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2019/10/09 【山口】岩国

大切な人たちの想いをランタンに乗せて……。「心が動く」企画を打ち上げ続けるイベントプランナー|川口恵美さん[イベントトータルプロデュース creative PLUS]

by 大村 たかし
防府市出身。地方新聞社で18年間記者として活動後、コーチ、カウンセラーとして独立。起業家へのインタビューやプロフィール記事の作成、書籍の編集も行っている。趣味は…

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ハンドメイド作家による「くが青空マルシェ」、米軍基地と共同開催の「日米フレンドシップフリーマーケット」、そして山口県内初開催の「スカイランタン」。これらすべて、1人の女性が企画、立案したものなんです。岩国市のイベントプランナー、川口恵美さん。ときには数千人規模のイベントを動かす川口さんの行動力の原点には、子育て中に感じたある思いがありました。

【川口恵美さん】


―川口さんは数百人、数千人が集まるイベントを次々と開かれている印象があります。どんな思いで、それほどの事業を動かしているのでしょう?

私の思いは、とてもシンプルなんです。「地元にこんなイベントがあったらいいな」「こんな場所があれば嬉しいな」というものを、皆さんの協力のもとで形にしていきたい。本当に、それだけなんですね。


―けれど規模が大きくなれば、それほどプレッシャーもすごいんじゃないかと想像するのですが……。いきなりすみません。個人的にそこがすごく気になるので。というのも、イベント企画会社とか、広告代理店とかじゃなくて、一個人でいらっしゃるので。

もちろん大変です。毎回、やりながら現場で学ぶことの連続ですね。投げ出したくなることもあるけれど、参加された方の笑顔を見ると吹き飛びますね。今年3月のスカイランタンイベントも、高いハードルをいくつも超えて実現させた甲斐がありました。

【会場でランタンの説明をする川口さん 本人提供】



親友への想いを、夜空に

―確か、山口県内では初企画でしたね。どのようなきっかけで開催することに?

イベント会場にいかなくても感動を共有できる方法はないかなと思ったのが始まりです。スカイランタンなら、会場の外からでも夜空を見上げれば楽しめるので。


―会場に行かなくても……。なぜそういうことを考えるようになったのでしょう?

実は、私の企画してきた「てしごとマルシェ」というイベントにずっと出店してくれていた親友がいたんです。彼女が国立病院機構岩国医療センターに入院してしまって……。「元気になったらまたマルシェに出たい」とずっと言っていたので、何か、彼女が病室の窓から眺めるだけでも楽しめるイベントができないか、と。

以前から、彼女と同じように病気で苦しんでいる人、身体が不自由な方や障害をお持ちの方でも、空を見上げるだけで感動を共有できるイベントがあったらいいな、という想いを持っていたので、スカイランタンはぴったりでした。


―それで医療センターの隣にある陸上競技場が会場だったんですね。確かに、夜空に浮かぶランタンなら、病室の窓から眺められますね。

ええ。使用したスカイランタンは、風船の中にLEDが組み込んであって、その周りを四角い紙で覆ったものです。火を使わないので安全なのですが、岩国は空港や米軍基地がある関係で、「何かを飛ばす」ということに非常に厳しくて。なので、既成のスカイランタンに、絶対に外れないようにひもを付け、さらに20メートル以上は上がらないように工夫しました。終了後は完全に回収することを絶対条件にして、なんとか市と基地の許可を得ることができたんです。


―どのくらいのランタンを上げたのですか?

300個です。会場には1000人近く集まっていただき、皆で青いランタンの灯が揺れる空を見上げました。本当に美しかったですね。

【夜空に浮かぶスカイランタン 川口さん提供】


―青い光だったのには、何か意味があるのですか?

世界自閉症啓発デー(4月2日)のシンボルカラーがブルーなんですね。このたびのスカイランタンはそのプレイベントでもあったのです。ランタンの灯が、自閉症をはじめとする外からは見えない障害で苦しむ人々への理解を少しでも深めるきっかけになれば、と。

開催前には、自閉症のお子さんを持つお母さんから「参加したいけれど、いつ子どもがパニックを起こすかと思うと会場に行けなくて……」との連絡も受けました。「大丈夫ですよ。車の中からでも十分見えます」とお伝えすると、当日は駐車場から眺められたようで、とても喜ばれていました。



子育て中の辛さを、原動力に

―きっと感動されたでしょうね。お母さんも、お子さんも。ところで、そもそもどうしてイベントプランナーを目指されたのでしょうか?

2012年に岩国市が子育て情報誌の編集員を募集していたんです。そこに応募したのがすべての始まりですね。


―どうして編集員になろうと?

