合同会社ライブデポ]

by 大村 たかし
防府市出身。地方新聞社で18年間記者として活動後、コーチ、カウンセラーとして独立。起業家へのインタビューやプロフィール記事の作成、書籍の編集も行っている。趣味は…

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「まめに来てくれて、この人はほんと、ようやってくれますいね」。笑顔でそう話すおばあさんの視線の先には、草刈り機を抱えた一人の若者がいました。合同会社ライブデポ代表、柳川顕児さん。荷物の片付け、庭の手入れ、電球の交換、お墓の清掃……。西岩国地域を拠点に、高齢者から寄せられる多様な生活課題解決のため日々奔走する柳川さんには、高齢化が進む地域社会の「明るい未来」がすでに見えているようです。



「困ったことがあったら、何でも」

―柳川さんのお仕事は高齢者の生活支援だとお聞きしていますが、具体的にはどういうことをされているのでしょうか?

ほんとうに小さなことが多いですよ。「施設に入る前に借りている部屋を片付けたいんじゃが」とか、「カーペットを取り替えたいんじゃけど、その上にある折りたたみ式のベッドが移動できん」とか。

季節によっても変わってきます。例えばお盆の前にはお墓周りの仕事が多くなります。イノシシが掘り起こしてしまった石渡りの整備とか。自分でできない、かといってどういう業者に頼めばいいのか分からない。そこを僕がカバーしています。

―いま、どのくらいのお客さんがいますか?

近隣の地域だけで60人ほどですね。そのうち8~9割が70歳以上の独居の方です。女性が多いので、口コミで広がって連絡をいただくケースがほとんどですね。



大阪から、折りたたみ式自転車でUターン

―最初から、こうしたお仕事をするつもりだったんですか?

いえ。5年前に大阪から帰ってきたときは、まったく考えていませんでした。

実家のある大竹市に折りたたみ式自転車に乗ってUターンして、1年間ほど周辺地域を……


―ちょっと待ってください。大阪から大竹まで、自転車で?しかも折りたたみ式ですか?

ええ。それしか持ってなかったので。

【大阪から乗って帰ってきた折りたたみ式自転車(柳川さん提供)】


―そもそも、どうして自転車で帰ろうと?

いろんなまちを見て帰りたかったんです。空気感とか、そこで暮らす人たちの息づかいなどを感じながら。カラオケボックスで昼寝などしながら4泊5日で到着しました。


―いろんなまちを見て、そこの人たちの息づかいに触れる……。なんだか、民俗学者の宮本常一(注)みたいですね。

いえいえ。宮本先生の著作は愛読していますが、とてもそんな……。ただ、好きなんですよね。小さな商店街で、八百屋のおばちゃんなんかとおしゃべりをするのが。


―Uターンしようと思ったのはどうして?

祖父と約束していたんです。関西の大学に進学するときに、「30歳までに戻ってくる」と。


―約束を果たしたわけですね。

そうですね。ただ、自転車で実家に着いたのは6月20日。30歳の誕生日の前夜でしたけど(笑)。



シャッター街にショック。「だったら自分で」

―大竹出身の柳川さんが、どうして岩国で起業されたのでしょう?

Uターンして1年ほどは、地元周辺を見て回ることに決めていました。そうすることで、この地で必要とされている仕事が見えてくるんじゃないかと。その流れのなかで西岩国を訪れたときに、すごく寂しい感じがしたんです。

僕は中学、高校と岩国の学校だったので、この辺りでも遊んでいました。でも、いまほどのシャッター街じゃなかったし、人通りももう少しあった。だから、ちょっとショックを受けて。だったら自分で空き店舗を活用して何か始めてみようかと。そこで目に付いたのがこのビルでした。

―すぐに借りられたんですか?

持ち主の方に会いに行って、こちらの想いを伝えると二つ返事で「ぜひ使って」と。ちょうど、その方もどうしたらいいのか悩まれていた様子で、中を片付けることを条件に貸していただきました。元骨董店で、入ってみると1階は売れ残った掛け軸や壷などが無数に積み上げられ、人ひとり通るのがやっとでした。


―骨董品の山……。片付け作業は、かなり難航したでしょうね。

8ケ月もかかりました。でも、そこで気づいたんです。「片付けができないで困っている高齢者もたくさんいるんだな」と。



「観葉植物を動かしてくれんかね」

―やりながら気づき、仕事にしていったと。

ええ。当初はこのビルで創業支援をすることだけを考えていました。それが、片付けが終わったころ、お年寄りの女性がいらっしゃったんです。ここが整理されたのを知って「あんた、家をきれいにしてくれるんかね」と。


―片付けの依頼だったのですか?

それが違ったんです。お話を聞くと、「大切にしている観葉植物を1階から3階に移動してくれんか」とのことでした。行ってみると、その植木鉢は僕が片手で持てるほどの重さしかありません。「えっ、これ?」と思いましたけど、その方にとっては重くて大変なんですね。そこでまた気づいたんです。「高齢の方はこういうことができずに悩まれているのか」と。


―それが高齢者支援としては最初の仕事だったんですね。

そうです。


―お聞きしていると、介護保険などの行政サービスでは手の届かない部分をカバーされているような印象がありますね。

その通りです。なので、地域包括支援センターなどからの紹介で仕事をいただくことも少なくありません。介護保険適用外の部分で悩んでいるお年寄りって、本当にたくさんいらっしゃるんです。

【お年寄りの話を真剣に聞く柳川さん】



100%でなく、「120%」で。

―この仕事をする上で、特に大切だと思われる能力はなんですか?

やはりコミュニケーション能力ですね。話を聞いて、信頼関係を築いていくこと。僕も仕事中に植木鉢を割ったり、切ってはいけない庭木を剪定してしまったりしたこともありますが、誠実に謝れば「まあ、またがんばってよ」と言ってもらえます。それは関係性ができているから。すごいスキルや立派な道具があっても、関係性が築かれてなければまったく無意味ですから。


―その関係性という部分で、柳川さんが気を付けていることがありますか?

そうですね。例えば、「電話越しの空気を読む」ということですね。電話が掛かってきたときに、お年寄りから「来てくれるのは、いつでもええよ」と言われることも少なくありません。そう言われたら余裕があるときに伺おうと考えがちです。


―確かに、そうですね。

でも、「いつでもええよ」という言葉の裏には「いま来てくれたら嬉しい」という気持ちが隠れているんです。そこを察して、すぐに駆けつける。そういうことを意識して積み重ねていくことですね。言い換えるなら、100%ではなく、120%で返すということです。


―そうした仕事への姿勢は、もともとお持ちだったんですか?

いえいえ。これは前職での経験が大きいです。出版社での営業職で、幼稚園などに絵本を買ってもらうのが仕事でした。配属先の所長が営業成績で全国トップの人で、大切なことをたくさん学ばせていただいたんです。


―例えば?

その人はよく「絵本を売ることだけが仕事やない」と。その先には当然園児がいるし、保護者がいる。だから、園の先生だけじゃなく、子どもや親への接し方も徹底的に教え込まれました。お泊まり保育に同行したり、一緒にカブトムシを捕りに行ったり……。そうしていると、仕事上のやりとりだけでは分からない、人と人の付き合いが自然と生まれてきます。これは、今の仕事でもまったく同じです。



若者も、お年寄りも安心して暮らせる地域に

―最後に、これから新しく取り組もうとされていることはありますか?

そうですね……。ライブデポには、理念があるんです。それは「未来への挑戦」。

僕は大阪から帰るときに、知り合いなどから「仕事あるの?」と何度も聞かれました。でも僕にとって仕事とは、ニーズを見つけて、創っていくもの。そういう意識で周りを見直すなら、仕事はいくらでもあるんです。これからは仲間を増やして、他の地域にも活動拠点をつくっていきたい。それが若者も、お年寄りも安心して暮らせるまちづくり、未来づくりに繋がっていくと信じています。



*****

(注)宮本常一   周防大島町出身の民俗学者。生涯に渡って日本各地を歩いて調査し、風習や生活文化などを記録し続けた。「忘れられた日本人」などの著作で知られる。


合同会社ライブデポ
ライブデポは「生活の拠点」という意味。開業2年間で、200件以上の高齢者支援を受注。平行して起業家の創業支援を行い、ビルの空きスペースを貸し出している。現在、ビルの1階は織物工房、2階は整体、3階はエステがそれぞれ入っている。


取材時期:2019年8月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

取材・文:大村 たかし
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Spot Information

合同会社ライブデポ

住所 山口県岩国市岩国2丁目4-3
TEL 0827-28-5925
URL https://www.facebook.com/livedepoiwakuni/

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