ちょうど、子どもが保育園に入ったタイミングでした。それまでは育児と家事に追われて毎日が過ぎていくだけだったので、なんだか社会から断絶しているような閉塞感があって、とても辛くて。情報誌をつくれば、自分と同じように苦しんでいるお母さんの役に立てるかもしれないと感じたんです。


―なるほど。それはどのくらいの期間、続けられたのでしょう?

半年間ですね。ほかの編集員と協力しながら、小さな子どもを連れて行っても大丈夫なお店や、授乳やおむつ替えができるスポットなどをまとめた「子育てマップ」を完成させました。

そのマップづくりの取材中に、趣味でハンドメイドをしている主婦の方がたくさんいるということを知ったんです。しかも皆さん、「作品を発表する場がない」という悩みを抱えていました。だったら、そういう場を創ってみようと思い立ち、岩国市周東町の空き店舗で「てしごとマルシェ」(2013年11月)を開いてみたんです。


―それが最初に企画されたものだったんですね。

そうなりますね。ハンドメイドの作家さんたち10数名に出店いただいて、1日だけ開催しました。当時はSNSが普及していなかったので、チラシを手配りして周知しました。結果として約150人に来場いただき、「次もやって!」とすごく喜ばれたんです。そこから、一つの点が次の点に繋がっていく……という感じで少しずつ依頼をいただくようになりました。


―そこから繋がっていった?

ええ。まず、てしごとマルシェの噂を聞いた地元の商工会の方から相談を受けました。「400年以上の歴史ある玖珂縮(くがちぢみ)という伝統織物を周知するイベントをしてくれないか?」と。ハンドメイド作家の方たちに玖珂縮を活用した作品を作ってもらい、織物体験コーナーも設けて企画展(2015年11月)を開いたら、約400人も来場されて、商工会の方も驚かれていました。

【約800人で賑わった「くが青空マルシェ」 川口さん提供】


すると今度は、そのマルシェに来られた玖珂総合公園の管理者の方から声が掛かって、総合公園で「くが青空マルシェ」(2016年5月)を開催することに。当日は約800人も来られて。それ以来、春、秋開催の定期イベントになっています。

さらに、青空マルシェを見られた岩国市の職員の方から「米軍基地と共同でフリーマーケットを開いてほしい」と相談を受け、「岩国フレンドシップフリーマーケット」(2018年9月)を企画しました。募集開始初日で100ブースがすべて埋まり、当日は7500人も来場されるなど、大変好評でした。年3回開き、この秋が4回目となります。

【100ブースが出店した「日米フレンドシップフリーマーケット」 川口さん提供】



失敗だらけ。でも一歩ずつ

―次々と繋がりながら、どんどん大きくなっていますね。

本当に、すべて出会いとご縁のお陰なんです。ほかにもさまざまなイベントをプロデュースしていますが、経験を積むごとに手伝ってくださる方が増えていきます。私にとって、それが一番の財産ですね。何かやろうと思ったときに、力と知恵を貸していただける方がたくさんいる。一人ではなにもできませんから。


―イベントを開催しようと思っても、どうしていいのか分からない人が大半だと思うんです。そんななかで川口さんがここまで続けてこられた秘訣のようなものがあるとすれば、なんでしょうか?

そうですね……。でも、いつも失敗だらけですよ。基本おっちょこちょいですから(笑)。100%成功したと胸を張れるイベントなんてありません。凹んでしまうことだってしょっちゅうです。でも、失敗が必ず次に繋がるんです。迷惑かけたなら、ひたすら謝る。そのように少しずつ信頼関係を築いていくしかありません。

そのためには、この人の力になりたい、沢山の人に来てもらいたいと思える仕事を選ぶ必要があります。一回一回、本当に命を削るような思いをするので。自分の気持ちが動くものでないと、そこまでできませんから。

―では最後に、川口さんがいつか形にしてみたいと思われる一番のビジョンはなんでしょう?

ビジョン……。個人的に何か大きなことをしたい、というのはないんです。ただ、かつての私と同じように孤独や不安を抱えているお母さんたちの力になりたい。そんな方たち同士が出逢える場を創りたいだけなんですね。これからも、その根本に立ち返りながら一つひとつの企画に灯をともしていきたいと思います。

*****

イベントトータルプロデュース creative PLUS代表 川口恵美さん
住所:岩国市玖珂町
メール:creativeplus77@gmail.com
Instagram:https://www.instagram.com/iwakunievent/?hl=ja

取材時期:2019年9月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

取材・文:大村 たかし
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